青山潤三先生ブログ ギリシャと日本で対応する興味深い数種の蝶について 第五回 3/4 | ギリシャでプライベートツアーやゲストハウスをしたりなブログ

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ギリシャと日本で対応する興味深い数種の蝶について  第五回 3/4
 
Ⅲ アゲハチョウ科(下)c
 
そんなわけで、何となくシロタイスアゲハかシリアアゲハが、“ギフチョウの隠れた姉妹群”ではないだろうか?と思いつつも、これまでギフチョウ属との関連は、深く考えることなく済ませてきました。
 
タイスアゲハもシロタイスアゲハもシリアアゲハも、ギリシャに分布しています(後2者はギリシャ周辺が分布の西端です)。今回、ギリシャの蝶を書くにあたって、幾つかのDNAによる系統 解析をチェックしてみました。
 
まさか、というか、予想が当たった、というか、、、、一見全く似ていないように見えるシリアアゲハが、(どの解析結果でも)ギフチョウ属と極めて近い位置に示されていたのです。 
 
シロタイスアゲハのほうはタイスアゲハに近い位置にあり、以前の見解通りタイスアゲハ属に含めても良いのではないかと思います。また、タイスアゲハ属と東アジアのシボリアゲハ属が近縁なことも、予想通りの結果です。意外だったのは、タイスアゲハ属、シボリアゲハ属、ホソオチョウ属が、ギフチョウ属よりも、むしろウスバシロチョウ属に近い位置に示されていること。
 
タイスアゲハやシボリアゲハはともかく、シロタイスアゲハは、産地によってはギフチョウに酷似しています。でも、血縁的には、かなり離れている、というわけです。
 
改めてウスバシロチョウ亜科の上位分類の再構築をすると、ウスバシロチョウ属とイランアゲハ属が“ウスバシロチョウ族”、タイスアゲハ属(シロタイスアゲハ属を含む)とシボリアゲハ属とホソオチョウ属が“タイスアゲハ族”、ギフチョウ属とシリアアゲハ属が“シリアアゲハ族”に配分されることになります。
 
ギフチョウ属の唯一の姉妹群は、シリアアゲハ属だったのです。ある意味、この蝶こそ「第5のギフチョウ」なのかも知れません。
 
 Archon apollinus 英名:False Apollo/日本名:モエギアゲハ(モエギチョウ)=「シリアアゲハ」からの改称を提案。
 
ギリシャから中東にかけて分布(複数種に分割する見解あり)し、ギリシャでは東南部沿海地域の、低地から標高1800m付近の山地にかけて棲息しています。レスボス島などエーゲ海の幾つかの島々などにも分布しているようですが、詳細は未詳(チエちゃんが調べてください)。春一番に出現する蝶の一つで、年一回3月~4月に発生。雌雄はよく似ていますが、♀(写真)の方がやや濃色です。食草はウマノスズクサ科のウマノスズクサ属(Aristolochia hastataほか
 
⑤ Allancastria cerisyi 英名:Eastern Festoon/日本名:シロタイスアゲハ。
 
以前はタイスアゲハ属に含まれていましたが、その後独立の属が建てられています(しかしDNAの解析結果などから見て、タイスアゲハ属に含めておいても良いように思われます)。タイスアゲハよりも全体に白っぽく、ごく短い尾状突起を有します。バルカン半島(ギリシャ北部山地も含む)から中東や西アジアにかけて分布し、ギリシャでは、北部の低地から標高1500mほどの山地にかけて棲息しています。クレタ島産、コーカサス地方産(写真⑤’=♀、ギフチョウに酷似します)、中東各地産などを、別種とする見解もあります。雌雄で顕著な差があり、♂(写真⑤)が白っぽく、♀が暗色なことは、東アジアのホソオチョウ属と共通します。4月から6月上旬にかけて出現。食草はモエギアゲハやタイスアゲハ同様、ウマノスズクサ科のウマノスズクサ属。
 
 Zerynthia polyxena 英名:Southern Festoon/日本名:タイスアゲハ
 
フランスのプロヴァンス地方から、イタリアなどヨーロッパ東南部を経て、中東各地に分布しています。 ギリシャでは、ほぼ全域(クレタ島を除く)に分布しているようです。地中海沿岸西半部には、もう一種スペインタイスアゲハZerynthia ruminaが分布します。4月~5月に年一回発生。食草は前2種同様ウマノスズクサ科のウマノスズクサ属。翅の色や模様はギフチョウに似ていますが、「大事なところ」はシボリアゲハとの共通点が見られます。