緊急クエスト! | ザックの『押してもダメなら弾いてみな!』
やっとこさ落ち着いてパソコンに向かう時間が出来た。

発表会を終えがっつり経験値を獲得した僕はこれまでの課題だったベートーベンのメヌエット、シュラディックの音階練習をサクッと「とりあえず合格」のレベルまで持っていくことが出来た。
(それにしても、発表会を終えるとこれまで苦労していた課題もあっさり弾けるようになる現象は何なんだろうか?)

そして、次に挑戦する課題は特に新しい事かと言えばそんな事はなく、ホーマン2巻からはだいぶ以前にほったらかしていたスピッカートを使う練習曲とシュラディックからサードへのポジション移動をより確実にするための音階練習だ。

特にポジション移動はかなりノリと勢いで済ませている感があるのでここらできっちりとマスターしたいところだ。

で、改めて基礎練習から進めていこうかと思っていた矢先になんとまあ緊急クエストの依頼が僕の元に舞い込んで来てしまったのだった。


「披露宴で余興の演奏っすか?(゜д゜;)」
「是非とも弾いてちょうだい!('-^*)/」

てな具合に、いよいよそんな話が来るようになった。
緊急クエスト
『結婚披露宴でバイオリンを弾け!(ソロで!)』
である。
まあ、おめでたい事だしそれにバイオリンもある程度弾けるようになってきたし、せっかくだからお引き受けいたしましょうと二つ返事で返したところ、なんと曲目のリクエストがあるとか。
「福山雅治の『家族になろうよ』?(・Θ・;)」
「知らんの?」
「最近の歌はてんでさっぱりでして・・・」
しかも、どういう具合なのかそれを歩きながら弾いてほしいとか。

なんだか難しそうだなあと思いながらも、とりあえず曲を知らねばという事で楽譜を探してみたところ、確かにメジャーな曲なのだろう普通の本屋さんの楽譜コーナーでピアノ譜を発見した。
早速譜面を流し読みしてみたが、
「フラット4っつう??(-"-;A」
ラ、シ、レ、ミにフラットがついていた。後で調べてみたところ変イ長調というようだ。
正直これはまずい。なんせ開放弦を使える音が無い。
一応G線のソは空いているけどそれを使う箇所も全然ない。

これまではどっかで音程をミスったとして開放弦を弾く時に一旦左手をリセットするという対処が出来ていたのだがこの調ではそれができない。
最悪ミスった指を基準に置いてしまい延々とズレた音を弾き続けてしまうという状況もありえる。
さらになんだか微妙に拍子を数えにくいのと結構16分音符が多くテンポのわりに右手が忙しそうだ。

これはいかん。(^▽^;)
と瞬時に悟った僕は光の速さで先生に相談しに行った。
まさに「何とかしてよ、ドラえもーん。」だ。が、


「うん、それは止したほうが良い。(・∀・)」
「即答しちゃった!!∑ヾ( ̄0 ̄;ノ」
「これ弾きにくいんですよねえ。A=´、`=)ゞ」

概ね上記で感じた難しさがそのまま当てはまるようだ。さらに

「歩きながら弾くって事は、暗譜しなくちゃいけないわけでしょ。結構どこ弾いてるかわからなくなりがちなんですよ。」
「ああー(゚_゚i)」

ちなみに先生も仕事で結婚式でのバイオリン生演奏をされる事がよくあるらしいのだが、その際にこの『家族になろうよ』をリクエストされると伴奏のピアノかオルガン奏者さんと合わせの確認を入念に行うらしい。
この曲の難易度たるやお察しレベルである。

「バイオリンの先生が真顔で、やめときなはれ言うてたって返事しておかれては。┐( ̄ヘ ̄)┌」
「うへえ(;´Д`)ノ」

こりゃ相当なものである。
とりあえずこの曲については依頼者には断りを入れておくことにした。
だがしかし何も弾かないってのも具合が悪いので代案のB案を進めることにした。

「この曲は無理っぽいんで、代わりにディズニーの『星に願いを』を弾こうと思うんですが。」
「おお、いいんじゃないですか。それぐらいにした方が確実ですよ。」

流石、ディズニー様様やで( ̄∇ ̄+)


「じゃあ、とりあえずここしばらくは曲練習をメインにやっていきましょうか。」

基礎練習もやりたいが仕方がない。本番を迎えるまでは曲メインでいこう。

「では、まずは曲を通してズケズケと弾く練習をしましょうか。(^~^)」

ズケズケっすか?


要は大きく音を出す練習である。

披露宴会場は音響を考慮した構造ではないし、カーペットも敷いてあれば人や物も大勢ある。そういう状況では音が響きにくく、遠くに座っている人には音が聞こえないこともままある。
そして音が聞こえないと、悲しいかなお客さん方の間には雑談を始めてしまう方も現れ始める。そして雑談の音が大きくなるとバイオリンの演奏の音は更に聞こえにくくなるという悪循環に陥ってしまうという。

そうならないために、まずはなにはともあれ会場中に届く音で弾く練習が必要となるのだった。


そして、このズケズケ弾く練習がこのクエストに限った話ではなく、現時点の技量に対して非常に有意義な練習になっていったのであった。

→ to be continued!!