Ⅰ 全国学力テストの市町村別、学校別の成績公表をめぐって、さまざまな議論がなされている。


秋田県寺田知事は、20081225日、「公教育は公開が原則」として、県内市町村別成績を県のホームページで公表した。

これに対して、今年18日、同県の藤里町教育委員会は「公表するなら参加しない」という方針を委員の全員一致で決めた。藤里町には小中学校が1校ずつしかなく、自治体別の成績はそのまま学校の成績を示すことになり、同町の古川教育長は「具体的な数値を出して比較され、子どもたちがやる気を無くすと大変だ」と理由を説明(200919日朝日新聞朝刊1面記事)。


大阪府の橋下知事も公表には積極的で、公表に消極的な文部科学省を「本当にバカ」などの発言で批判している。

これに対して、大阪府吹田市教育委員会の内田慶市委員(関西大学教授)は、20081025日付朝日新聞朝刊「私の視点」の中で次のように述べている。公表する場合、「単に平均正答率を示すだけでなら市民に『安心』か『不安』を与えるだけで、学力低下の根本的解決にはつながらない。どこが優れ、どこが足りないのかというデータの詳細な分析と課題や学習状況調査も併せて、情報を学校・地域・家庭が共有し、今後の指導や施策に生かすべきである」。

また、「公表するか否かの判断は各市町村教育委員会の判断に委ねられる」ことが重要だとする。そして、「現実には少なからぬ教委が文科省の意思伝達・管理機関となり、教育委員はもの言わぬ名誉職として事務局の追認機関になって」おり、「その意味で知事が『教育委員会にビジョン』がないと批判するのは間違っていない。知事の『挑発』に今こそすべての教育委員は発言し答えるべきだ。それをしないなら教育委員は存在意義を失う。」という。


私が委員を務める教育委員会では、いまのところ、こうした厳しい局面には直面していないが、教育委員会として、学力テストのデータを公表も含めてどう利用するのかといったことは検討課題の1つとなるはずである。


Ⅱ そもそも全国学力テストとは何なのか。まずはそのことを確認しておきたい。

全国一斉の学力調査は20074月、小学校では初めて、中学校では1964年以来43年ぶりに実施され、愛知県犬山市の14校を除く国公立すべての学校と私立の6割の学校が参加した。

その後、20084月にも実施、2009年も実施の予定である。対象は小学校6年生と中学3年生で、教科は国語、算数、数学の2科目、それぞれ「知識」に関する調査と「活用」に関する調査とを行う。なお、調査にかかる費用は60億円以上である。


調査の目的は、文部科学省のホームページ(注1)によれば、次のとおりである。

・国が全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から各地域における児童生徒の学力・学習状況をきめ細かく把握・分析することにより、教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。

・各教育委員会、学校等が全国的な状況との関係において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。

・各学校が各児童生徒の学力や学習状況を把握し、児童生徒への教育指導や学習状況の改善等に役立てる。


 また、調査結果の公表について、20年度の実施要領では、調査結果を提供された都道府県、市町村は、個々の市町村名や学校名を明らかにした公表は行わないなど学校間の序列化や過度な競争につながらないよう配慮、ただし,市町村・学校は,自己の結果を保護者等へ説明することができる、とされている。



これに対して、平成21年度の実施要領では、調査結果の取扱いに関する配慮事項として、かなり細かい事項が定められており、

・都道府県教育委員会は、本調査の実施主体が国であることや、市町村が基本的な参加主体であることなどにかんがみて、域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わないこと、

・調査結果の公表にあたっては、本調査の目的や、調査結果が学力の特定の一部分であることなどを明示すること。また、学校の教育活動の取組の状況や調査結果の分析を踏まえた今後の改善方策等を併せて示すなど、序列化につながらない取組が必要と考えられること、

・各教育委員会が独自に実施する学力調査の公表の取扱いについては、もとよりそれぞれの各教育委員会の判断にゆだねられること、

といったことが記載されている。


Ⅲ こうして実施された全国学力テストであるが、この調査が教育施策に反映されているのか、それが問題である。なにしろ、60億円以上もの税金が投入されているのだから。データをそのまま公表するだけでは、教育施策には役立たないわけで、データの詳細な分析や検討・検証といったことが必要となるはずである。



 この点について、千葉県検証改善委員会が千葉県データの詳細な分析を行っており、「平成19年度『全国学力・学習状況調査』分析報告書」として公表している。大変、興味深い分析結果、政策提言がなされており、冒頭に紹介した「公表」の問題をどのように考えるのかについても、参考になるように思うので紹介したいが、長くなるので次回に。ニコニコ



(注1)文部科学省ホームページ

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/07032809.htm