【訳者注】政治家として、人の心にしみ込む言葉を語る人は、他にもあるかもしれないが、大国のリーダーとしては、まずプーチンであろう。私の彼に対する敬意と敬愛はずっと変わらない。特に穿ったことを言うわけではない。ただ正直であり、虚勢を張ることもなく、どんな相手でも謗ったりすることはない。しかし世界に向って真剣に、辛辣に、忠告はする。彼のスピーチに聞き入る聴衆の顔を見ていると、哲学者か宗教家の話を聴くような表情を見ることがある。
特に、最後の語録「世界でのロシアの役割」を読んでみていただきたい。これは事情を知らない人が読み飛ばすなら、ただの、平和や民主主義念仏のように見えるかもしれない。しかしこれは全く違うものである。ここには、この我々の不幸な世界の縮図と、それと対決して克服すべき、我々の努力と責任のすべてのあり方が語られている。これは、我々に応答を求めるプーチンの心からの叫びである。
RT
December 23, 2017(2018/10月再掲載)
人気取り、プラグマティスト、権威主義者、狡猾な戦略家——彼がロシアの政治のトップに上り詰めて何年もたった今でも、西側の観察者は、ウラジミール・プーチンの本当の動機について戸惑っている。実は、このクレムリンの意思決定の背後に、首尾一貫して述べられた信念のつながりがある。
アメリカについて
「アメリカは偉大な国だ。おそらく今日存在する唯一の超大国だ。我々はそれを認め、彼らとともに働く用意がある。
「我々が必要としないのは、彼らが我々の問題に世話を焼いてくれ、我々がいかに生きるべきかを指図すること、そして、ヨーロッパが我々と関係を築くのを妨げることだ。」
――サンクトぺテルブルグ経済フォーラム、2016年6月
ロシアが外国に干渉するという主張について
「アメリカのプロパガンダが絶えずあり、アメリカのNGOへの直接の財政援助がある。・・・それは何年もずっと続いている干渉ではないのか? 地球儀を取って、それをくるくる回して、どこへでも指を当ててみるがよい。そこにはアメリカの企業や、そこへの干渉がきっとある。
「アメリカ人は何を望んでいるのか? すべての人が敬意を表して彼らに頭を下げることだ。我々は自分自身の意見を持っており、それを公然と表明する。それは、何か隠れて破壊するようなものではない。」
——プーチンとの直接電話、2017年6月
ヨーロッパについて
「ヨーロッパ諸国は、ワシントンの対外、いや国内政策の目的にでも、単に迎合することは、自分のためになるのだろうか? 私は怪しいものだと思う。それは真剣な政策の目的だろうか? そしてそれは、自分自身を大国と呼びたい国家が、引き受ける役割だろうか?」
——ロシアの投資呼びかけフォーラム、2016年10月
カタルニアの独立危機について
「一時期、EUは、ヨーロッパの国家の範囲全体が崩壊するのを歓迎し、自分たちの喜びを隠そうともしなかった。なぜ彼らは、それほど無思慮に――短期間の利益のためと、ワシントンの “ビッグブラザー” の機嫌を取るために――無条件にコソボの分離を支持し、大陸とそれを越えた所でも、同じ過程を取るように嗾けたのだろうか?」
——ヴァルダイ討論クラブ、2017年10月
NATOについて
「ソビエト連邦はもう存在しない。東側ブロックも存在しない。私の考えでは、NATOは自分の存在を正当化するために、外なる敵を必要としていて、絶えずそれを探し求めており、もしどこにもなければ、それをつくり出す挑発をしなければならない。
・・・今日、それはアメリカの対外政策の道具になっている。そのパートナーというものはない、従僕国だけが存在する。」
——オリバー・ストーンのインタビュー、2017年6月
中東について
「政権交代によってであれ、武力行使によってであれ、外側のモデルをそこへ押し付けることによって、この地域を作り変えようとする試みが、ずっとあった。過激派と戦うのでなく、そのような戦いを制するのでなく、混乱が永久的な状態になることを望んでいる、一部の我々の同僚がいる。」
——ヴァルダイ討論クラブ、2017年10月
北朝鮮について
「もちろん我々は、北朝鮮の核実験を非難し、すべての国連安保理の決議に合意する。
「しかし、この問題を解決するには、対話を用いるべきであって、北朝鮮を軍事的脅迫で追い詰めてはならず、悪口や公的な侮辱の応酬に訴えるべきではない。ピョンヤンの政権が好きだろうと嫌いだろうと、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)が、主権国家であることを認めなければならない。」
——ヴァルダイ討論クラブ、2017年10月
ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチの追い落としについて
「キエフで起こったことは、武力による、憲法に反する権力の奪取、つまりクーデタである。誰もそれに異論を唱える者はいない。
「問題は、なぜそれが、そのように行われねばならなかったのか、である。ビクトル・ヤヌコビッチはすでに権力を捨て去っていて、再び選出される可能性はなかった。なぜ国家を混乱に陥れるのか? 権力を示威するためか? それは馬鹿げた決定であって、逆効果だろう。私は、こうした行動こそが、この国の東部の情勢を不安定化したと考える。」
——ノボ・オガレーボ(大統領公邸)、2014年3月
キエフの政府について
「ロシア人とウクライナ人民の目指す利害は、同じである。同じでないのは、ウクライナ政府とエリートが目標とするものである。
「… 彼らが、国際的な消費のために輸出するもので、残っているものは一つしかない――ロシア恐怖症だ。そして、この2国間の分断政策だ。西側のある人たちは、これら2つの国家は、決して同盟を結んではならないと考え、そのように、ウクライナは、その考えを輸出するのに成功している。」
——ハンブルグG20サミット、2017年6月
キエフのマイダン広場における煙と反政府支持者たち。ここから抗議者と警察の衝突が始まった。2014年2月、キエフ市、ウクライナ
ロシアの政治システムについて
「君主制というのが、たとえ家の表札は変わっても、ロシア帝国からソビエト時代へと受け継がれた遺産だった。1990年代の初めにやっと、ロシアの発展の新しい段階の、基礎を築く出来事が起こった。
「確かにあなたは、我々が、アメリカやドイツやフランスと、同じ政治的モデルや、同じ構造を、直ちに作れるとは思えないでしょう。社会は、あらゆる生き物と同じように、段階を経て有機的に発達していかなければならない。それが正常な発達の過程です。」
——オリバー・ストーンのインタビュー、2017年6月
世界でのロシアの役割
「ロシアは千年の歴史を持つ国であり、ほとんど常に、主権的な外交政策の特権を享受してきた。
「我々は今日、この伝統を裏切ることはできない。と同時に我々は、いかに世界が変わったかをよく理解しており、我々自身に与えられた機会と潜在能力をも、現実的に理解している。我々は、責任感と独立心を持ったパートナーと、啓発し合うことを望んでおり、そのような人々と協力して、選ばれた少数者だけでなく、すべての人々のために、安全と繁栄を保証するような、公平で民主的な世界秩序を、構築したいと心から願っている。」
——ミュンヘン・スピーチ、2007年2月
PDF: http://www.dcsociety.org/2012/info2012/181022.pdf