アメリカ合衆国は2021年後半頃から、物価が上昇し始めて今も根強いインフレが続いています。

消費者物価指数(CPI)は一時9%(2022年6月、前年同月比、総合)を超える程になりました。

 

2023年4月は4.9%まで下がり、一時の高値からは落ち着いた感じはありますが、まだまだ2%の物価安定目標からはほど遠い感じはします。

 

ところでなぜこれほど短期間に物価が上昇したのでしょうか?

その原因を探ってみると決定的ともいえる要因が潜んでいました。

 

以下のデータは連邦預金保険公社(FDIC)のサイトからダウンロードしたデータです。

連邦預金保険公社とは、アメリカ合衆国政府の公社で、加盟する銀行の預金を保護する役割を担っています。

 

FDICに加盟している銀行の預金口座は、たとえその銀行が破綻しても25万ドルまでは保護される仕組みになっています。

 

FDICに加盟している銀行の預金口座は、日本の銀行口座と同じようなものなので、FDICに加盟している銀行口座の総預金額を調べると、アメリカ人の預金額を知る事が出来ます。

 

以下のデータはすべてのFDIC被保険機関(商業銀行)の預金額の四半期ごとの増減額を示しています。

 

 

2020年に預金額が大幅に上昇しているのがわかります。

四半期ベースでもかるく1兆ドル(約120兆円)増えているのがわかります。

 

2020年合計で3兆ドル(360兆円)の預金額が増えています。

1年間で日本の国家予算の3倍以上の額が増えているのです。

 

これだけ一気に預金額が増えたのは、アメリカ政府が多額の国債を発行して個人補償をしたからです。

 

2020年1月頃はコロナ感染が拡大して、アメリカの多くの大都市はロックダウンしました。

その結果、多くの人が失業してお金に困ったので政府が補償したのです。

 

以下のデータからそれが見て取れます。

 

 

2020年に政府支出が一気に増えているのがわかります。

この分だけ預金額が増加したわけです。

 

上記資料の見方は下記、ブログ記事参照

借金がお金を生む!戦後から現在までの日本経済をお金の流れからサクッと解説してみた① | 時間が無い人でもサクッとわかる現代社会の仕組み (ameblo.jp)

 

 

2020年以前の増減額と比較しても極端に預金額が増えているのがわかります。

つまりこれだけ一気にアメリカ中にお金が増えたので、物価が上がったわけです。

 

インフレの原因はコロナによる供給制限、原油高による原材料費の高騰、働き手不足など他にも原因があると思います。

しかし、そもそもお金がなければ物は買えないので、インフレの主たる要因は急激にお金の量が増えた事といえます。

 

 

一方2022年は預金額はマイナスになっています。

これはFRB(連邦制度理事会)が2022年になって、1年間で5%程政策金利を引き上げた事が原因です。

 

政策金利の上昇により民間企業が新規の借入を控えて借金の返済を優先した結果、預金額が減少しました。

また政策金利の上昇から国債などの含み損を抱える銀行が増えたので、銀行も貸出しに慎重になりました。

 

実際、アメリカでは2022年後半から貸し渋りのような状況になっています。

中小規模の企業は借り入れがしづらい状況になってきています。

 

この状況が長く続くと資金繰りに困る企業が増えて倒産する会社も出てくるかもしれません。

来年のどこかの時点で景気後退(リセッション)になる可能性もあります。

 

このようなお金の流れをしっかり見ていくと今後のアメリカ経済の行方を予測する事が出来ます。