ちょこっと積ん読した「1950年のバックトス」/北村薫/新潮文庫。を読了。
数ページ~数十ページの作品を集めた掌編集。
作品数が多いので印象の強いのを幾つか書く。
まず表題作が頭抜けて良かった。
本当に短編、これも25ページなのだが、クライマックスは涙が溢れそうになった。話の運びもミステリー系な意外な驚きが味わえると思う。
次が「凱旋」。
これは北村薫お得意の国語系ミステリ。
円紫さんと私シリーズの片側の魅力を担っている要素ですな。あのシリーズと似た読み心地でかなりお気に入り。
あの「真夜中のダッフルコート」は再読。
謎と解決は良いんだが一寸語りが苦手。
「眼」も再読。自分も彼女派。
「石段・大きな木の下で」は羨ましい穏やかさ。
同じ手法の「百合子姫・怪奇毒吐き鬼」はらしからぬ駄作。
「恐怖映画」、「小正月」、「洒落小町」は家族ものであり、だからこその自分個人を見つめ直す作品。どれも着眼点が面白かった。
惜しむらくは
講談社刊の「紙魚家崩壊」でも感じたのだが、作品数が多いだけに続けて読むと北村節が鼻につく。
まず、作品中に突然仕切り直すところ。メタ視点で現実に戻される。あれ何回出くわしても慣れん(笑)
あとは、ほぼ絶対に“いい話”であるところ。(いや大体の作品読んでますから、違うものも知ってはいますが;)
例えば「包丁」。
水槽の中から外界を臨むような前半作品の中で最初の山場と言いたいくらい、いやらしく恐怖を煽る文章構成は見事だった。
古びた包丁、肉親の縁、研がれきった刃の濡れたような輝き、人肌に似た餅!
しかし、それでも結局子供が怪我をすることはないんだろうなと私は自信を持って高をくくった。だって北村薫だもん、と。
読者が緊張感を無くしてしまう作風の固定は、こういう短編集を編んでるのに勿体無いと思うんだ。
軽いホラーもありーの、ミステリー、恋愛、奇譚、寓話、ちょっとした描写、と、
様々収録されているので読者によって、色んな楽しみかたが可能。
しかし北村薫は自然に女性主人公を書くなぁ。かなりの割合で女性。しかも中高年率も高い。
その辺が取っつきにくかったり面白かったり。
まずは読んでみー(・ω・)ノ