「ブラフマンの埋葬」/小川洋子/講談社文庫。
別荘地にある芸術家たちに解放されている家の管理人である“僕”の視線で、
ブラフマンと過ごしたひと夏を描いた作品。
ひとに依っては辛気くさいと思うかもしれない、古代に近いその昔、流れてきた棺から石棺に移し替えて埋葬したという地の近く。
淡々とした文体で、さらっと寂しさや嫉妬も混ざり込むけれど、なんとなく子供のように純粋な気持ちを強く感じる。
あとは、孤独ゆえの平穏とか傲慢とか。
さて
森からひょっこり現れた謎の生物・ブラフマン。
猫だと思い込んで、と書いたが猫説は完全に否定されたり。
子犬ぐらいの腕にすっぽり入る大きさ、
焦げ茶のもしゃもしゃ、
体躯より長い紡錘型の尾、
小さく覗く牙、指股にみずかき、目立つひげ、
黒いボタンのような鼻、
水の中を自在に泳ぐのは、ビーバーに近いのかね。
ま、謎は謎のまま。
題名から推測されるとおりの話の流れではあるのだが、
あっさり幕引き。
このさっぱり加減が好きだ。
レース編み作家が経帷子のための配置だったかと思うとやりきれない。
それにしても今年は石棺にほとほと縁のある夏だったなぁ。