「雪虫」/堂場瞬一/中公文庫。
やっと読み終わりました……。
<あらすじ>
雪国・新潟。冬を目前にして起こった老女殺人事件。
祖父から三代続く刑事の鳴沢了は、
父親と同じ事件担当になったことに強い苛立ちを隠せないまま、
しかし、持ち前の正義感を支えに事件の捜査を進める。
ところが、
聞きこみの最中に第2の殺人事件が!
鳴沢の推測は当たっていたのか?
また一方、新たに意外な人物が関係者として浮かび上がり、
鳴沢の心を強く揺さぶるのであった。
<感想>
雪国の重い冬空の中のがイメージされ、事件描写も面白いことは面白いのだが、
ハードボイルドのなりそこないのようなウジウジした一人称に慣れず、中盤に至るまでに非常に時間が掛かった。
鳴沢のキャラが入りにくさの一因。
仕事に対して真面目なのは凄く尊敬する。しかし無駄に「刑事」に拘っているところが、ちと微妙。
何故鳴沢が「刑事」を天職と言い切るのか、その盲目的な信念の基盤が何なのか読んでるだけでは解らない。考える材料も殆ど提示されていない。
(ここで読み取れないのは、硲の読解力の問題だと思うが。)
実際、鳴沢には人間らしい揺れがあり、そこは魅力でもあると思うのだ。
反面、刑事であることへの頑なさが不自然に見える。
「許さない」とか狭量な感じでいい。しょっぱな新谷の行動を許容しているらしい描写も。
何故父親とギクシャクしていたのかが未だに不可解。噂ごときで?
お前が一番感情に左右されてるよ。
宗教の件や、爺様がたの描写は良い。
この文章の癖にハマればツルッと読めそうだ。
読了後に残った謎は、ひとつ。
これ文教堂が総プッシュするほど面白いか?
面白いが、ストーリー自体はよくあるし、そこまでする程かなぁ?
シリーズ通すとまた違う読みになるのだろうか。