座間味くん 2 | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目


「心臓と左手 ――座間味くんの推理」/石持浅海/光文社文庫。


「月の扉」を読めと言わんばかりの、
しかし趣向は全く違う座間味くんシリーズ第2弾。
(話が綺麗にまとまっているので、最終巻か)
安楽椅子探偵もの。


沖縄ハイジャック事件で『座間味くん』と呼ばれていた男と
同じく事件に関わった警視庁の大迫警視の
美味そうな酒と食事の席に、大迫の過去の事件の思い出話が興を添える。


話の形式は、
新宿の大型書店(大森望説に同意するしかない。紀伊國屋本店だろう)で待ち合わせ、
魚介類だの肉だのと酒を個室で楽しみ、
大迫の提示した事件について座間味くんが別の方面から解きほぐし、
大迫が驚嘆と滝汗にまみれて終了するというパターンの連作短編集。
座間味くんが杯を置いた後の一言があるゆえ、これは社会派分類にしたいな。

安楽椅子探偵に多いが、
作品内では、事件の顛末の確認はされない『推理』のみであるため、人によっては突き放された感はあると思う。
個人的には懐かしい感じで好きだ。
で。
うん、好きなんだがちょっと毒も吐く。


最終短編「再会」は、
多分これが書きたかったのだろうなと考えるが、正直に言ってとても気持ち悪かった。(異論は受け付けます。)
抱き上げたのは師匠の方で、そこまではいいのだが、受験の部分が……。
そこまであからさまにされると拒否反応が出る。
座間味くんの成長譚としては○。


好きだったのは「罠の名前」。
過激派組織内の抗争と、仕掛けられた罠に関する考察の1編。
やはりホワイダニットなんだなぁ。

しかし座間味くんがフェアならば、大迫はピュアwすぎるだろう。
その年齢で警視という立場でそれはねぇだろうよ。ボケる年でもないだろうに。
ワトソン役が知能レベルを低く設定されるのは致し方ない部分もあるが、もう少しどうにかしても座間味くんとの差別化は図れたと思うが如何。



<収録作>
「貧者の軍隊」
「心臓と左手」
「罠の名前」
「水際で防ぐ」
「地下のビール工場」
「沖縄心中」
「再会」



以上。