- 千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)/森谷 明子

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紫式部が探偵役として殿上人の日常の謎を解くさまを描き、
そして失なわれた物語の謎と、時の流れを読者に示す作品。
●「上にさぶらふ御猫」
中宮・定子に預けられていた帝の愛猫『命婦』が行方不明になった。
前の式部丞の娘・藤原香子づきの女童・あてきは大の猫好き。香子の夫で藤原道長に使える右衛門佐からその話を聞くと秘密裏に調査を始めた。
●「かかやく日の宮」
ときは六年の後、道長の娘・彰子が帝の寵愛を一心に受ける頃。
夏の盛りにかかり、世間に忘れられた女御・元子の住まう堀河の屋敷では笛音の怪が起きる。
元子に仕える小侍従は、昔馴染みの阿手木を訪ねて自ら体験した怪事を相談。音の聴こえた堂からは人が出て来なかったというのに、阿手木の主は簡単にその謎を解いてしまった。
その主こそ、今流行りの光の宮源氏を巡る物語を綴っている女人だった。
事件は落着。
しかし阿手木と主・香子は、小侍従のささいな言葉から源氏の物語が一部落帙しているのではないかと疑いはじめた。
●「雲隠れ」
籐式部も内裏から退き、すべての物語が世に出されたあとのこと。かつての侍女・阿手木は「かかやく日の宮」にて見つかった謎の答えを知ることになる。
<感想>
女性登場人物の描写がいい。
紫式部の観察眼や作家としての意地の強さ、定子や彰子の高貴なるさま、あてきや小侍従の可愛らしさと使用人としての世間ずれの対比など。
あてきの気になる岩丸や右衛門佐、道長など男性陣も人間くさくていい。
謎についてのみならず物語の伏線がきれいに回収されてかゆい所に手の届く作り。現代語なのに王朝系の美しさを伝える文章も好きだ。