マレー鉄道 | 猫の島調査報告書

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月夜にささやかな酒宴 ことのは積み上げ十年目

有栖川有栖の3大待ち作品、というのが個人的にありまして、

1は以前ご紹介の「女王国の城」(構想1987頃→発表2007)

2は「砂男」(雑誌発表1997→単行本未発売)

3にこちら「マレー鉄道の謎」となります。(構想1997以前→発表2002)

マレー鉄道の謎 (講談社文庫)/有栖川 有栖



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さて今回、火村と有栖はマレーシアへ。
高原リゾート地キャメロンハイランドに友人の衛大龍(ウイ・タイロン)を訪ねつつのヴァカンスだ。

一面に広がる茶畑に降りそそぐスコール
青青としたジャングル
ハーフティンバーの洋館
蝶を追いかける観光客など、平和な風景が続く。
1章の蛍の銀河の中を川上りする描写は特筆に値する美しさ。

しかし事件は突然起こるもの。
日本人家族に招待された彼らは、庭のトレーラーハウスで人が倒れているのを発見――目張り密室殺人。
異国でも、やはり事件に巻きこまれていく。


英語とマレー語と日本語が飛び交う中、有栖は手掛かりをすべて正しく書きとれているのか。

晩生な大龍は混迷の中、今度こそ美少女の涙を止めることが出来るのか。

帰国へのタイムリミットが近付いて苛立つ探偵は真実を掴むことが出来るのか。


そして
マレー鉄道は事件にどのように関わっているのか。


メイントリックは目を見張るものではないが、重ね技の素晴らしい作品だ。
この場所この時にしか有り得ない事件、その必然性の高さから高評価をつけている。
退屈が嫌いなかたにオススメ。