今日は引力の強かった、この本を。
「青チョークの男」/フレッド・ヴァルガス/創元推理文庫。
魅力的だった。
まず、主人公が。
1を聞いて10を知る男、アダムスベルグ署長。ジャン=バチスト・アダムスベルグ。
ぱっと見には、少しだらしなさそうなところもある、ひたすらマイペースで優しい小男。
考えても答えは掴めない。ただ気づく。
気づいたら、それが正解。
周囲にも、本人にすら掴めない思考ジャンプ。
現実世界のが13次元であるならば、実は彼の脳は13次元そのもので捉えているのだろう頓悟型の探偵。
それから、脇役。
海洋学者のマチルド。
盲目の性悪美青年シャルル。
"いい男性"とのお見合い記事に右往左往するクレマンス。
精神科医的な精神科医ロリー。
そして、謎。
パリの夜に青チョークの円が現れる。
隣にはいつも『ヴィクトール、悪運の道、夜の道』
円の中心には ガラクタ。
続けばいつか、あれが現れるとわかっている青い円の中。
最後に
斜めに切り裂いていく存在。
世界の果てで生きていてくれさえすればいい、絶対の人。
完全恋愛ではなく、絶対恋愛。
稀な美しい作品だった。
やはり、読むのは快楽だ。
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