JA改革 “農業票”激減、低下する影響力…族議員も距離 | graybanのブログ

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(産経新聞)

 農家の所得向上と食糧の安定供給を目指して設立された農業協同組合(JA)だが、全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする「上意下達」の風土が地域農協(単協)の弱体化を招いたといえる。その結果、“農業票”を背景にしたJAの政治的影響力も低下し、JAの後ろ盾だった自民党農林族議員も距離を置き始めている。

 「農業の衰退は農林水産議員にも責任がある。JAの言う通りに『現状維持』を重視してしまった」

 自民党の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)対策委員長を務める西川公也は農林族としてのこれまでの議員生活を自省を込めて振り返る。

 農林族議員とJA、農林水産省は「鉄のトライアングル」と呼ばれる強固な関係を保ってきた。農林族はコメの生産調整(減反)維持などに動き、JAは農村の集票マシンとして自民党を支えた。農水省も予算確保のため自民党を頼るという構図だ。

 そうした関係は、JA内に全中を中心とした「上意下達」の雰囲気を生んだ。組合員の相互扶助組織であるはずの「協同組合」が、自民党と交渉して農家向けの補助金を獲得してくる全中の意向に逆らえなくなっていった。

 新潟県の地域農協職員は「若者の農業離れが進む中で安い資材調達や販売競争力の強化を求める組合員の声はなかなか中央に届かない」と指摘する。全中は補助金を得やすいコメ政策に偏りがちで、地域によっては「果樹中心の本県では全中の指導は意味が薄い」(和歌山県内のJA組合長)という不満も募る。

 その結果、新規就農者は平成24年に5万6480人(農水省調べ)と40年前から半減。専業農家のJA離れも進み、参院選での自民党のJA組織内候補の得票は昭和52年の約112万票から平成25年は約34万票に激減した。

 政府の規制改革会議の農業ワーキンググループは今年5月、「全中廃止」など大胆な農協改革案を発表した。これを受け自民党農林族は、閣議決定する「規制改革実施計画」の文案づくりを始めた。

 「インナー」と呼ばれる幹部会合は当初、「小泉純一郎内閣の『郵政民営化』と同じだ」「農業参入に道筋を付けたい企業に踊らされている」とJA寄りの批判が噴出。TPP交渉を念頭に「官邸は農産物輸出大国の米国に過剰配慮している」とやっかむ声も出た。

 JAは自民党が開く全国会議員を対象とした農林関係会議の傍聴席に職員を派遣し、議員の出欠や発言をチェックするなどの圧力をかけた。全中理事も農林族幹部に直接働きかけたが、党内は「JA擁護」一色にはならなかった。

 党幹事長経験者は6月初旬、党本部で顔を合わせた農林族幹部の肩をたたきながら、こう耳打ちした。

 「あんな巨大な本部ビルを持つ農協は米国にも欧州にもない。法律で全中の存在を担保しなくても済む仕組みを考えるべきだ」

 農水相経験者の幹事長、石破茂も幹部会合で「農協自体が肥大化するのはおかしい」とし、全中について「一般社団法人として再出発すべきだ」と訴えた。会合では「ネットでの資材発注の活発化も踏まえれば『全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化』は意味がある」など、改革に前向きな意見も出はじめていた。

 最終的な閣議決定案は、全中について「JAの検討結果を踏まえて(中略)自律的な制度に移行する」とし、JA全農の株式会社化は「前向きに検討するよう促す」といった玉虫色の表現に落ち着いた。

 元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁は「自民党がJAの土俵で相撲を取ってしまい、骨抜きになった」と批判する。それでも、農林族幹部は「JA組織にメスを入れることなど昔は考えられなかった」と語り、改革に一歩踏み出した意義を強調する。

 農業を成長戦略の柱に位置づけ、JA抜本改革を進める首相の安倍晋三は「JAは国会議員を当選させる力はないが、落選させる力は持っている」と周囲に語り、一定の配慮をみせる。ただ、24年末の第2次政権発足直後には、全中会長の万歳章に「(自民党の他に)応援するところがあるなら、別に結構です」と突き放していた。

 農協改革の関連法案づくりが本格化するのを前に、自民党幹部は「政治力を考えず官邸と全面対決すれば『農業振興で農村を守る』という正当な主張すら通りづらくなる」と警戒感を募らせる。=敬称略