今回はツアー中の出来事について書く。


王家の谷を出たバスは、お土産屋を経由してハトシェプスト葬祭殿に向かうことになっていた。


ここは女王の偉業を伝える最も重要な遺跡であり、『碧いホルスの瞳』の聖地でもある。


『『碧いホルスの瞳』①』日本人はエジプトと聞けば、何を連想するだろうか。天を衝くピラミッド、ツタンカーメンに捧げられた至宝の数々、絶世にして悲劇の美女クレオパトラ…テレビでエジプトが…リンクameblo.jp


個人的に思い入れが強く、今回の旅の主要な目的地でもあったので大いに期待していた。


しかし、旅には思わぬ出来事がつきものだ。

王家の谷に予定よりも長く滞在してしまい、葬祭殿の見学時間が短縮されたのだ。


ツアー客は皆時間が延びた訳を知っていた。

1人の男性客が集合時間と場所を聞き取れず、広い王家の谷で迷子になったのである。


暑い王家の谷の岩山での人探しからヨロヨロとバスに戻ったガイドは若者と一緒だった。

バスの奥に座る私に向かってその若者が日本から来ていると告げながら、ガイドは彼をバスに詰め込んだ。

どうやら、日本人同士で一緒に行動してくれということらしい。

バスはのんびりと走り出した。


途中で寄ったフィギュアショップを早めに切り上げた私は、疲れて車内に残った彼の隣に座って挨拶をした。

彼は英語のツアーだと知らずに予約したことや友達が急に不参加になったことを日本語でポツポツと話した。

会話は途切れたが、他の客はお土産を買うのに夢中で簡単に戻って来そうになかった。


気まずい沈黙が続き、慰めや励ましの言葉を探しながら出発を待った。