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graterの小説保管庫

graterが趣味で書いた小説を保管するブログ。

「ご飯は学校で買お……」

玲奈は洗面所に入り、服を着替え始める。

「カバンどうするんだ?」

スクールバッグを持ってきた龍助が扉を開く。

「ちょっと!」

着替え途中であった玲奈は慌てて扉を押して閉めた。

「玄関置いといて!」

「おぉ、分かった……」

龍助は小走りで玄関にカバンを置きにいった。

「軽く使われちゃってるね♪」

エミィが笑いながら龍助の方へ寄ってくる。

「あ?」

「キャー怖いぃぃ♪」

エミィが楽しそうに玲奈の方へと飛んでいく。

すると洗面所では着替え終わった玲奈が髪を櫛でとかしていた。

「あぁあ、電車があと10分か……」

そう呟いて顔を洗う玲奈。

龍助はぼーっと洗面所の扉の前で座っていた。

数分後、洗面所の扉が開き、龍助が後ろに倒れる。

「おっと、ごめん。」

軽い支度を終えた玲奈はそのまま玄関へと走り、スクールバッグを手に取ると飛び出すように家を出た。

電車が来るまであと6分だ。

玲奈は思いっきり走った。



電車が玲奈の家の最寄り駅を出発する。

玲奈はぎりぎり間に合い、空いている席に座った。

(はぁ…セーフ…)

玲奈はそう思い安堵のため息をついた。

「なぁそんなに急いでどこに行くんだ?」

「学校だよね♪」

「えっ?」

玲奈が慌てて顔を上げる。

そこには侍姿の龍助と妖精のエミィがいた。

(しまった! こいつら忘れてた!!!)

電車の中、侍と妖精がいる。

あまりにも不自然な光景だ。

「ちょっとここ座って」

玲奈は龍助を自分の隣に座らせる。

そこはかろうじて車両の端で、座らせれば被害を小さくできるのだ。

「ん?」

そんな事など理解できない龍助はただ玲奈の横に座る。

「あんたの格好目立ち過ぎるのよ。」

「エミィは大丈夫♪」

そう言ってエミィは龍助の膝の上に乗る。

「エミィは、もっとだめ……」

玲奈はそう言ってため息をついた。

「大丈夫♪ エミィの姿は玲奈と龍ちゃんにしか見えてないはずだから♪」

「そう……よかった」

「うえぇえ……」

玲奈の横で龍助が変な声を上げ始めた。

「どうしたの?」

玲奈が龍助の顔を見ると龍助は苦しそうにうつむいていた。

「気持ちわりぃ……この怪物の中に入ったせいか?」

「怪物? ああ……もしかして酔ったのかな?」

玲奈が心配して龍助の背中をさする。

「うぅう、お前はなんとも無いんだな……」

「まぁ、電車酔いは人それぞれだし」

「でんしゃ?おい……俺は酒なんか飲んでないぞ?うう……」

「そうじゃなくて……もう少しだから頑張って。」

目的の駅に着いた玲奈は人目も気にしつつ、龍助をつれて電車を降りた。
翌日の朝……


心地よい春風に鳥たちがさえずりで喜びを表現している。

雲が青い空をゆっくりと流れ、太陽は力強く、そして優しく皆を照らしていた。

今日も晴れだ。



「うーん、私もなかなかのポエマーだね♪」

窓から外を眺めるエミィがそう呟いた。

「ふわぁぁぁ」

玲奈が大きなあくびをしながら目を開けた。

「でかいあくびだなー」

その横には龍助が座って漫画を読んでいた。

「かわいいあくびだね♪」

エミィがそう言って笑う。

「かわいい? あくびが?」

「うん♪」

龍助が意味分からんと首を振る。

(そうだった。この人たちがいたんだ)

玲奈は昨日のことを思い出し頭を抱える。

そしてゆっくりと起き上がった。

「あれ? そういえば何で龍助は現代語使ってるの?」

玲奈がふと疑問に思ったことを口に出す。

「現代語? 何の話だ?」

龍助はそう呟きながら漫画を読み進める。

「エミィが翻訳魔法かけてるんだよ♪」

「あ、エミィの魔法か。」

玲奈がなるほどねと頷く。

「正確には翻訳とは違って、龍ちゃんが何の違和感も無く現代語を使って理解しちゃう魔法だけどね♪ 知らないものは理解できないままだけど♪」

「そんな便利な魔法もあるんだね。」

玲奈はそう呟いて窓の外に目を移した。



明るい。



「ん? 今何時!?」

玲奈が慌てて布団を跳ね除ける。

「7時30分ですぅ♪」

エミィがそう答えながら玲奈の肩に着地した。

「あぁぁぁ!やばい!遅刻する!」

玲奈が勢いよく立ち上がったせいでエミィが転げ落ちる。

「うぇえ? 何!?」

そのエミィを龍助が驚きながらも手のひらですくいあげる。

「ちょっと龍助! そこのカバン取って!!」

「えっ? カバンか!? こ、これ!?」

龍助はそう言って白色のバッグを手に取った。

「違う! そっちの!!」

「お、おぉ……こっちか!!」

龍助がスクールバッグを手に持つころには玲奈は制服を手に取り、階段を駆け下りていく。

「朝から騒がしいですな♪」

飛び上がったエミィが玲奈の後を追っていく。

「えっ? ちょっと! カバンは!?」

龍助がスクールバッグを片手にそう叫ぶ。

「下に持ってきて!!」

階段下から玲奈の声が聞こえてきた。

「お、おぉ……」

龍助もカバンを持って階段を下りていった。
「はぁ……食ったら何か眠くなってきたな。布団借りるぞ」

「いいね♪ ふかふか♪」

玲奈の部屋に戻るなり龍輝とエミィはベッドに横たわった。

「コラァ!!」

玲奈の怒声もむなしくエミィはすやすや眠り始める。

「勝手すぎる……」

玲奈の事など気にせず、刀を枕元に置き、仰向けに寝転がる龍助。

「ねぇ、これからどうするの?」

玲奈はしかたなく椅子に座り、龍助の方を向く。

「ゆっくり考えるさ」

(ゆっくりって……いつまでいるつもり?)

玲奈はため息をつく。

「願い事3つできるしな。よく考えなきゃ」

龍助はそう言って目を瞑った。

「願い事ねぇ……」

玲奈はそう呟いて、もし自分が願い事3つ叶えられるなら何にするかを考えてみる。

「龍助は何にするつもりなの?」

玲奈はそう言って龍助に視線を向ける。



龍助からの反応が無い。



「って本当に寝てる!!」

玲奈のつっこみにも反応なく、龍助とエミィは玲奈のベッドを占領しすやすや眠っていた。

(はぁ……少しは私のこと考えて……ってまぁいいか……そういえば人を部屋にあげるなんていつぶりかな)

この後、玲奈は帰ってきた親に彼氏が来ていて今日泊まっていくことを伝えたが二人とも了承するだけでそれ以上は何も言わなかった。
「で……ここに現れたわけ?」

龍助の話を聞いていた玲奈が龍助にそう聞く。

「そうだ! だから俺は父ちゃんを見つけなきゃ!」

龍助は頷きながらそう答える。

「じゃあさー、聞くのは江戸の場所じゃなくて父親の居場所じゃないの?」

玲奈の問いに龍助が固まる。

玲奈は不思議に思い、龍助を覗き込む。

「おー! お前頭いいな!」

龍助の言葉に玲奈は呆れてため息をつく。

「じゃあ父ちゃんの居場所教えてくれ!」

「……残念だけどここには父親はいないと思うよ?」

龍助は玲奈の言葉の意味が分からず首をかしげる。

「だって、ここあなたがいた時代の500年後だもん…」

「え―――――――――!?」

龍助は驚きのあまり椅子から転げ落ちる。

「うん」

それに対し冷静に龍助を見つめる玲奈。

「あれっ? なんで??」

倒れた椅子を直し、自分も座りなおす龍助。

「ごめん、ミスっちゃったみたい♪」

龍助の袖の中からエミィが姿を現した。

「エミィ! こんなとこにいたのか!!」

エミィが罰が悪そうに舌を見せる。

「どえっ!?」

変な声を出して固まる玲奈。

「これじゃあ一つ目の願いは無効だな」

「ごめん♪ だから、あと3つのままだね♪」

エミィがそう言って笑う。

「どうした?」

固まったまま動かない玲奈を心配して龍助が玲奈の目の近くで手のひらを揺らす。

「ほんとに? ほんとに妖精なの!?」

「はぁい♪ 妖精のエミィです♪」

エミィは玲奈に向かって微笑む。

(あれれ? 何で見えてるんだろう? 龍助にしか見えないはずなのに)

「え――――!?」

今度は玲奈が驚いて椅子から転げ落ちた。

(いやいやいやいやおかしいでしょ! 妖精とタイムスリップした少年って!)





山中にある豪邸・・・

今日は大雨が降っていた。

「本当にできるのか?」

椅子に座り涙を流していた男は涙をぬぐい対面にだれかいるのかそう聞く。

「ああできるさ。相応の対価を用意すればな」

冷静といえば良いのか冷徹といえば良いのか分からないが、低く落ち着いた声が男の問いに答える。

「その対価って何なんだ!?」

食いつくように男が質問を重ねる。

「対価……それは……」

窓の向こうで雷が鳴り、一瞬光が部屋の中を照らした。



男が話している相手は妖精であった。
時間をさかのぼること500年。



1509年4月10日

土佐にある一つの城があった。

城の名は龍谷城[りゅうこくじょう]、主の名は古賀龍吾[こがりゅうご]。

古賀龍吾は2年前、龍谷の町を離れ江戸へ向かってからまだ帰ってこない。

そしてそれにとうとう痺れを切らした龍吾の息子である古賀龍助は旅の支度を整えていた。

歳は15、黒い短髪で身長は165cmほど。

名刀・龍火[りゅうび]を腰に挿している。

「俺は父ちゃんを探しにいく」

「もう…止めたって無駄なのですね」

龍助は母親であるお涼[おりょう]と向き合っていた。

「絶対に行く」

「そうね…あなたのその目、龍吾にそっくりだから分かるわ」

お涼が龍助を抱きしめる。

「しばらく家を空けます」

「分かりました。行ってきなさい」

お涼が龍助の抱擁を解くと龍助は準備していた馬にまたがった。

「行ってきます!!」

龍助はそういい残すと勢いよく町を飛び出していった。

「どうなるかは私にも分かりません。未来は変わるのでしょうか」

残されたお涼は小さくなっていく龍助の後姿を見て、そう呟いた。



龍谷城を飛び出してから10日がたった昼の山中――

龍助は大坂を越えた山道を馬に乗って進んでいた。

「やっと大坂を越えたか。遠いな江戸は……」

山道をゆっくりと進んでいると突然馬がのけぞり返る。

「えっ!?」

龍助が驚くころには馬は龍助を振り下ろそうと暴れ、龍助を振り落とすと勢いよく走り去っていった。

「あんのやろー!」

龍助は起き上がり服についた砂をはたいて落とすと馬の去っていった方をにらむ。

「あーあ……さてどうするか。戻るか、進むか……」

しばらく来た道と行く道を見比べる龍助。

「よし! 進もう!!」

根拠があったわけではないが龍助は進むことに決めて歩き出す。



「やめたほうがいいよ! 村はまだまだだし戻った方がいいよ!!」



突然声が聞こえ、龍助は焦って振り向くがそこには誰もいない。

「誰だ……?」

龍助は腰に挿していた刀を抜く。



「炎の刀かぁ。おっかないね♪」



「隠れてないで出てきやがれ!!」

龍助がそう叫んだとき、視界の上の方からなにやら降りてくるのが見えた。

それに気づき、目線を上に向ける龍助。

「はーい、出てきたよ♪」

それを視界に捉え目を丸くする龍助。



何故なら、そこに現れたのは手の大きさほどの妖精であったのだ。



「私は妖精のエミィ♪」

「妖精?」

龍助は刀を鞘に納める。

「やっぱり龍助だぁ♪」

「はぁ……なんだ?」

戸惑う龍助とは対照的にうきうきしている妖精・エミィ。

「私はあなたの願いを3つ叶えることができるの♪」

エミィはそう言って龍助の周りをくるくる飛び回る。

「願いを3つ?」

「うん♪ だから何でも言って♪」

龍助の顔の前で止まり微笑むエミィ。

それに対し龍助は何かを思いつく。

「そうだ! なら父ちゃんの所へ連れてってくれ!!」

龍助はエミィにそうお願いする。

「むむ? 時空を超えさせてってことかな?」

エミィは腕を組んで龍助にそう聞き返す。

「やっぱ無理か?」

「ううん♪ 大丈夫だよ♪」

「本当か!?」

エミィが頷くと龍助はガッツポーズをする。

「じゃあ、一つ目の願いはそれでいい?」

エミィがそう聞くと龍助はうんうんと何度も頷く。

「まだ残り2つあるし。」

「分かった。いくよ♪ ルベラト!」

エミィがそう唱えると龍助とエミィを白い光が包んだ。



そして二人はその場から消えた。