神経症の青年、旅に出る ~第6話 初めてのタイランド~ | 上新 卓也

上新 卓也

 小学校特別支援学級教諭。公認心理士。札幌在住。
 自然なリズムを大切に、教育、音楽、ヨガを通して、人々が心健やかに生きるお手伝をします。
 このブログが子育てや教育のヒント、心地よく生きるヒントになれば幸いです。

 来たー!タイランド。空港から外に出ると、ムアっとした空気に包まれる。

 ちなみに、この度の時も僕は毎日強迫症の薬を飲み続けていた。ただ、旅をはじめてから、なんだか、自分らしく楽しくいられる自分に気が付いていた。毎日ドキドキしながら過ごし、生きる力がみなぎってきているように感じていた。

 タイに来た理由は、世界中のバックパッカーが集まる“カオサン通り”という場所に向かうため。このバックパッカーに憧れたのも、もともとロバート・ハリスさんという方が書いた“エグザイルズ”という旅行記を読んだことが大きかった。波乱万丈な旅をしていた筆者が旅の拠点として書いていたのがその“カオサン通り”だった。世界中のバックパッカーが集まるため、そこではあらゆる場所に行く飛行機チケットが格安で手に入るという噂だった。そして、そこに行ってからどのように旅をしていこうか考えようと思っていた。

 空港のインフォメーションでカオサン行きのバス乗り場を聞き、バスに乗り込む。タイの言葉は柔らかくて好きだ。語尾が丸いような音になっており、聴いていると心が緩む。そんなタイ語を聞きながら、バスに乗り込んだ。高速道路を走っていく中、横に見える看板には、暗号のような言葉に見えるタイ語が書かれている。「外国に来たんだー。」なんて改めて感慨深く感じながらカオサンストリートに到着した。

 まずは宿探し。ここには安い宿が山ほど集まっている。本当に安いところでは一泊300円位から(きっともっと安い宿もある。)中国人のツアー観光客が大勢出てきた高級そうなホテルまである。いくつかの、宿に行き値段を聞き、部屋を見せてもらう。はじめは、400円位で泊まれた、天井に大きな扇風機のある、メインストリート沿いの宿にした。

 通りには様々な屋台がある。ラーメン屋、フルーツジュース屋、よくわからない肉の串焼き。フルーツジュースはビニール袋に入れて渡してくれる。量も多いし、とてもうまい。初めての刺激だらけの通りを散歩して、しばらく楽しんでから、旅行の計画を立てるべく旅行代理店に向かった。

 メインストリートから一本入ったところに、小さな旅行代理店がひしめいている。様々な国への飛行機代金が看板に書かれており、その安さに心が躍る。ある旅行代理店に入り話を聞いていたら、バンコクからカンボジアのアンコールワットの辺りまで、バスで500円位だという。片道12時間がバスで500円。物価の違いというものをまざまざと感じる。

 僕は、できるだけ地元の人たちと近い旅がしたかった。なのでツアーなどには参加するつもりはなかった。アンコールワットは見たいという思いがあり、今回の旅は、まず、ベトナムのハノイ(北部の旧首都)に飛行機で飛んで、そこから、列車でベトナムを南下し、陸路でカンボジアに入国。そして、また陸路でタイまで戻ってくる計画を立てた。心がワクワクしているのが分かる。

 その夜は、メインストリート沿いの宿にしたことをほとほと後悔した。何せカオサンストリートは眠らないのだ。夜中の12時を過ぎても外には人が溢れていて、クラブの大音量の音楽が道にまで漏れ響いている。陽気な外国人たちが外では騒ぎ続け、車やバイクのエンジン音が鳴り響いている。エアコンなどついていない部屋なので、窓をあけないと蒸しあがってしまうため、扇風機全開で窓も全開。外の騒音と、明日から始まる旅への興奮でなかなか寝付くことができなかった。それでも、そんな状況が自分の憧れていた一人旅のイメージとつながり、嬉しい気持ちもある。ふと気が付くと、部屋の気温が少し下がり、外のクラブの音が消え、エンジン音が心地よく聞こえる、朝を迎えた。

 

次回  「第7話 ベトナム珍道中」  9月18日(土)更新予定