みなさん こんにちは。
今回は2020年に出版された『Not-God アルコホーリクス・アノニマスの歴史』という本の著者アーネスト・カーツ(Earnst。Kurtz/Earnie: アーニーと友人たちは呼んでいた)について書きます。
この本は実は1979年に出版されています。歴史の情報なので、バックグラウンド情報や資料が膨大であったため、和訳するのに長い時間がかかったということもあります。
日本語訳をされたのは、上智大学グリーフケア研究所 葛西賢太特任准教授で、1年がかりで翻訳されたそうです。
さて、みなさん、この本のタイトルに「Not-God」というタイトルがついているのを不思議に思いませんでしたか?
その理由などにもふみこんでゆきます。
1.セキュラーAAとは
アーネスト・カーツはAA メンバーで、しかも、セキュラー(secular )世俗的な立場のAAメンバーでした。
彼はかつて、カトリックの司祭でしたが、のちに司祭職を離れ、
宗教的な教義に縛られない、学術的で世俗的な視点からAAの霊性を探求した人物です。
彼は AA の歴史と霊性の理解に大きく貢献したことで知られ、また依存症回復の分野でも重要な役割を果たしました。
彼の研究は
- セキュラーAA
- 学術的な依存症研究
- 多宗教・無宗教の回復コミニュティ
- AAの霊性理解の深化
に大きな影響を与えました。
アグノスティカとはセキュラー(世俗的)AAのグループの1つで、ある特定の宗教を信仰もしくは無神論者であることを指示したり、反対したりしないという考え方のグループです。
AA AgnosticaというウェブサイトにはセキュラーAAについてこのように書かれています。
AA Agnostica は、いかなる宗教や無神論を支持したり反対したりすることはありません。
私たちの唯一の願いは、苦しんでいるアルコホーリクが、他人の信念を受け入れたり、自分自身の信念を否定したりすることなく、AA の中でしらふを見つけられるようにすることです。
「Agnostica(アグノスティカ)」という言葉は、『ビッグブック』として知られる『アルコホーリクス・アノニマス』の第4章「私たち不可知論者(We Agnostics)」に由来しています。
私たちが AA に関連して「不可知論者(agnostic)」という言葉を使うとき、あるいは「無神論者(atheist)」や「自由思想家(freethinker)」といった言葉を使うとき、それは単にこうしたグループや個人が持つ特別な知恵――
つまり 回復において“どのような理解の神”であっても、神への信仰は必須ではない という理解を指しています。
まとめると、祈りたい人の自由も、祈りたくない人の自由も守るということのようです。
このようなミーティングは日本にもすでに存在しており、ミーティングも定期的に行われているようです。
2.『Not-God』の核心
『Not-God』で強調されるのは
AAの最も重要な霊的原理を象徴しています。
アルコホーリクは「自分は神でない」ことを認めることで回復が始まる。
彼はAAの歴史を徹底的に調査し、次のような結論に到達しました。
1) AAの霊性は「人間の限界(limitation)」の自覚から始まる
アルコホーリクは、自分の意思や力では酒をコントロールできない。その「限界」を認めることが、ステップ1の核心であるということです。
- スポンサーシップ
- ミーティングでの分かち合い
- 祈りと黙想
- 共同体の原理
- 伝統の精神
これらすべてが「自分は神ではない」という姿勢に基づいたものであるということです。
なお、彼はAAの霊性を「宗教的教義」ではなく、人間の弱さ・限界・検挙を受け入れる生き方として描きました。
2) カーツが捉えたAAの霊性:限界(Limitation)、と謙遜(Humility)
限界(Limitation)とは
彼はAAの霊性の中心を「限界の受容」と位置付けました。
- 自分の力には限界がある
- 他者の力にも限界がある
- 人生は思い通りにはならない
- だからこそ、共同体が必要
この「限界の受容」がAAの霊性の出発点であり、ステップ1~3の根底に流れる思想と捉えています。
謙遜(Humility)とは
「自分を低く見ること」ではなく、「自分を正しく見ること」と定義しました。
- 自分の弱さ
- 自分の限界
- 他者の助けが必要であること
- コントロールできないものがあること
これらを正直に認める姿勢が謙遜であるということです。
3) Bill. Wとの思想的な共通点とセキュラーAAの歴史的な背景
- Bill W.は降参(surrender) 、Kurtsは神ではない(Not-God)と表現
- Bill W.は「霊的体験は人それぞれ」Kurtsは「AAの霊性は人間の経験の共有」
- Bill W.は「謙虚は永遠のテーマ」、Kurtsは「謙遜はAAの核心」と位置付けた
KurtsはセキュラーAAの歴史的背景にもふれ、
- AAは宗教団体ではなく、霊的なプログラムとしてAAを発展させた。
- ”God"を広く解釈できるように、”Higher Power" ”Good Orderly Direction" などの言葉を使った
3.なぜ、AAの歴史本”Pass It On" を頻繁に引用しているのか?
AAの公式歴史書籍の中で最も信頼性が高かったからだと言われています。
この本は1984年にAAワールドサービス社から出版された、Bill W.の公式伝記です。
内容としては、
ビルの家族・友人・同僚などの証言、草創期のメンバーたちのインタビュー、そして、それに基づいたアーカイブス文書や写真、未公開資料が載っています。
この本はAAの歴史を美化せず、Bill W.の弱さや失敗、うつ病や霊的体験なども含めて正直に描かれていることから、AAの歴史を語る際の欠かせない資料と考えたのです。
実際にKurtsの研究を補強する役割を果たしました。
パスイットオンという書籍は、AAの歴史と霊性を理解するための基礎資料でした。
この本を出すことで、彼はいわゆるAAの「昔話」や 「根拠のない通説」を「歴史」として扱おうしました。
まとめ
本のタイトルである『Not-God』はセキュラーAAという意味ではない。
アルコホーリクは「自分は神ではない(Not-God)」と認めるところから回復が始まる
ということ。
次回は日本語訳をしてくださった葛西賢太特任准教授のことについても書きたいと思っております。
今回も最後まで読んでくださってありがとうございます。
