VORTEX ヴォルテックス

『ルクス・エテルナ 永遠の光』などのギャスパー・ノエが

病と死をテーマにして撮り上げたドラマです。

 

最期の時が近づきつつある心臓の病気を抱えた夫と

認知症を患う妻の姿を描く。



「老い」と「死」について真剣に考えさせられる映画です。

自分も50代半ばになり、とても他人事とは思えません。

両親がまさに似た状況ということもそう思った理由です。

 

人間は老います。

いつまでも元気でいられません。

呆けることも避けられません。

大抵の人はいろんな病気を患います。

 

もちろん、誰しもが、俗に言う「ピンピンころり」を願っていますが、

そんなに都合良く人生を閉じられるのは、ほんの一握りです。

 

最期は、人に頼り、迷惑をかけて、死んでいくのが一般的です。

また、頼られる側も必死です。

 

仕事がある人は物理的にも、時間的にもサポートできることは限られます。

体力もいります。

お金も必要です。

 

施設に預けることも選択肢ですが、経済的な問題はつきまといますし、

何と言っても、老いた本人の気持ちがどうかにもよります。

 

とっても難しい問題です。

これで精神的にも、肉体的にも、経済的にも、

疲弊している人たちがたくさんいるのですから。
 

一方でね、こうも思います。

老いと死は、誰一人として避けられないのだから、神経質になり過ぎずに、

「なるようになる」と考えた方がいいということです。

 

もちろん、なるようにしかならないのが現実なので、

あまり心配し過ぎても仕方のないこと割り切ると、

少しですが楽になれるかもしれません。
 

ところで、本作は、2画面で構成されています。

最初はちょっと違和感があり、どっちを見ればいいのかと思いましたが、

そんなことはすぐに気にならなくなりました。

 

全く別の話が2画面で繰り広げられるわけではないてすし、

老夫婦二人の行動を追うのがメインなので、動きも遅く、

2画面に付いて行けないことは全くありません。

 

また、それぞれのアングルからカメラが捉えることで、

それぞれに焦点が当たって、とても新鮮でした。

 

撮影は大変だったでしょう。

事前の緻密な撮影プランの計算と検討が必要だったに違いありません。

 

あと、編集も2倍かかるわけで、エディターも2時間半の長尺作業、

大変お疲れ様でした!


心臓に持病を抱える映画評論家の夫と、認知症を患う元精神科医の妻。

離れて暮らす息子はそんな両親のことを心配しながらも、

金銭の援助を相談するため実家を訪れる。

 

夫は日ごとに悪化していく妻の認知症に悩まされ、

ついには日常生活にまで支障をきたすように。

やがて、夫婦に人生最期の時が近づいてくる・・・。
こんなお話です。


出演は、ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、

アレックス・ルッツ、キリアン・デレ等。


フランス映画です。
老夫婦を演じたダリオ・アルジェントとフランソワーズ・ルブランは、

痴呆や病気を抱えながら、死に向かって生きていく様を本当に見事に

演じ切ったと思います。

 

実は、とっても難しい役どころに違いない。

多分、それぞれの役を演じながらも、自らの老いや死について、

自問自答しながら撮影に臨まれていたのではないでしょうか。

高齢なのに、長尺映画の主演、大変お疲れ様でした!


MY評価: ☆4 (☆5で満点)