ぼくは君たちを憎まないことにした

2015年のパリ同時多発テロ発生から2週間の出来事を描いた、

アントワーヌ・レリスの原作を基に描く人間ドラマです。

 

テロで妻を失い、悲しみと不安の中で息子の面倒を見る男性が、

テロリストに手紙を書く。

 

 

この語り掛けるようなタイトル。
愛する妻がテロの犠牲となった夫の、犯人たちへの言葉です。

ある意味で潔く、大きな心で、事件を受け止めているように感じる。

 

見方によっては、とてもカッコいい。

あらゆるものを卓越した境地にならないとこの言葉は出て来ないように思う。
 

だけど、本編を見て思いました。

やはり、そんな聖人君子はいません。

 

その言葉自体に、嘘や偽りはなかったでしょう。

ただ、そんな簡単に消化できるようなことではない。

 

要は、そうありたいと思いつつも、いろんな記憶や思い出が蘇るたびに

故人を偲ぶわけで、その都度様々な感情が襲ってくるわけです。

 

泣いたり、悲しんだり、時に取り乱したりしながら、

次第に落ち着いていくのだと思います。
 

特に、まだオムツも取れないような幼児がいるので、

生きる大きな励みになる一方で、気が休まらない日々も続きます。

 

その方が気が紛れるのでいいという説はありますが、

男手ひとつで仕事と子育てを両立するのは大変です。
 

もし俺が主人公の立場だったら、どう思うか?

どう行動できるか?

 

この手の映画を見ると、どうしても

「自分ならどうするか?」と考えてしまいます。
 

俺なら、一人で抱え込まずに、家族や周囲の助けを求めるのかなと思います。

生きていくために働かないといけませんしね。

 

子供にとっても、出来るだけ独りぼっちにはせずに、

ちゃんとみんなで見守るようにした方が健全かなと思います。
 

もちろん、そんなことになるのは絶対に嫌ですけどね。

そして、何より、この世からテロが無くなることを切に願います。


パリに暮らすジャーナリストのアントワーヌ・レリスは、

愛する妻エレーヌと幼い息子メルヴィルと幸せな日々を送っていた。

 

しかし2015年11月、同時多発テロが発生し、

コンサート会場にいたエレーヌは事件に巻き込まれ命を落としてしまう。

 

突然の悲劇に激しく動揺し、幼いながらも何かを感じ取っている

息子のことを思い、大きな不安に襲われるアントワーヌ。

 

それでも彼はSNSでテロリストに向けて“憎しみを贈らない”と宣言し、

息子と2人で今まで通りの日常を続けることでテロに打ち勝つと

決意表明するのだった。

 

このメッセージは世界中に拡散し、動揺するパリ市民を落ち着かせ、

未曽有の危機に立ち向かう勇気と団結力をもたらしていく・・・。
こんなお話です。


出演は、ピエール・ドゥラドンシャン、ゾエ・イオリオ、

カメリア・ジョルダーナ、トマ・ミュスタン、

クリステル・コルニル、アン・アズレイ、

ファリダ・ラウアジ、ヤニック・ショワラ等。

主演のピエール・ドゥラドンシャンは、

妻を亡くした夫の悲しみと葛藤を上手く演じていました。

泣いたり、取り乱したりするシーンが多く、

笑う場面はほとんどなかったので、

私生活にも影響が出たのではないでしょうか?笑
 

子役、と言っても、まだオムツのある幼児役のゾエ・イオリオが、

天才的でした。

実際にはどうか分かりませんが、パパとママくらいしか未だ

言えないくらいの年頃でしたが、感情表現がとても上手でした。


MY評価: ☆4 (☆5で満点)