光復
 

『神様のカルテ』シリーズなどの深川栄洋監督が手掛ける自主映画プロジェクト

「return to mYselFプロジェクト」の第2弾となるドラマです。

 

認知症の母と暮らす42歳の女性が、高校の同級生との再会後、

思わぬ事態に陥る。

 

 

とっても面白かったです。

そんな言葉で表現するにはちょっと不適切ではありますが、

完璧に引き込まれました。

 

一言でいうなら、一人の女性の転落人生を描いたものです。

よく言う、何やっても上手く行かない、負の連鎖にハマってしまい、

何もかも失ってしまいます。

 

映画だから可哀想で済みますが、同じような境遇の人は

実は少なくないのかもしれません。

 

認知症の家族を抱える人はたくさんいますし、

親の介護をしている人も少なくない。

 

本作の主人公は、父親、そして母親と、15年にわたって介護をしていました。

仕事も恋愛も全て捨てて、親のために尽くした半生でした。

それなのに、ちょっとしたことをキッカケにして、生活が一変しました。

 

人間は、希望を持ちたい生き物です。

苦しい時には、何かにすがりたいと思うのも当然です。

たまにはセックスしたいのだって当たり前です。

 

そんなちょっとした願望や欲望が、人生を狂わすなんて、

あまりにもやるせないです。

 

あんなに頑張っていた主人公に対して、あんな酷い仕打ちを許した神様を、

俺は憎みました。

 

踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂など、

悪いことが重なることの諺は幾つかあります。

 

結局のところ、失敗すると取り返そうとしたり、かえって慌てることで、

また失敗を繰り返すことは理屈では分かる。

 

そうだとしても、主人公の不安続きには、同情を通り越して、

無念さと徒労感を感じずにはいられませんでした。

 

この話、どういう結末になるのか、途中からもの凄く不安になりました。

最後くらい幸運が訪れて欲しいと願いました。

 

ラストの20分くらいでしょうか、話の流れが全く読めなくなりました。

もしかして、「これで終わり?」と、別の意味で不安になりました。

 

そしたら、驚きのエンディングでしたね。

この脚本を考えた人は、天才であり、悪魔ですね。

 

人間不信に陥りそうな映画です。

ご覧になる方は、心して観てくださいね。

 

 

両親の介護のため、15年前に東京から実家の長野に移り住んだ42歳の大島圭子。

生活保護を受けながら寝たきりの父を看取り、アルツハイマーに冒されて

意思の疎通が取れない母・安江の介護をしながら慎ましく暮らしている。

 

ある日、安江の徘徊騒動をきっかけに高校の同級生・横山賢治と再会した圭子は、

彼の手を借りながら母の介護をすることに。

 

それまでは暗く、表情のない圭子だったが、次第に明るさを取り戻し、

年相応の女性として肉体と精神に火が灯り始めてゆくのだった。

だがそんな折、安江が急死。

 

警察の検視の結果、安江の死は病死ではなくインシュリンの過剰投与による

殺人事件と断定される。

警察から取り調べを受ける圭子の人生は真っ逆さまに転がり落ちてゆく・・・。

こんなお話です。

 

 

出演は、宮澤美保、永栄正顕、クランシー京子、関初次郎等。

 

主演の宮澤美保が、とにかく素晴らしかったです!

認知症の母親の介護に疲れ果てた姿がとても印象的でした。

そして、次々と起こる不幸を全力で演じてくれました。

一矢纏わぬ濡れ場もとても素敵でした!

本当に大拍手です!!

 

ところで、宮澤美保さん、本作の深川栄洋監督の奥様なんです。

奥様を脱がせるなんて、酷い監督です!

あと、この悪魔の脚本も深川栄洋監督が書き下ろしたものです。

素晴らしいと絶賛したいところですが、奥様を脱がせた罪は重いので止めときます笑

 

 

MY評価: ☆5 (☆5で満点)