向田理髪店

『イン・ザ・プール』などの原作で知られる直木賞作家・奥田英朗の

連作短編集「向田理髪店」を映画化したものです。

 

過疎化の進む元炭鉱町で理髪店を営む親子のストーリーを中心に、

町で起こる騒動や人間模様を描く。

 

 

俺も九州の田舎町の出身なので、とても他人事としては見られなかった。

俺は農家の次男として生まれ、家を出る定めだったから、

一応自分としては田舎を捨てたわけではない。

 

結果として、家を出て35年、今は何とか東京で仕事を続けて暮らしている。

田舎で過ごした時間の約2倍を都会で暮らしたが、未だに故郷が好きだし、

少なくとも年に1回は帰省している。

 

俺の田舎は過疎化が劇的に進んでいる町ではないけど、

東京に比べると時間の進むスピードは遅く、遊びの選択肢も少ない。

でもこの歳になると、かえってそっちの方が落ち着くようになってきた気がする。

 

本編の町と同じく、近所中が顔見知りなので、悪いことしたら大変です。

でも人情というやつは触れるととっても嬉しいものです。

 

そういう田舎独特の人間関係を、面倒とか煩わしいと思うか、

逆に心の安定と捉えるかで、田舎暮らしは全然変わりますよね。

 

いつか田舎に戻って悠々自適に暮らしたいと思う反面、

結婚して妻や子供たちが九州へ一緒に帰ってくれるはずもなく、

俺の願望は心の中にしまったままです。

いつか家族に打ち明けてみたいと思っています。

 

 

かつて炭鉱で栄えた「筑沢町」で、向田康彦は妻の恭子と親から継いだ

理髪店を営んでいた。

理髪店の客は近所の老人たちがほとんど。

 

仕事が終われば、近所のスナック「昭和下町」でガソリンスタンドを営む同級生の

瀬川真治や電気店を営む谷口修一と過疎化が進む町について愚痴をいう毎日。

 

そんなある日、東京で働いていた息子の和昌が帰郷し、

会社を辞めて店を継ぐと言い出す。

和昌の言葉に恭子は素直に喜ぶが、康彦は自分の過去が頭を過ぎり、不安を感じる。

 

和昌はそんな父の思いも知らず、理容師学校の費用を稼ぐために

運送会社でアルバイトを始める。

 

親子3人の生活が再開したある日、市役所で地域振興に関する会議が開催される。

中央官庁から出向してきた佐々木良平は、和昌をはじめ若者世代から積極的に意見を聞くが、

康彦は若者たちを煽る佐々木に疑問を投げかけ、世代間に不穏な空気が流れる。

 

一時は父に反発した和昌も、次第に父の語る町の現状を目の当たりにするようになる。

やがて、人気アイドル・大原零主演の映画撮影が筑沢で行われることになる。

この撮影を機に、康彦をはじめ、町の人々が少しずつ変わり始め・・・。

こんなお話です。

 

 

出演は、高橋克実、白洲迅、板尾創路、近藤芳正、富田靖子、芦川誠、田中俊介、

坪内守、鈴木大輝、永田崇人、重松隆志、運上弘菜、矢吹奈子、本宮泰風、

筧美和子、根岸季衣等。

 

全体的にキャスティングがとっても良かったですね。

高橋克実は、映画初主演だそうです。

名バイプレイヤーですが、田舎町の理髪店の主人はとても似合っていました。

 

主人公と仲良し役の板尾創路と近藤芳正も良かったです。

板尾さんの関西弁が何故だか妙に九州弁の中に溶け込んでいました笑

 

 

MY評価: ☆4 (☆5で満点)