第7節 山形県民のフジテレビを取り戻す戦いと奇跡のさくらんぼテレビ開局
ネットチェンジ開始の記事
ネットチェンジ開始の新聞広告
こうして、YTS・山形テレビはテレビ朝日系にネットチェンジし、ニュースステーション、新やじうまワイド、はぐれ刑事純情派&さすらい刑事旅情編、暴れん坊将軍等の時代劇、ドラえもん、当時社会現象になったクレヨンしんちゃん&美少女戦士セーラームーン等のアニメ、スーパー戦隊が全国同一ネットで放送される様になりました。
序でにANNステーションEYEの4月1日放送でYTSが最初に全国中継したのも新庄市の中学生マット圧死事件でした。「本日よりANNネットワークに加盟したYTS・山形テレビより中継でお送りします。」
フジテレビ系時代から放送が続く「提言の広場」が編成された都合上、金曜夕方の遅れネットとなった特捜ロボ ジャンパーソン
但し当時のメタルヒーロー→コメディロボット→仮面ライダー枠の特捜ロボ ジャンパーソンはフジテレビ系列開局時代から続く県民番組・提言の広場が移動した関係で金曜日夕方の遅れネットになり、09年春の仮面ライダーディケイドの途中で漸く全国同一ネットとなりました。
また、水曜日夜7時は当初は目撃ドキュン!(目撃ドキュン!は当初ローカルセールス枠で、山形では土曜朝9時半からの遅れネットでした。)では無く、フジテレビ系時代のゴールデンタイムにローカル番組を放送した1970年代の「どんぐり合戦」や「チャンネルはU」以来(2023.1.9・山形のはっちゃんさんからの指摘)の自局製作のクイズ番組が放送されていましたが、95年に目撃ドキュン!になりました。
そして機動戦士Vガンダムも遅れネットで放送されるも、此方は視聴率不振か単発で終わり、他のテレ朝局と同様G→W→Xは後日再放送枠で纏めて放送となりました。
そして、一時期テレビ朝日とクロスネットだった関係なのか、秋田テレビ製作の「クボタ民謡お国めぐり」と、農林水産省製作の「若い土」はネットが打ち切られる事なく継続され、「クボタ民謡お国めぐり」は再び在京キー4局の系列局で放送されるブロックネットとなりました。(一時期、テレビ朝日系新潟テレビ21でもネットされていた)
ネットチェンジ直後のYTS・山形テレビはテレビ朝日系番組の垂れ流しでは視聴率で不利だったことからテレビ東京系の番宣ネットも多く、開運!なんでも鑑定団、愛ラブSMAP!→愛LOVEジュニア、しましまとらのしまじろう、ギルガメッシュないと、おまかせ!山田商会などを番宣ネットし、この辺はテレビ東京との関係を残しておいた事が役に立ちました。
タミヤRCカーグランプリ、ザ・スターボウリングはYTSではネットチェンジの前後を通じて番宣ネットされ、山形テレビのネットチェンジでもテレ東伝説が発動されました。
一方のYBC・山形放送は必然的に日本テレビ系マストバイネット局ともなり、ルックルックこんにちは、ザ・ワイド、追跡、EXテレビと言った情報帯番組が始まりましたが、翌年の改革で追跡とEXテレビが終了した為、追跡とEXテレビは短命に終わりました。
また、日本テレビ系マストバイ局への移行で火曜サスペンス劇場、とんねるずの生でダラダラ行かせて!が時差ネットから同時ネットに昇格しました。火曜サスペンス劇場はクロスネット時代は「土曜サスペンス劇場」として時差ネットされました。また、天才・たけしの元気が出るテレビ!、知ってるつもり?、スーパーテレビ情報最前線、金曜ロードショーがYTSから移行しました。金曜ロードショーはYTS時代は「火曜ロードショー」として時差ネットされました。
YTSのネットチェンジへの報復として、フジテレビはYBC・山形放送にフジテレビ系列の番宣を禁止しましたが(YBCもYTSのネットチェンジに協力的だった説もあり)、TUY・テレビユー山形が以下のフジテレビ系番組を引き取りました。
・サザエさん(本放送)、キンカン一社提供枠、水曜劇場(1期のみ)、健保連のすこやかさん、メイコとあなたのゼミナール、春の高校バレー、東日本女子駅伝、土曜23時後半枠
・KTV 関西テレビ制作枠 ねるとん紅鯨団→ハンマープライス、KTV日曜21時枠
・テレビ静岡制作枠 テレビ寺子屋
途中から追加された番組
・ドラゴンボールZ→GT、キテレツ大百科→こちら葛飾区亀有公園前派出所
TUY・テレビユー山形は木曜劇場、THK昼ドラマ枠も番宣ネットされましたが、フジテレビ系列ドラマは再放送枠で纏めて放送は、YTS時代と変わりませんでしたが、山形県民の悲しみと怒りは収まらず、YTSもまたネットチェンジでスポンサー確保に苦労するのでした。
「新世紀エヴァンゲリオン」がテレビ東京系で放送された1995年~1996年当時はYTSのネットチェンジに対する山形県民の反発が強かった時期でもあり、「YTSがテレビ東京系にネットチェンジしていたら、山形県でもエヴァンゲリオンがリアルタイムで視聴出来たのに」と悔しがった山形県のアニメファンもいました。
さくらんぼテレビ開局当時の新聞記事。フジテレビ系復活と山形県民の執念と努力が実った瞬間だった
さくらんぼテレビCMしかし、94年にフジテレビは日本テレビに視聴率首位を抜かれ、13年に渡る第一期黄金時代が終わりを告げました。
また、YTSが抱えた負債とSAY開局に掛けた費用が共に25億円だったのは偶然とは言える驚きで、SAYは笑っていいとも!とダウンタウンのごっっええ感じが再び見られる様になっただけでなく、月9を含めたドラマが全て同時ネットになりYTS時代より改善され、山形県民の悲願が漸く果たされました。さくらんぼテレビ開局で再び観られ2回最終回を迎えた笑っていいとも!(上)とダウンタウンのごっつええ感じ(下)
また、空白期間中に終了した世界名作劇場の未放送五作を全て再放送する粋な計らいをしてくれ、来る地デジ対策でSAYは徹底的なローコスト運営となり、開局当初スタジオは無く、スーパータイムはSAY本社ロビーで放送されていました。その後、SAYはフジテレビ第二期黄金時代の高視聴率に支えられ、本説スタジオも作られ、結果オーライとなりました。
第8節(最終節) その後とそして今
一応結果オーライとなった山形テレビ騒動。実はYTSは独自の番組制作能力が高く体力もあった為、服部体制の数少ない功績かも知れず、今では東北のANNでは宮城の東日本放送に対で影響力のある局と言え、テレ朝の来るもの拒まずの姿勢が無ければ、ネットチェンジはしなかったでしょう。2006年にYTSは山新グループを脱退し、開局38年目にして漸く本来の完全独立の道を歩みました。
YTSは平成新局の青森朝日放送、岩手朝日テレビ、秋田朝日放送、北陸朝日放送、長野朝日放送、山口朝日放送、愛媛朝日テレビ、長崎文化放送、熊本朝日放送、大分朝日放送、琉球朝日放送に対して老舗局として支援を行いました。
その結果、ANNは他の四系列局と遜色のない製作能力迄上がり、その時期の前後にテレビ朝日もネットワーク完成を期にジャンル再編を実行。途中外資系資本とのお家騒動も起きるも、2010年代にそれらの効果が視聴率トップと言う形で現れました。
そして2010年代に入り、フジテレビは日枝会長の長期独裁体制と韓流ゴリ押しで視聴率が低下し、SAYにも影響が出、一時期テレ朝が視聴率トップに立ち、YTSが一時期ながら視聴率トップに返り咲くとは何という皮肉と逆転でしょうか?
もしも、92年のネットチェンジ時点でYTSが日枝会長の独裁体制の危険性を感じていたなら、先見の明があったと言わざるを得ません。
歴史とは判らないと熟々実感しました