白蓮の想いを辿って | ~しなやかに生きる~

白蓮の想いを辿って

もう立春も過ぎてしまいましたね

本当に月日の経つのは早くって・・・


久しぶりに以前から訪れてみたかったところに行ってきたけれど

昨年の写真が残っていたので先に載せますね、

だからそこは後日・・・ なあんて書きましたのは

つい何日か前のように思っていましたがもう二週間ほども前になるようでビックリ!笑


かなり遅くなってしまいましたが

写真を撮ってきましたので載せてみますね


その行きたかった場所というのは

飯塚市にある〝旧伊藤伝右衛門邸〟(飯塚市有形文化財)

歌人の柳原白蓮が10年ほど過ごしたというお屋敷です


公開された当初の頃は邸内の撮影は禁じられていたようですが

今は特定のものを除いて許可されています


〝柳原白蓮〟については不十分ながらも過去の記事に書いていて

リンクしようかなといったんは思ってみたのですが、

実は今回この訪問を機に、これまで深く考えてみなかった

伝右衛門側からの見解や気持ちに想いを馳せてしまった結果、

そんな気が失せてしまいました


此処を訪れてみたことで必然的に目にしたり調べてしまった資料などで

伝右衛門の事を詳しく知ることとなり、あの頃の見解ではいられなくなったのです


とにかく白蓮さん、龍介さん、

そして伝右衛門さん、それぞれの人、人生に敬服するばかりです


そんな中で幾らかの私感を語ることさえもおこがましく思われ・・・

だけど写真だけではお伝えできない部分もあると思いますし・・・


それで、前の記事のあとに参考資料として

読売新聞に掲載された記事を抜き取って追加しました

そちらに書いたものをリンクしておきますね


ココに書くと写真だけでも多いのでゴチャゴチャになりそうなので。

簡単にまとめてあるだけですが、ぜひこちらをご一読下さい。


 読売新聞H22・12・26朝刊(日曜版)〝異才列伝〟より

  柳原白蓮 ~きっぱり駆け落ち 美貌の歌人~

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生きた跡そのものに触れ、空気を感じると

胸が締め付けられるような想いに捉われます


旧伝右衛門邸、門を入って正面玄関のところです


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冷たいからと受付けでは携帯カイロを一人に一つずつ下さいます

ありがたいお心遣いに心が温かくなる想いがしました


玄関を上がるとすぐ左にある洋風の応接室


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マントルピース(暖炉)にはアール・ヌーヴォー調のヴィクトリアン・タイル、

この部屋をはじめ、細かいところまでいたるところに贅を尽くした和洋折衷の

広壮な、成金趣味などとは程遠い、質の良い素敵な邸宅です


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お屋敷も迷うほどに広いですが、回遊式の庭園も広く素晴らしいものです

展示してありましたが、ここでロケもあったんですね


映画なのかドラマなのか・・・ 

林真理子の〝白蓮れんれん〟を原作とした舞台は見ましたが

これは全く知りませんでした。DVDがあるのなら一度見てみたいです


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下は書斎の壁ですが

帯を解いて練り込んであるそうです


この書斎の棚、シャンデリア、ステンドグラス、襖絵など

装飾がとても素敵で写真も撮ったのですがほとんど真っ黒、

他の部屋も含めて、光がなかったせいか

様子がわかるほど写っているものが少なかったことが残念です


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一階の小部屋にあった箪笥

引き出しの取っ手を白蓮さんも引いたのだろうかと

感慨深く見つめてしまいました

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下は食堂です
暗くしか写せなくて残念なのですが

それはもう本当に素晴らしくて・・・


良く写っていませんが

窓ガラスに映る庭園の景色は美しい絵画、

これを見ながらのお食事はどんなものだったでしょう

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白蓮の要望で朝食はパン食、

伝右衛門もパン食に切り替えたそうです


しかし当時、パンは簡単には手に入らず、

外国船が入る門司港にベーカリーがあり

そこから取り寄せていたのだそうです



一階のひと部屋から見る庭園です

案内係りの女性の方がお話下さいましたが、

この手水鉢の水にはお月さまがちょうど映るようになっているそうです


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この部屋で、月見酒の宴をしていたのかもしれませんね・・・

と付け加えてお話下さいました


その時、伝右衛門が一代で財を築いた栄華に、

そして白蓮に対する複雑な想いを考えたら涙が込み上げてきました


その方に不審がられると思い余所を向いていましたが

不覚にもポロポロと零れてしまいました

こういう涙って意思で止めることができません


するとその方もホロッと・・・

思わず目を見合わせて笑ってしまいました


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こうした視界から白蓮も庭を見ていたのかと・・・

涙がまた出てきて、家の中を向くことができなくてしばらく眺めていました



洗面所です。右上は鏡。

この奥がお風呂場になっていました


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二階の白蓮の居室です

床の間には直筆の掛け軸が飾ってあります

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 ~朝化粧 五月となれば 京紅の 青き光も なつかしきかな~


掛け軸には、五月の光の中で朝化粧した時に

ハマグリの中の口紅に懐かしい京都を偲ぶ、という歌が書いてあります


これはすぐ傍に置いてあるものなのですが・・・


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素敵な装飾を施したハマグリの紅入れと筆です

しかしこれは白蓮さんの持ち物だったものなのか・・・

添え書きが見つからなくて不明なのですがどうなんでしょう


そのものなのか、それとも似せて創ったものなのかイメージしたものなのか・・・

わからないのですが可愛らしい素晴らしい展示品です


この二階の居室から庭を見下ろして・・・


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こういう視点で眺めていたのでしょうか

白蓮さんになったような気持ちになって胸が詰まる想いがします

どんな気持ちで見ていたんだろう・・・

どんなことを考えていたんだろう・・・ って・・・


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この窓のこの角度から見たこともあっただろうか・・・ 

そんなことを思いながら・・・ あの木もその頃、ここにあったのかなぁ・・・

なんて・・・ 


胸が詰まって涙が出そうで

それでもずっと見ていたいような静かな時間でした

幸いこの日は訪れる人も少なかったのです


外に出て庭に続く横道に入ると蔵があります

この時は晴れていたのか、光の方向が良かったのか・・・

青空に白い雲の背景です


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ここを過ぎると右方向に〝ミュージアム白蓮館〟という資料館があります

ここがまたいいんです、いろいろ、いろいろ・・・ 感動しました。


日用品や書簡、その他、それから・・・

白蓮さんが幼い頃から生涯愛して止まなかったという

〝みどり丸〟というお人形の着物も展示されていました


この資料館の左側には和風喫茶も設けられています


庭の方に向かうと左側に、白蓮さんの居室の

興し入れの時に増築されたという部分の館が見えます


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庭の向こうからお屋敷を見渡して・・・


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二階部分の窓、見つめていると

白蓮さんの姿が見えるような気さえします

あそこでお庭を眺めていらしたんですね

優れた歌もここでたくさん生れた・・・


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本当に行って良かったと思いました

係りの方がおっしゃっていましたが、ここが公開になってから

もうすでに50万人ほどの人たちが訪れているのだとか・・・


白蓮さんや伝右衛門さんの人生に想いを馳せながら

一度は訪れてみたい素晴らしい文化財だと思います

いつまでも残していていただきたいですね



このあと、一度以前に覗いたことのある

前の記事を書くきっかけになった〝白蓮想〟に寄ってみました

お店の一部を改造してある小さな資料館です

近くの駐車場から路地を進み、

この写真の突き当たりを右に曲がったすぐのところです


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突き当たりはアーケード街の壁ですが

竹久夢二の絵や、右に少し見える本人の写真があるのは

白蓮の最初の歌集〝踏絵〟をはじめ、初版本の装丁が夢二だからなのでしょう


生れた年も一つ違い、当時人気作家だった夢二に頼んだそうですが

全部素敵なんですよね、初版本。イメージがピッタリ。


夢二の絵のモデルとされる女性にはそれぞれにヨモヤマ話もありますが、

若き日の白蓮さん、ってあの女性のイメージそのもののようでもありますね



 幾億の生命(いのち)の末に生れたる二つの心そと並びけり


              「踏絵」より


   

   海恋し浪の遠音を枕してさめては寂しいくとせの夢


           新小説「短歌自叙伝」より



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      ※これは永畑道子著〝恋の華〟の巻頭部分にある
         写真を携帯で撮ったものです


波乱に満ちた生涯でも、龍介と出逢えて

そして最後まで仲良く添い遂げた人生は幸せだったと思います


瀬戸内寂聴さんが寄せて書かれている

朝日新聞に掲載されていた言葉の中にこんな部分があります


   近頃の不倫とは覚悟が違う

   命がけで貫けば不倫も純愛になるんです


何だか沁み入る言葉ですね(笑)


最後に、こういう白蓮を表した

最初の歌集〝踏絵〟に贈った佐々木信綱氏の

有名な序文の部分がありますので載せておきます


   白蓮は藤原氏の女(むすめ)なり。

   <王政ふたたびかへりて十八>の秋、

   ひむがしの都に生れ、

   今は遠く筑紫の果にあり。

   <緋房の籠の美しき鳥>に似たる

   宿世にとらはれつつ、

   <朝化粧五月となれば>、

   京紅の青き光をなつかしむ身の、

   思ひ余りては、

   <あやまちになりしからだ>の

   呼吸する日々のろはしく、

   わが魂をかへさむかたやいづこと、

   <星のまたたき寂しき夜>に神をもしのびつ~


   





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