つまりは思い出とか体験というのは一過性の消費に一見見えても、長い期間に渡ってその時の喜びや感情を想起して味わうことができるからだという主張。
音楽にも同じような事がある。
ある曲を聴くと思い出す景色や時間、その時感じていた感傷を蘇らせることが可能だ。
キャロルキングというレジェンドのシンガーソングライターがいる。
彼女は今年75になるが、60年代から活躍していて71年に珠玉の名作でうめるタペストリーというアルバムを発表する。当時15週連続ビルボード1位を獲得するほど支持されたアルバムだった。
私は高校時代、栄の丸善ビルの上にあったヤマハのエレキギター教室に通った事がある。その時の教則本に彼女の「I feel the earth move」という曲が収録されていた。今では何でもないが早いパッセージのソロがあって楽しかった。
毎週通って終わると丸善の隣にあった確か名古屋では一号店だったマクドナルドでビッグマックをほうばるのも楽しみの一つだった。
この曲を聴くと当時の情景を思い出す。あの頃好きだった高校のマドンナだとかほろ苦い体験も含めかなり青臭い自分も。
彼女のタペストリーというアルバムは私にはそういう存在。
そんな彼女が27年ぶりに昨年の夏ロンドンのハイドパークで野外ライブをしかもタペストリーを全曲再現した映像ディスクが発売されて思わずポチってしまった。
率直に言って加齢にはかなわず、声も少ししゃがれて伸びがないのは否定できない。
ヴォーカルは肉体労働だからその意味で一番気の毒。
しかし74歳でこれだけのライブができるんだから普通25曲、時間にして2時間前後も歌ってられること自体さすが。4年ほど前に見たポールマッカートニーも同い年だと思うけどモンスター級だった。
おそらくライブ中ほとんどの観客が彼女の歌に合わせて口ずさみ、また時間を40年遡っていたと思しき光景がそこにあった。
未だにこうした体験ができる音楽は魔法のような消費財だと思う。
