翻訳で食べているので、翻訳関係のエッセイにはつい目が行ってしまいます。


この本は村上春樹と柴田元幸の対談ですが、コトバ、特に文芸翻訳について考えるのにとても参考になります。村上春樹はもともと大好きな作家!というわけではなかったのですが、こちらの大学で、文芸翻訳の課題のためにスペイン語と英語に翻訳されている日本人作家を探したら、選択肢は村上春樹か吉本ばななか・・・ということが判明しました。そこで村上作品を泥縄式に読み始め、ものすごい才能だな、とに遅ればせながら感銘を受けることになったのです。米国文学の翻訳家としても、膨大な量の作品を世に出しているのだ、とそのとき初めて気がつきました(なかには以前読んでいた翻訳ものもあったのですが、同一人物だとは気がつかなかった・・・)。一体どれだけエネルギーのある人なんでしょうか。


柴田元幸はポール・オースターの訳で有名ですよね。私は柴田訳は読んだことはありませんが、オースターは大好きな作家ので、翻訳者の名前だけは聞いたことがありました。


この本ではそれぞれが(特に村上氏が)、文芸書を翻訳する上で気がついたこと、気をつけていることについてかなり自由な感じで対談していて、文芸作品の「翻訳」とは何か、そして作家でもある人間が他人の作品を翻訳するとはどういうことなのか、と考えさせられます。その後村上訳のサリンジャーやアーヴィングなど何冊か読みましたが、さすがにリズムがあって読みやすい訳だと思いました。村上氏の「作品」、テキストに対する考え方も非常に興味深いものがあります。


少し抜粋してみますね。


村上:僕が小説を書いている時点では、書いているものは完全に僕という人間に所属しています。しかし書き終わった時点で、その小説は独立したものになると考えているのです。つまり、僕の書いたものは独立したテキストとして世の中に出るんであって、そのテキストにアクセスする資格は万人平等であると(・・・)そういう意味では、僕が自作の英語の翻訳を読む場合、より公平に突き放して読めるし、それはなかなか心地よいことだということになるのかもしれない。


村上:(・・・)翻訳で自己表現しようというふうに思ってやっている人がいれば、それは僕は間違いだと思う。結果的に自己表現になるかもしれないけれど(・・・)自己表現をやりたいなら小説を書けばいいと思う。


この本では、柴田氏と村上氏が同じ短編(カーヴァーとオースターのものを一編ずつ)をそれぞれ訳した原稿が原文とともに収録されていて、一つの原文からそれぞれの訳者の解釈を経て作り出される翻訳の違いを比べ、楽しむことができます。翻訳やコトバに興味があるなら、是非お勧めの本です。



グラナダに戻ってまいりました・・・寒い!バレンシアよりもセビリアよりもずっと冷えこんでいます。シエラネバダ山脈はもうすっかり雪に覆われており、吐く息も真白。今夜は大学の友人の誕生日で、バルでみんなで祝ってきました。こちらはお誕生日の人がみんなに飲み物をおごらなければいけない習慣があり、結構な散財です。でも「祝ってくれてありがとうね」という気持ちなのかな、とも思いますが。


それはそうと、あと少しだけバレンシアのことを書きますね。こちらでバレンシアというと、大体みんな「水族館が有名だよね」といいます。10年ほど前に、街の中心から歩いて25分くらいの地域に芸術と科学の総合博物館(というか複合施設)La ciudad del arte y de la ciencia が設立されましたが、確かにこれは名所で、すごい人でした。科学博物館、水族館、映画の博物館の三つがあり、好きな組み合わせでチケットが買えます。なかでも水族館はヨーロッパ有数の規模だそうで、確かにすごかった。地中海、太平洋、南極、という風に地域ごとに10以上の施設にわかれており、4時間近くかけて見物してきました。


この複合施設はまず建築が素晴らしい。いくつもの建物にわかれていますが、なかでも映画の博物館の建物が流線型でとても綺麗だと思いました。こんな感じです。


museo1


夕方になるとライトが灯り、これもとても綺麗です。すぐそばに科学博物館があり、その建物もダイナミックで見ごたえのあるものです。見ているとなんとなく、音楽の聴こえてきそうな感じのする建物でした。


そして、水族館。とにかく大規模で、例えば水中トンネルだと70メートル規模のものが二つあります。上にも書きましたが、地域ごとに施設がわかれていて、それぞれの魚の分布がわかるようになっています。「アジア太平洋」館には、「日本・伊豆」という水槽があって、タカアシガニ(かな?ものすごく足の長い、大きなカニでした)がうろうろしていました。


基本的に大きな水槽で、魚が元気よく泳いでいるのがいいなあ、と思いました。例えば水中トンネルだと、こんな感じです。

museo4


ものすごい勢いで泳いでいる。なんだか丸々太っておいしそうだ・・・とつい考えてしまいました。魚を見るのは大好きなので、ついじーっと見てしまうのですが、水中トンネルなどで、ガラスの存在をふと忘れてしまう瞬間があり、とても妙な感じがしました。前を歩いている人の上を、エイなどの魚やサメ(小型でしたが)が本当に飛んでいくように見えるのです。手を伸ばせば触れられそうな、不思議な感覚でした。


museo3


ヒトデもたくさんいましたが、これはガラスにべたっと貼り付いて、まるで人間のようなところが気に入りました。なんだか手足を思いっきり伸ばして気持ちがよさそうです。


museo2


そしてアザラシ・・・可愛かった・・・まん丸な体で、すうっとこちらに泳いできては一回転して去っていくのです。


でもさすがに、アザラシやイルカ、トドやクジラ(もいました)のような大きな動物を閉じ込めておくのは残酷だな、とちょっと複雑ではありました。湿地帯を再現した施設もあって、高さ25メートルだかの巨大な鳥かごの(のように網で囲ってあるのです)なかに、魚のほかに鳥やカメを飼っているのですが、もともと飛んでいくようにつくられている生き物を、どうやっても出られない空間に閉じ込めておくのは残酷なことではないかと思いました。もちろん食べる心配はしなくていいし、天敵に殺されることもないわけですけれども。


そんな感じで水族館で何時間も過ごしてしまい、科学博物館を見る時間がほとんどなかった・・・でもこちらも参加型の展示が多くて、とても面白そうでした。一日楽しく過ごすのに、この博物館は是非お勧めです。

バレンシアのカテドラルは有名ですが、細部は綺麗なんだけどなんだか妙な建物だなあ、というのが受けた印象でした。いろいろな様式がやたらと混ざっていて、あまり落ち着いて見られる感じではないのです。それでも全体的にはやっぱり綺麗だな、と思わせるところが不思議ですが。これは14世紀末、ゴシック様式の時代に建築をはじめてから、出来上がるまで数百年もかかってしまったことが理由らしいのですが、それにしてもどうですかね。まず、全景はこんな感じです。

Plaza4


これは大聖堂前の広場ですが、右側の建物が大聖堂です。ゴシックの入り口と、なんというか円柱形の部分、そしてその後ろに白く浮かび上がっているこれもゴシックの塔なのですが、なんだかまとまりを欠いていて、一つの建物だ、と一見してわからない感じです。

catedral9


このカテドラルには入り口が三つあって、それぞれ違う時代の建築様式のものとなっています。これは上の写真にもあるゴシック様式の入り口です。中世の彫刻は、なんだかしゃちこばっていて堅苦しい、と以前は思っていましたが、よく見るととても面白いのです。この門にも、様々な職人仕事をしている人やヘンな動物がたくさん彫ってありましたが、なかでもちょっと可愛いと思ったのがこれ。女性(聖人なんでしょうか)の足元にこんな風になついているライオン(かな?)がいました。なんだか幸せそう。

catedral12


教会の内部は基本的にはゴシックですが、礼拝堂はごちゃごちゃしたバロック様式だったりします。ゴシックのあの先のとがったすうっと上に伸びる感じは、教会のなかに足を踏み入れた人が天国に昇るような感じがするように、という効果を狙ったものだということです。これは上の写真にも写っている白い塔ですが、中からとったものです。祭壇のある部分ですが、ここだけ白くてとても繊細な感じがしました。


catedral4


今度は正面ではなく、横だか後ろの部分から外に出ると、簡潔優美なゴシックから一転して、なんだか派手なファサードでびっくりします。これは最も新しい、17世紀終りごろにつくられたバロック様式の入り口です。なんだか全然上と感じが違うのですが、その時代時代に合わせてどんどん付け足していってしまったらしいのです。

catedral1


このほかに、教会の後ろなのか、目立たないところに小さなロマネスク風の入り口があって(時代からするとこれが一番古いんでしょうか)、丸いアーチが何重にも重なって、こちらにもびっしり彫像が並んでいます。なんというか全然統一性のない大聖堂で、これはこれで結構インパクトがありました。それでも全体としてなんだか美しいのがとても不思議なのですが。

バレンシアの話を書いているところですが、ちょっと面白そうなタイトルでしたのでこちらを先に。

確かに海外に出ると、「これが日本人か」という目で見られてしまうので、心ならずも日本代表のように「日本では云々」とないウンチクをたれなければならないハメになることが多いです。個人的にはこれはとても困るのですが。


そもそも「日本とスペインの社会ってどこが違うの?」というような絶対に答えられない質問をするほうが悪い。そんなに簡単にすらすら答えが出てくるわけないじゃないですか。でもテキはじーっと答えを待っているので、つい陳腐かつ偏見にみちた簡単な答えに逃げてしまうことになるのです。いわく「日本は上下関係が厳しい」「男女差別がある」「礼儀に厳しい」云々・・・。


でも歴史や現在の社会がどうの、ということをがっちり勉強していく必要はなくても、自分の中で「私の知っている日本はこういうものだな」ということは整理しておくと便利かな、とは思います。それは大体外に出てみて、いろいろ観察しながら他国と日本を比べて初めてわかることでもあるのですが。例えば国民的な宗教がない社会であり、それが一面では偏見のなさにつながっていて、他方では・・なんというか、善悪の価値観の違いにつながっているような気がする、とか。神様の代わりに、「人に迷惑をかけない」ということが善悪の基準だ、というのは、かなり日本社会に特有の性質のような気がするのですが、こういうことは「神様のいる社会」を見ていてはじめて、気がついたりします。


あとはやっぱり言葉ですよね。留学後にイチから、というのは不可能ではありませんが、ものすごく時間がかかると思います。会話の練習は留学してからいくらでもできると思うし、日本では難しいですが、文法はできるところまで進めておいたほうがいいような気がします。私は文法が苦手で結構軽視してしまうのですが、細かい変化などの形そのものよりも、文法の枠組みというかロジックを理解できると言葉の習得が早いような気がします。ただこれも、例えばスペイン語文法を日本語で書いてある教科書で学ぶと、接続法だのなんだのの用語がうるさいし、そんなものはこちらに来てしまうと日本語で知っていてもなんにもならないので、スペイン語で書いてある外国人用の教科書を最初から使って勉強するほうがお勧めです。あとはボキャブラリーが多ければ多いほど、あとが楽です。


などと偉そうに書いてしまいましたが、これは全部「ああこうしておけばよかった・・・」という理想であって、実感としては今でもやっぱり「日本はねえ・・」と陳腐で偏見にみちた答えに逃げてしまうことも多いです。このごろは「そう簡単には答えられないよ」と、正直に答えることもありますが、これだと何も日本の情報を与えないままで終わってしまうので、どちらがいいのか悩むところです。やっぱり簡単に答えられないようなことを聞くほうが悪い・・・。

戻ってまいりました。今セビリアです。

バレンシアはグラナダよりよっぽど暖かかった・・・夜でもコートなしで歩けました。二泊したのですが、飛行機の時間のせいで実質街での時間は一日半、それでもしっかり楽しんでまいりました。飛行機は、バルセロナの会社Vuelingだったのですが、時々ものすごい格安の航空券を売っていて、今回の旅行もセビリア-バレンシア間片道10ユーロ、税込み往復で45ユーロという安さ。それでも時間にも正確だし、素晴らしい・・・。


バレンシアでまず気がつくのは、アクセントがアンダルシアと異なることです。言葉の最後を強調してひっぱる感じなので、リズムがかなり違い最初は戸惑いました。でもよく考えるとここでは、いわゆる「スペイン語」であるカステジャーノ語のほかに、カタルニア語に近いバレンシア語が話されているのです。実際お店の看板や道の名前はバレンシア語で書かれています。Xがよく使われていて(英語のshの発音のようです)、チョコレートはXocolates、これでショコラテと読むようです。


驚いたのは、街の中心部から南へ歩いて15分くらいのエリアで(Cuba通り、Sueca通りなど)、ものすごい数の中国系のお店が並んでいたことです。ロンドンや横浜のようにいわゆる「中華街」ではなく、大体が中国から輸入した洋服や靴をスペイン人向けに超低価格で売っているお店なのですが、数が半端じゃない。このようなお店が、何十件となく並んでいるのです。

chinese2


このほかに中華料理店、スペイン人向けの普通のバル(でもバルの名前が中国風。こんなのはじめて見ました)、中華食品店(早速トムヤムクンの素、海老ソースなどを購入)等々・・・中には中国系の名前の、普通のスポーツクラブまでありました。このエリアには他にラテンアメリカ系のお店(レストラン、バルがほとんどでしたが)もたくさんあり、移民の数は本当に多いようです。さすがマドリッド、バルセロナにつぐ大都会。実際、インターネットカフェ(南米系の人のお店でしたが)では、安い国際電話や海外送金のサービスもやっていて、南米の人が「Mi amor, mi amor...」と家族か恋人らしき人に「これからお金を送るから!」と切羽詰った声で電話していたりしました。


街はといえば、「ああ北だなあ」というのが第一印象です。普段セビリアやグラナダの、ムスリム様式のまざった建物を見慣れている目には、バレンシアは非常にヨーロッパらしい街に見えました。ここも四百年もの間ムスリム支配下にあったのですが、街を歩いていてあまりそれは感じませんでした。

Ayuntamiento1


これは市庁舎です。街中クリスマスの飾りで一杯でした。


料理ではパエージャが有名ですが、これはお昼の食事だそうで残念!!!ながら今回は食べる機会がありませんでした(日中は見物しまわっていたもので)。食べ物は基本的にはとてもおいしくて、野菜のグリル(アーティチョーク

が最高!)やムール貝の料理が有名です。

Mejillones


これはパプリカと、少しチリの入ったピリ辛のスープで煮込んであって、ものすごくおいしかった・・・バルのカウンターで食べて、殻はカウンターの下においてあるバケツに食べながらぽいぽい捨てていきます。

あとはオレンジが有名ですよね。絞りたてのジュースはさすがにおいしかったです。甘い!このほか、Agua de Valencia バレンシアの水、というカクテルがあって、シャンパン、オレンジ果汁、そしてウォッカを混ぜたものです。バレンシアの人はどうもカクテルがとても好きなようで、バルのメニューには(ここではCombinadoというようですが) 様々なカクテルが名前を連ねていました。


本当に時間がなくて、たくさんは見られませんでしたが、街の圧巻といえば新しい科学博物館(博物館、映像美術館、水族館の巨大複合施設で建築物が素晴らしい。私は魚が好きなので、水族館に何時間も張り付いていました)と、カテドラルでしょうか。順次ご報告いたしますね。


<おまけ>

Galiver1

科学博物館に行く途中の公園にて。ガリバーですよ、ガリバー!髪の毛や洋服のひだなどが全部滑り台になっていて、そのほかトンネルや階段がいろいろついている巨大ガリバー。ここで遊んでいると自然とリリパット人になる仕掛けです。あんまり感動して、私も上ってみました(小さな子を連れたお父さんやお母さんがいたので、恥ずかしくなかった・・・かな)。硬くないのでちょっとぶつかってもいたくないし、色がいろいろあって楽しい。子供が羨ましくなります。



昨日は今年初めてのクリスマスパーティでした。連れの会社のパーティだったのですが、今年は「イギリス風」とのことで、なぜかセビリアなのに恐ろしげな甘い甘いミンスパイや、ゆですぎの芽キャベツ、ぬるいビールなど、懐かしい(?)英国料理を堪能することができました。


本日から二泊三日でバレンシアに行ってまいります。Vuelingというバルセロナの航空会社のオファーで、往復50ユーロという嘘のようなフライトチケットがあったので、見聞を広めてくることにしました!行ったことのない街なので楽しみです。


何か面白いことがあったら、戻ってご報告いたしますね。バレンシアというとパエージャしか知らないのですが・・・。


では行ってまいります。

今日は久しぶりに本の話でも書きたいな、と思ったのですが、午前中まるまる一杯書類手続きでつぶしてしまい、久しぶりにパペレオ(書類だらけの面倒くさい手続き)全開でしたので、そちらをご報告いたします。スペインにちょっと留学しようかな、というときに一番のネックともいえる、恐怖のパペレオ。


学生としての滞在更新の煩雑さは以前 書きましたが、その後新しい許可証はまだできてきません。以前の許可証は1031日で切れていて、そのこと自体は別に問題ではないのですが、この間に国外に出る、となるとちょっと面倒くさいことになります。国の外に出ることはできても、また入国できるかがわからないからです。通常は「滞在許可の更新中です」といって、申請書類を見せれば大丈夫なのですが、テロリストや不法移民関係で入国審査が厳しくなっていることも予想され、ちょっとリスクは冒したくない感じです。


そこでクリスマスからお正月にかけて英国旅行を予定している私は、必要と思われる書類を携え、今朝警察に行ってまいりました。着いたのが11時半、出てきたのはなんと2時です。


滞在許可証が切れている状態で海外に旅行する場合、「帰国許可」 Autorizacion de regreso を取得しなければなりません。そこで「必要かも」と思われる書類-パスポートおよびコピー、顔写真、エアチケットおよびコピー、現在申請中の滞在許可更新申請書およびコピー、期限切れになった滞在許可証およびコピー、を一式揃えて警察に行くと、相も変わらず長蛇の列。しかも動きがものすごく遅い・・・と思ったら、窓口の署員が実に頻繁に席をはずしているのです。タバコだかトイレだか、なんだかしらないけど、カラッポの窓口の前に並んでいるこちらは・・・虚しいものがあります。


並ぶこと1時間、ようやく窓口にたどり着いて事情を説明すると、テキは「まあ、そんなに前に申請したのにまだ更新できてないってヘンね。ちょっと待ってね」と何か調べに行ってしまい、帰ってくると「まだ連絡が行っていないようだけど、滞在許可更新の準備はできているから、これから銀行に行って更新許可手続きの料金を払って、もう一度戻ってきて、今度はとなりの窓口で並んで、滞在更新許可のための指紋を取ってください。そのときくれる書類を持って、もう一度、旅行のための『帰国許可』の申請をしてください。2時までに間に合うかしら・・・明日はこられないの?」とのたまいました。このわかりにくさ。ちょっと補足しますと、10月に行った滞在許可の更新申請は、その後①警察から手紙がくる、②その手紙を持って警察に赴き、指紋をとる、③3週間後に再度警察に赴き、指紋つきの滞在許可カードを受け取る、という段取りになっています。私の場合はその①の手紙もまだ来ていないため、カードなしで旅行に出られる『帰国許可』を申請しに行ったのですが、実は警察のほうでは②の準備が既にできており、しかも②が済んでからでないと『帰国許可』の申請はできない、というのです。最後の「2時云々・・・」というのは、このセクションが2時までしか開いておらず、2時になると待っている人がいようがいまいが窓口をしめる、ということから来ています。


そのとき既に12時半。大急ぎで銀行に行ってお金を払い込み、警察に引き返し、今度はさっきの隣の窓口に並ぶことまた1時間・・・全て申請が終わったのは2時ちょっと前でした。しかも終わったのは「申請」だけ、これをまた数週間後に受け取りにこないといけないのです。げに恐るべしパペレオ。


ぼーっと並んでいる間に思い出したのが、ロンドン時代のパキスタン人の友人たちのことです。とりあえず大概のところに問題なしで入れる日本のパスポートと違い、彼らはちょっと国外の友人を訪ねるにもビザをとる必要があり、いろいろな書類を準備しなければなりませんでした。国外の友人からの招待状や往復チケットのコピーなどです。それにどこの空港でも、他の人たちに比べて入国審査にものすごく時間がかかります。個人個人とは何の関係もない、ただ生まれついた国籍が理由で、不公平な取り扱いを受けているわけです。これは10年前のことですから、今の状況下ではもっとひどくなっていると思います。スペインで、「外国人」と十把一絡げに理不尽な扱いを受けてみて、彼らの気持ちが今更ながら少しわかった気がしました。どこの国に行くにもフリーパス、というような恵まれたパスポートを持っているとなかなか気がつくことができない、「許可を出す側の傲慢さ」ってありますよね。実際、英国人の連れにこれをぐちってみても、EU市民であり「外国人」ではない彼は、「ふーん、大変だったね。でも終わってよかったじゃない」とこの屈辱感をまったくお分かりでないご様子。そんなもんです。



まあそんなことで、12月のパペレオ。いつになったらパペレオから解放されるのか、と思いますが、モロッコ人の級友は「僕なんか移住して20年、パペレオばっかりやってきたし今でもそうだ」と言うので、いつかはこれがすべて終わる、というのは望み薄かもしれません。やれやれ。

我が家のすぐ近くのアラブ人街についてもう少し。せっかく来たら、お土産 を買うだけではなく、おいしいものを食べるのもいいですよね。狭いこのエリアですが、食べ物を売っているお店もたくさんあります。割ときちんとしたレストランだと、レバノン料理のレストランや、モロッコ料理のお店がいくつかあります。レバノン料理にはずっと以前行きましたが、とても美味しかった・・・ヒヨコ豆のペースト(「ハマス」でしたっけ)が大好きなのです。ここのレストランは、お店の前にこんなおじいさんの看板があるので、すぐわかります。あまり絵が上手くないところが、なんともいえないですが。湯気がヘン・・・。


calleteteria4


きちっとしたレストランでなくても、ちょっとお腹がすいたら、昼食でも夕食でもカバブ!です。カバブ屋さんはグラナダ中に点在していますが、中でもこのエリアとすぐ近くのエルビラ通りには、山のようにあります。基本的には、どこでも美味しい(と私には思える)し、定価があるのか全部値段は一緒です。チキンシャワルマ(ピタパンがぱんぱんに膨れ上がるほど、生野菜とチキンが入っています)、もしくは羊肉のシャワルマで大体3ユーロが相場です。安い・・・見かけよりも、ものすごくお腹が一杯になります。ベジタリアン向けには、ファラフェル(ヒヨコ豆をつぶして揚げたお団子。これもおいしい)のピタサンドがあります。


calleteteria5B


これは数多いお店の一つですが、「カバブ・キング」と店名が書いてあるわきに、小さく「ハラール(halal)」と書いてあるのが見えるでしょうか。ハラールとはムスリムで決められた屠殺の方法で、鋭く研いだナイフで首を切り、苦しませずに殺すのだそうです。ユダヤ教でも同じような取り決めがあるらしく、ムスリムはユダヤ教の手法で殺された肉も食べていいのだそうですが、「ハラール」と書かれていない(つまり、決められた手法で殺されていない)肉は食べてはいけない・・・ということのようです。それでこのエリアのカバブ屋さん、および肉屋さん(モロッコの食品全般を大量に売っています)には、必ず「ハラール」と看板に明記してあります。もっともモロッコ人の級友によれば、「本当にそうしているかどうかは、わかったもんじゃないよ」ということのようですが。


食事以外にもお茶ならテテリア がありますし、お菓子屋さんもあります。当然売っているのはアラブのお菓子で、アーモンドをたっぷり使った、ものすごく甘いものが多いです。ちょっとつまむ、という感じなんでしょうね。


他には、食料品店がかなり充実しています。まあ私はモロッコ料理はできないので、クスクスやなんだか不思議な茄子のオイル漬けの瓶詰め(皮をむいた丸い茄子がいくつか入っています。美味しそうなんですが、ペーストにするんでしょうか)やヒヨコ豆のスープのもと、などはあまり関係ないのですが、香料関係をここらへんでよく買います。コリアンダーや粉ショウガなどですが、特にコリアンダーは粉だけではなく、新鮮なものが売っているのが素晴らしい。抱えきれないほどの束なので(ある日とない日がありますが)、買ったときは小分けにして冷凍したりしています。


狭いながら、いろいろに楽しめるエリアです。これがグラナダ名所、というとちょっとヘンな気もしますが。



テレビのスペイン語が少しずつ耳に入るようになってきたころ、「やたらと多い気がする」と思ったことが二つあります。一つは交通事故での死亡者数(連休の前後には、高速道路での事故が増加して、必ず何人も死んでしまうのです)、そしてもう一つは家庭内(もしくは元パートナーの)暴力による女性の死です。


後者は、毎週一人くらいの割合で殺されているのではないか、というくらいよくニュースに出ていたのを覚えています。それも犯人は19歳くらいの若者(が恋人をバルコニーから突き落とした、とか)から、元妻に付きまとって殺してしまった50すぎまで様々な年齢の男性です。


11月25日は、「女性に対する暴力に反対する国際デー(直訳しているので、日本語の定訳は違うものだと思いますが)」だったので、この件に関してエルパイス紙が特集を組んでいました。


同紙によれば、スペインで去年一年間にパートナー、元パートナーに殺された女性は72人。やはり毎週一人か二人が殺されていることになります。日本などは、家庭内暴力が表に出てきにくい文化だ、と言いますが、それでも人が殺されれば報道はされますよね。日本では毎週のようにそんなニュースを聞いた、という記憶はありません。


殺人までいかなくとも、警察への訴えを見ると、これもすごい数字です。同紙によれば2004年には5万7,527件。その20%ほどがアンダルシアで起こっています。


これをどう考えていいのか、私にはわかりません。Cultura machista (男尊女卑の文化)がまだまだ残っているからだ、ということをよく耳にしますが、外国人の目からみると、スペインの「人と人の距離がとても近い文化」というのが、裏目に出ている部分もあるのではないか、という気がします。ハタから見ていても、日本のちょっと人と距離を置いた文化(一見・・・本当はどうかわかりませんが)や、英国の個人主義とはかけ離れている、一人でいることの嫌いな「人懐こい文化」なのだな、ということはわかります。それはとても暖かい半面、油断すると独占欲や嫉妬、人を「所有する」というような感覚につながってしまうのかな、という気もしないではありません。


あとはやはり、上で言われる「マチスタ文化」がまだ残っている、ということなのでしょうか。実際に(アンダルシアは特にそうなのかもしれませんが)、「女性はこうあれ」(見かけのことであれ、そのほかのことであれ)というプレッシャーがかなり感じられる、保守的な面があります。


今ではちょっと信じられないことですが、たった30年まで続いていた独裁政権下では、既婚女性が夫と別に自分の銀行口座を持つこともできなかったのです。女性は家の中で家族につくせ、とぎゅうぎゅうに締め付けられていたので、家をヤケになってピカピカに磨き上げて鬱憤をはらしたのだそうです。もちろん冗談でしょうけれど。


スペインの人、というと「明るい!」というイメージがありますが(イタリア人ほどじゃないか)、そんな単純なものじゃないな、と思わされることがよくあります。スペインの女性(必ずしもスペイン人とは限りませんが。スペイン在住の外国人も含まれています)に関するこの数字も、考えさせられることのうちの一つです。

もう少しマドリッドのことを書きますね。

日曜の朝(厳密に言うと2時だったので、もう朝ではないのですが)は、ラティーナ地区の朝市に行ってまいりました。市は大好きなので、とても楽しかったのですが、連れて行ってくれたマドリッド出身の友人によれば、ここには何でも、それこそ盗品でも何でも売っているそうです。昔は家に泥棒が入ったら、少し時間がたってからここに盗まれたものを探しに来たそうで・・・それを買い戻したり、なんていうことが本当にあったんですって。それもなんだか口惜しいですね。


とにかく広い市でした!メトロ五番線(何本もメトロがあるなんてすごい、と相変わらず感動してしまうのですが)のラティーナ駅で降りて、三つある出口のうちの一つからでると、いきなりこんなに楽しげな建物がいくつか建っています。

Latina2


壁がキャンパス!これは落書きどころではないですね。楽しげな果物や、なんだかいろいろなものがのびのびと思いっきり描いてあります。ここら辺には、なんだかものすごく美味しそうなバルがたくさんありますが(バスク地方のタパを出すバルとか。危険です・・・)、ここは一つ我慢して、市を見て歩きました。


とにかくすごい人で、びっくりしました。友人によれば、これでももう時間が遅いからすいているとのこと。地帯によって売っているものが違って、かなり素敵な洋服やアクセサリー、小物から始まって、坂を下りていくとだんだんものすごく安物だ!というような薄い靴下(6枚3ユーロで売っていました。日本の安売りどことではないかも。でも履いているうちに、溶けちゃうんじゃないの?というくらい薄かった)や、安っぽいTシャツ、ヘンな置物(金無垢のものすごく大きなプードルがありました)や鍋、フライパン、電球、と本当にありとあらゆるものが売っています。


Latina7


これは洋服のセクション。まだそれほどヘンじゃないエリアです。色がとても綺麗だったので、つい撮ってしまいました。値段はお店で買うのとそう変わらないそうですが、試着ができないのがネックですねえ。このほか、インドのショールだとか、サリーの生地で作ったスカートなどがあって、とても綺麗でした。


生活用品のほかに、名産品も時々売っていました。このストールは、焼き物を売っているのですが、品が良くて安くて有名なのだそうです。でもお皿を一枚買うのもなあ、と思って買いませんでしたが。写真に写っている、小さなツボの後ろにごちゃごちゃあるひらったいものは、少しだけ聖水を入れて壁にかけておくんですって。絵で飾られていてとても可愛いのですが、信心深い人は、自分の家にこれをかけておいて、出かける前に聖水で額に十字を描くのだそうです。聖水はどこで手に入れるの、と聞いたら、瓶に詰めて売っているのだとのことでした。確かにこれは名物かも、とは思いましたが、ちょっと無宗教の身で「可愛い!」と買っていいものかどうか、ためらわれますよね。


Latina9


・・・とそんな感じで市を歩き、最後は行き着いたバルで友人とその彼氏、知り合いの女性の4人で遅い昼食をとりました。5時のバスにぎりぎりでしたから、本当に遅い昼食だったということですよね・・・そのときに飲んだワインが効いて、バスの中では熟睡してきましたが。


そんなわけでとても楽しかったマドリッドについて、あと一つだけ。素敵な古本屋さんを見つけました。オーナーは50代くらいの、眼鏡をかけた線の細いイギリス人の女性で(なんだか昔の小説に出てきそうな感じです)、広い広い店内では、お茶やコーヒーを飲むこともできます(というか、コーヒーマシンやティーバッグ、マグなどが置いてあって、「勝手にやってくれ」という感じになっています)。ぼろぼろの肘掛イスなどが随所に適当に配置してあり、部屋数のかなり多い店内は本の山。神保町の古本屋街も好きですが、古本屋のなんというか古臭く、それでいて落ち着く雰囲気っていいですよね?しかもここは「インターナショナル本屋」を謳っていて、スペイン語英語などのヨーロッパ言語の本はもちろん、アラビア語中国語韓国語の本まであり、ほんの少しですが日本語の本まで置いてありました。あんまりピンとくるセレクションではありませんでしたが、つい一冊買ってしまいましたよ・・・西原理恵子と神足裕司の「恨ミシュラン(下)」・・・だってあった中では、一番面白そうだったので・・・今読んでいます。

お店の名前は、Petra's、店の中にはものすごく太った同名の猫(真っ黒でつま先だけ白い、足袋猫)が、あまりフレンドリーではない感じで徘徊しています。C/Campomanes,13 ,28013, Madrid、最寄り駅はOPERA(などと、詳細を自分が忘れないように書いています・・・日記のようでスミマセン)です。なかなかいい感じのお店なので、マドリッドでちょっとゆっくりしたくなったら、一息つくのにいいかもしれません。