戦略展開、研究開発、発展途上国、人材(資源)育成、ネットワーク構築、発達心理学、計画策定、もうちょっとソフトにある感情が育つこと、写真の現像・・・勘のいい方、同業者の方はもうお気付きでしょうか・・・これ全部、英語だと同じ言葉を使います。展開、開発、発展、育成、構築、発達、策定、育つこと、現像・・・はすべてDevelop。スペイン語だとdesarrollarですが(上記のすべてこdesarrollarで大丈夫です)、どっちにしろ、私の一番苦手な言葉のひとつです。
翻訳を仕事にしてみて、初めて気がつくことは実にたくさんありましたが、この「落とし穴は普段気にしないで使っている言葉にある」というのもその一つです。develop! 英語を勉強して最初に習う言葉の一つですが、しかし・・・私の乏しい経験から言わせてもらえば、これは一番翻訳にてこずる言葉のひとつでもあるのです。
翻訳の仕事は残念ながら文学ではなく経済関係のものがほとんどなので、この言葉は実に頻繁に顔をだします(言葉に顔はないかもしれませんが)。基本的には、この言葉の意味は大きく二つにわけられるのです - 1)既にある小さな「何か」を大きく育てること、もしくは2)新しく「何か」を発見し育てること。翻訳する原稿を読んでいて、developという言葉に行き当たったときに私の頭に浮かぶのは、大体この二つのぼんやりした観念であり、それで充分意味は通じます。しかしこれを日本語に直すとなると・・・辞書を引けば優に二十を超える訳語が出てきますが、それで驚いてはいけない。そんなのでは全然足りないのです。それでアタマを抱えてインターネットで「この言葉は何!」と探すことになります。今日出てきたのは、developing needs・・・だんだん必要になってきていることですね、とはわかるのですが、じゃあこれをどんな日本語にするのか。展開、開発、発展、育成、構築・・・どれもだめです。助けてくれ、と言いたい。
これは日本語と英語(まあスペイン語もそうですが)の単語の意味する範囲が大きく食い違っているせいだと思うのですが、どの単語にもこの食い違いはあるにしても、特に顕著な例にdevelopが挙げられるのではないでしょうか。日本語の豊かさのひとつに、「対の規則」(と勝手に名付ける)があるかと思うのですが・・・つまり、ネットワークや枠組みは「構築」するのであって「育成」ではない、とか、戦略は「展開」、まあ「構築」でもなんとか、でも「策定」だとちょっとヘンで「育成」だと全然ダメ、とか、写真はどうしても「現像」だ・・・ということですが、単語一つ一つの与えるイメージが微妙に違うことろが、言葉の豊かさと難しさを作り出しているのは確かでしょう。結局全部「何か」を作り上げるんだから、developみたいに一言で片付けてよ!と叫びだしたくなることも再々ですが。
同じような意味で、developのほかにすぐ思いつく例は、academicです。academic leader, academic profile, academic institute・・・「学術」で済ませられればどんなにいいか・・・でも、学術機関はあっても学術主導者はいない(これはカタカナでアカデミックリーダーというのが一番無難なようです)。もとが違う言葉なのだから仕方がない、とはいっても、なんと因果な商売か、と思ってしまうのはこんなときです。見たこともないような難しい言葉ではなく、日常的な言葉こそ謎に満ちている・・・これはすなわち、二つの言語圏の考え方が全く異なっている、ということを表しているのでしょうが、これをなんとかこじつけ、結びつけるのが通訳翻訳業・・・なんですかね、やっぱり。





















