開戦を止めた日本に、
祝いの言葉はなかった。

軍令を裏切り、
嘘の電信を打った佐藤を待っていたのは、
暗い独房と、罵声が飛び交う軍法会議だった。

「貴様一人のせいで、帝国は恥をかかされたのだぞ!
 万死に値する!」 法廷に響く怒号。

佐藤はただ、床の木目を見つめていた。
死ぬ覚悟はできていた。
むしろ、死んで楽になりたいとさえ願っていた。

しかし、
裁判の最後に現れた
総理・西條英紀は、
佐藤の望んだ「死」を、
無造作に取り上げた。

「この男は、極限の緊張で頭が狂っただけだ。」
「死刑にする価値もない。
軍籍を剥奪し、社会の底辺へ放り出せ。」
「その無様な姿を世間に晒させるのだ」

それは、
西條が軍部の暴走を抑え、
佐藤を無理やり生かすために打った、
冷徹な「政治の嘘」だった。

第三章につづきます。

前  作 ▶️ 第一章:1941年、
佐藤正志は戦争を止めた