大気中の熱エネルギーを吸収し、
酸素へと変換する「逆転の蒸留」だ。

ゴォォォォ・・・という低い音とともに、
横須賀中央駅前の広場に変化が起きた。

42℃を指していたデジタル温度計が、
信じられない速さで動き始めたのだ。
42℃・・・38℃・・・30℃・・・そして、25℃。

「・・・涼しい。ねえ、風が吹いてきたよ!」
ミライが叫んだ。

熱が吸い取られたことで生じた、
自然な空気の対流。

人々が一人、また一人と窓を開け、
信じられないものを見る目で空を仰いだ。

真夏の夜の「ダイヤモンド・ダスト」

フィルターが急速に熱を奪ったため、
大気中の水分が凍りつき、
キラキラと輝く結晶となって降り注いだ。

「見て! 雪だ! 真夏に雪が降ってる!」

街中の人々が、スマホを空に向けて歓喜の声を上げる。
 

柳のSNSアカウントには、
瞬く間に世界中から「これは魔法か?」

「おじいちゃん、見てる? 1941年のあの日、
あなたが打てなかった電信・・・今、世界中に届いてるよ」

ミライは、降り注ぐ雪の結晶を掌で受け止めながら、
155年前の孤独な設計士に語りかけた。

しかし、
この「奇跡」を喜ばない者たちもいた。

冷房利権やエネルギー市場を

独占する巨大企業、
そして・・・おじいちゃんたちがかつて戦った
「完璧な管理」を信奉する勢力の残党。

「面白い。佐藤正志の孫が、

ついに動き出したか」
 

モニター越しに横須賀の雪を眺める、

謎の影が呟いた。