「今日から友達じゃないから!」

―それは、1960年の冬の朝。 気温よりも冷たい言葉が、ランドセルを急に重たくした。

私はその場で固まった。口はぽかんと開いたまま。 

給食の牛乳を飲んでいた時なら、口から滝のようにこぼれて、上履きの周りが白く染まっていただろう。

 アニメなら、頭の上に「?」が乱舞しているやつ。                                 

 

「え、え、え、絶交って…昨日、一緒に縄跳びしたじゃん…?」 頭の中で何度も再生した。

 何かやらかした?揚げパン隠したから?まじで怒ってたし。いや、それは先週の話。

 

彼女の顔が、スローモーションのように、だんだんと歪んでいった。              

その表情を見て、私の心に悲しみが静かにしみ込んでいった。               

 彼女が悲しんでいることが、私を悲しくさせていった。                  

 

周囲の音も色も、急に変わった。 二人とも泣きそうな顔のまま、言葉も交わせず、       

ただ立ち尽くして   ―― [無言のさよなら]をした。

 

そして――その1週間後、我が家は破産した。

 彼女のお姉さんは、うちで働いていた。 給料未払いのままの倒産。

そりゃ怒るよね。 絶交どころか、もっと深い痛みだった。

 

悲しいことに、彼女の顔は思い出せない。 ただ、記憶だけが残った。