2月18日発売の『天上の葦』のカバーができました。
カバーはジョルジュ・ラ・トゥールの『聖ヨセフの夢』です。右が聖ヨセフ、左が天使です。ラ・トゥールは17世紀前半に活躍したフランスの画家ですが、没後は忘れられ、20世紀初頭になって再発見されました。現存する真作は40点ほどで、ほかは全て失われてしまったそうです。
2005年に上野の国立西洋美術館で開かれた展覧会でこの絵を観て、強い印象を受けました。ちょうど第一作目の小説『犯罪者』の執筆を始めたばかりで、鑓水も相馬も修司もまだおぼろげな輪郭しかなく、物語の骨格を打ち立てることに腐心していた頃でした。
彼らの登場するシリーズ第三作『天上の葦』を書き上げた時、不思議と十年あまり前に観たこの絵のことが思い出されました。
老いと記憶は『天上の葦』のモチーフのひとつでもあります。物語の旅を終えて本を閉じた時、この書影に何かを感じて頂ければ幸甚です。