家 | 脚本家/小説家・太田愛のブログ

お正月明けに実家に帰省。久しぶりに母とキッチンに立つ。

リフォームしたキッチンは使い勝手がよく、料理を作る気持ちも華やぐ。

不意に子供の頃によく作ってもらったシチューが食べたくなり、

母と並んでお喋りをしながらじゃがいもを剥く。

出来上がったシチューはローリエの香る昔通りの味。

ロールパンとサラダを添えて美味しくいただく。


夜、しんとした自室に戻る。部屋は私が進学のために上京した十八の時のままに残されている。

机の引き出しには赤線を引いた教科書や落書きのあるノート。

書棚には当時読んだ本。

父の書棚から持ち込んだ本もそのままにある。

この部屋で友人と本の感想を話し合ったり、好きな音楽を聴いたり。

あの頃と何ひとつ変わらない自分の部屋に戻ってくると、

どうしてかいつも少し胸が苦しいような切ない気持ちになる。


やはらかに光る記憶の薄片に降りこめらるるやうに眠りき      横山未来子