マニー・パッキャオvsリッキー・ハットン | 脚本家/小説家・太田愛のブログ

昨日、5月3日(日)は午後に打ち合わせ。


帰宅して後、仕事前の喝を入れるつもりで、楽しみにしていたマニー・パッキャオvsリッキー・ハットンの録画を観る。IBOタイトルを賭けたスーパーライト級のタイトルマッチ。というよりも、一方のパッキャオは体重50kg前後のフライ級からスタートして4階級を制覇し、昨年12月にはウェルター級(64~65㎏前後)にウェイトを上げてオスカー・デラ・ホーヤと戦って勝利した東の雄、もう一方のリッキー・ハットンは46戦45勝、スピードのある連打を得意とする現在、最も充実したファイタータイプのボクサーで西の雄。まさに東西スターの対決だ。

脚本家・太田愛のブログ-パッキャオvsハットン
掛け率は2:1でパッキャオが高かったが、試合前にインタビューを受けたボクサーのみなさんは、どちらかというと八ットン有利の予想が多い。ジョー小泉さん、浜田剛史さん、ゲストの香川照之さんらもハットンを倒すのは至難の業とコメントなさっていた。パッキャオ贔屓としては、笑顔で入場してくるパッキャオの様子を見ているときから、脈が上がる。

試合は予想を遥かに超え、凄まじいの一言。1R前半こそ、ハットンの小刻みなジャブに押され気味だったパッキャオだが、中盤からは右フックのリードブロウを何発も的確に決め、1R内で2度もダウンを奪う。そして2R終了10秒前、右を警戒するハットンの裏をかき、パッキャオは持ち味の左フックを狙いすましたように顎に決め、完璧にノックダウンする。ジョー小泉さんをして「あのタフなハットンがこんな倒され方を……!」と感嘆せしめた一撃。ハットンはパンチをくらって1分以上も倒れたまま朦朧としていた。

実況の高柳さん、ジョーさん、浜田さん、みなさんいつにない興奮・絶叫で、私もゲストの香川さんにシンクロして「おーおーおーおー!」と全編、叫びっぱなしだった。試合が終わってリプレイを観ている時も、実況の高柳さんが「このビデオを持ってボクシングを布教したいですね!」と仰っていたほど凄まじくも鮮やかな一戦だった。

再放送は5月7日木曜日、夜9時からWOWOWにて。ボクシングってなんだかなぁ……とお思いの方、是非!是非、この一戦をご覧下さい。


2ラウンドTKO。たった6分の試合だけれど、舐めるように十回以上見て書きたいことは山ほどある。が、お尻に火がついた〆切が先だ。この一戦のことはまたいずれ改めて。

パッキャオの試合でいつも印象的なのは、入場してくる時の彼の表情だ。通路に現れたパッキャオは人懐っこい笑顔を浮かべていかにもうれしそうで、ファンの差し出す拳にグローブを合わせたりしながらリングに向かう。ところが、リングロープをくぐった瞬間、彼は別人のように厳しい表情になる。並外れた技術とボクシング勘を持ち、同時に、知的で冷静さを常に失わず、しかも果敢に攻め続けるパッキャオらしい印象的な表情だ。

とにかく、鳥肌の立つような戦慄の一戦だった。


もうひとつ感慨深かったのは、同じ放送の中で、オスカー・デラ・ホーヤの引退会見の様子が流れたことだ。パッキャオ戦の敗戦から四ヶ月、デラ・ホーヤは長いプロ生活に終止符を打った。

デラ・ホーヤは終始、穏やかな表情だったが、時折、声をつまらせ、5歳の時からボクシングを始め、ボクシングが僕のすべてだった、と語った。そう語るデラ・ホーヤの表情は、オリンピアンとしてプロのリングロープをくぐった遥か昔の“ゴールデン・ボーイ”の表情を彷彿とさせ、観ていてただただ胸がつまった。