『一つのコントが出来るまで』カモ
作家のナツノカモです。変な名前。
先日のグレアム公演で、「娘さんをください」というネタを書きました。
今回は、あのネタが完成するまで、というお話です。
最初に、『9人全員が出るコントを作ってください』という発注がありました。
僕は制限や条件があった方がネタを書きやすい(と言うか燃える)タイプなので、
なんのアイデアも無い状態でそれを引き受けました。
人数が増えるというのは、2人や3人のコントよりも作るのが難しくなります。
6分や7分の短い尺で、全員に役柄を当てはめるのは不可能に近いからです。
有名な『桃太郎』にしたって、おじいさんおばあさん、桃太郎に犬、猿、キジ、あと鬼で7人です。
9人も要りません。増やすなら鬼B、鬼Cということになるでしょうか。
さっそく頭を抱えましたが、カモはそこでふと気づきます。
人数が多くて役柄を割り振れないなら、それを逆手にとり、
本来は1対1でされるべき会話を大人数でやれば、
それだけでコントとして成立するのではないだろうか?
例えば、医者のガン告知。
コントでは使い古された、ありふれた設定です。
しかしそれを大人数でやったらかえって新鮮に見えるかもしれない。
患者1人に対して医者8人。
「あなたはガンです」「ガンです」「ガンなのです」と8人の医者がやいのやいのみんなで言う。
患者は戸惑う。ガンそのものよりも医者の数が多過ぎることに戸惑う。
あるいは、患者4人で医者5人。
「あなたたちはガンです」「本当ですか、先生たち!」といった会話。
先生たちってなんだよ、と。
ただこれ、面白いとは思ったのですが、その先の展開があまり思いつきませんでした。
ピークが最初に来てしまって、起承転結の転がないのです。
カモは困りました。設定を変えることにしました。
大勢でやることで新鮮に見せるならば、設定は凝ったものではいけません。
よくあるもの。そこで次に浮かんだのが結婚の挨拶でした。
例えば、父親5人に娘の彼氏4人。
「娘さんを僕たちにください」
「お前たちにはやらん」
「お願いします!お父さんたち!」
「先生たち」よりも「お父さんたち」の方がインパクトがあります。
「お父さんたち」という状況は日常には存在しません。
連発するほど面白くなるフレーズです。
これだ、と思いました。
さぁ設定が決まったらあとは発展させる作業です。
「しあわせにしてみせます~」と彼氏側が声を揃えて言う。卒業式の言い方で。
本来は緊迫した状況ですから、そこにズレが生まれます。
途中、父親側も彼氏側も、みんなで相談のタイムを作る。
こんなことは普通あり得ません。なんでたくさんいるんですか。
医者と違い、この設定は「主張のぶつかり合い」という面があります。
これを使わない手はありません。
つまり、中には相手の主張に負けて説得される奴が出てくる。そいつは相手側に移動してしまう。
さっきまで「娘さんをください!」と言ってた奴が、移動して向きを変え「娘はやらん!」と言い出す。
この「移動」が起承転結の転になりました。
医者の設定ではできなかった展開です。
あとは移動の回数を増やして、みんなが入り乱れる様をどう面白く見せるか。
本番では考え得るパターンをすべてやりました。たぶん。
みんな上手に動いてくれたと思います。
最後は、全員が彼氏側に移動し、父親側がいなくなってしまって、みんなで喜ぶ、
という落ちにしました。わけわからん。
9人が全員出て、最終的に全員が一丸となるコントなので、
公演の一本目としてもなんだか良かったのではないかと思います。
一つのコントが出来上がるまで、というお話でした。
そう言えば、、
彼氏をシンガーソングライターという設定にしたので(なのに大勢いる)、
途中シュンペーターさんには歌ってもらいました。
台本では『なんか歌う』としか書かなかったのですが(ひどい)、
見事にいい具合いのしょうもない感じの歌を作ってやってくれました。
作家として楽しいのはこういう瞬間です。
カモでした。
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