政治とメタルと網膜剥離 -28ページ目

内閣不信任案採決直前の菅直人首相と亀井静香の会談

本日、菅内閣に対する不信任案が否決された。当初自民党が想定したような小沢・鳩山系の造反はほとんど無かった。その理由として、菅首相が震災対応の目処がつき次第辞任する、と表明したことがある。この言質を取ったことで小沢は矛を収めた。


菅首相は、鳩山前首相からも自発的退陣を求められていた。11時20分ころから始まったこの会談については小沢には知らされていなかったといい、結果として直後の代議士会での辞任表明(時期があいまいだが)によって攻め手を失った小沢は激怒したという。

小沢氏激怒、菅・鳩山会談の詳細知らされず(読売新聞)

しかし、この会談の1時間前、亀井静香も菅首相と会談し、自発的退陣を求めていた。


亀井代表、菅首相に退陣要求(朝日新聞)

(以下引用)

亀井氏は「この混乱を続けるわけにはいかない。退陣の腹を決めていただきたい」と述べ、内閣不信任決議案を否決した後、東京電力福島第一原発事故や東日本大震災復興など当面の対応にめどがつき次第、総辞職するよう求めた。亀井氏によると、首相は「考えておきます」と答えたという。

(引用終わり)


菅にとっては、自分を支え続けてくれていた亀井の辞任要求が、トリガーになったのではないか。菅が代議士会で表明した内容は、亀井の進言内容と全く同じである。


一方で亀井は、菅と鳩山の会見直前に、不信任案賛成に動いていた鳩山の動きを強く批判していた。

不信任賛成は「自殺行為」=亀井代表(時事ドットコム)

(以下引用)

鳩山由紀夫前首相が内閣不信任決議案に賛成する意向を固めたことについて「政治家として自殺行為だ」と批判した=2日午前、首相官邸

(引用終わり)


また、昨日の段階では、以下のような発言をしていた。


国民新・亀井氏、「小沢グループは反新自由主義」-民主挙党一致のため内閣改造を(世界日報)

(以下引用)

国民新党の亀井静香代表は1日の定例記者会見で、民主党の内紛に関して「党内での対立の先鋭化は菅政権が成立して以来、(同席の)田中康夫新党日本代表が指摘したペンタゴン勢力(政官業癒着体制)と一緒になって、政権交代時の公約をことごとく反故(ほご)にし、新自由主義的政策を推進してきたことにあるのではないか」との質問に対し、「小沢グループは対米従属、新自由主義に批判的な考えを持っている」と指摘。さらに、「自民党は日本国家の独立という党是を捨て、小泉・竹中構造改革路線時代に対米従属の新自由主義的政策を推進して(経済を疲弊させて)きたが、その総括を未(いま)だに行っていない」と批判した。

 その上で、反執行部勢力が内閣不信任案に同調する動きを見せているのは、「政策面で自民党と一致しているからではない」などとしながら、民主党内の亀裂を修復し挙党一致体制を確立するためには「(人事刷新の)内閣改造が必要」と強調。2008年夏の「政権交代時の原点に立ち返る」必要があると力説した。

(引用終わり)


小沢グループの思想を評価しつつも、その批判するところの自民党の提出する不信任案に賛成しようとい動きを暗に牽制していた。


結果として、菅の自発的退陣表明によって小沢・鳩山は攻め手を失い、不信任案は大差で否決された。全てが亀井の読みどおりとは言わないが、彼の動きを見ると大体落としどころを予見し、動いていたと思われる。


菅の退陣時期は明白でないが、少なくとも不信任可決による混乱(解散総選挙または自民党を巻き込んだ民主党内の政争)は避けられた。事ここに至っては、政治的空白を最短にするためにはこの手しかなかったと思う。


1980年にも、内閣不信任案が解散総選挙につながった「ハプニング解散」があった。この時は、大平内閣不信任案可決から総選挙、鈴木善幸内閣発足まで実に64日を擁している。安易に不信任案に賛成しようとした者は、この事実を知っていたのか?

思えば、今日の事態は菅が全く亀井の言うことに耳を傾けないことから始まっていた。


昨年6月、参議院議員選挙前の菅の「消費税10%発言」について痛烈に批判したのにも関わらず撤回せず、選挙で惨敗した。消費税についてはその前から亀井は引き上げについて再三再四批判していたのにも関わらず、である。


最近では亀井は、菅に小沢一郎へ協力を要請するよう、これも再三再四勧めていたが、結局菅は動かなかった。人の進言を聞くことが出来ない菅の器の小ささが今日の事態を招いた。


しかし、最後の最後で菅は亀井の進言を受け入れた(他にも多くから同じ事を言われていたのだろうが)。これは結果として、日本のために本当に良かった。


この非常時下で不信任案を提出した自民党には、相当有権者の批判もあったようである。そもそも石破政調会長なども、この時期の提出には批判的だった。これだけ大騒ぎして、国民の批判もある中不信任案提出を強行して失敗した谷垣総裁には、いわゆる政局を読むセンスは皆無といってよい。しかも本当に不信任案が可決して、総選挙にでもなったら、ということを彼は考えなかったのか?菅が悪いと言ってすむ話ではない。彼は悪人ではないと思うが、この程度のセンスで日本の舵取りをしようなどというのは妄想であるかつての自民党の先達に、あまりに遠く及ばない。加藤の乱で自爆した加藤紘一を彷彿とさせる。


かつての自民党政治のお家芸だった「落としどころを探る」ことができる政治家が、どの党を見ても亀井を除いて皆無になっている。本来国対の経験もある森喜朗あたりが自民党でその役割を担うべきなのに、目先の政争にかまけて逆に不信任案の成否を巡って誤情報を流し混乱を煽る始末である。さすが「サメの脳みそ」と言われただけのことはある。


亀井は今後、内閣に入ろうが入るまいが、その個人的力量は引き続き必要とされるだろう。日本のために政治の混乱を避けようとする意志と力量を持つ政治家が、亀井以外見当たらないところが今日の政治の悲劇である。