政治とメタルと網膜剥離 -25ページ目

イタリアの原発国民投票と菅原文太の「反原発三国同盟」「原発国民投票」発言

イタリアは日本では「ヘタリア」とまで言われ馬鹿にされているが、要所要所では日本のような大失敗はせず、うまく危機を回避している。先の大戦ではドイツに相談せずにギリシャへ攻め込んでは負けてドイツの助けを仰ぐ醜態をさらし、アフリカでもイギリス軍に全く歯が立たず、一度の戦いで十数万の捕虜を出した挙句、日独より二年も早く降伏した。軟弱だなんだと批判はされるが、人的被害は日独に比べたらはるかに少なく、戦後の経済復興にも成功して未だにG7の一角を占めている。


そのイタリアは原発でもさっさと危険を回避しようとしている。かつて稼動していた原発は1990年には閉鎖されていたが、6月12,13日に実施された国民投票は、その復活の芽も完全に摘んだ形となった。


その理由について面白いものがあった。「日本だって原発をコントロールできなかったのに、イタリアにできるわけがないじゃない。ナポリのゴミも処理できないのに」というあっけらかんとしたもので、決して無理をしない国民性が表れている。自国のへたれ具合を知っているので、大怪我しそうな危ないことはしない。


それでも実はイタリアは一人当たりGDPでは日本の9割もある。バカンスの長さなどを考慮すれば、労働時間あたりのGDPはイタリアの方が上だろう先の大戦では限界を見極めない戦争遂行で絶大な被害を受け、戦後は地震を無視した原発推進で国土や海を汚染した勤勉な日本人と、限界を見極め巧みな危機回避をしてきた(へたれな)イタリア人。どちらが賢かったのだろうか?

一人当たりの購買力平価ベースのGDP(USドル)の推移(1980~2011年)の比較
(イタリア、日本)

このイタリアの原発推進を巡る国民投票結果に触発されたのが、菅原文太である。

文太 吠えた!反原発三国同盟じゃ!! (デイリースポーツ)

(以下引用)

俳優・菅原文太(77)が14日、都内で行われた「岩手、宮城、福島の被災者のための『ふるさと支援』発表会見」に出席し、「反原発三国同盟」の結成を提案した。12、13日にイタリアで行われた原発再開の是非を問う国民投票で90%以上が「反対」だったことを受け、先に脱原発を宣言していたドイツとともに団結して流れを作っていくというアイデアを披露。「日本でも原発の是非を問う国民投票を」と呼びかけた。

 「日独伊三国同盟」と言えば第2次世界大戦で連合国側と敵対したネガティブなイメージだが、菅原は「『原発をやめろ』といういい意味での三国同盟を作ればいいんだよ」と前向きな意味で提案した。イタリアでは、原発の是非を問う国民投票で94・05%の反対票が集まり、ドイツでは2022年までに国内の原発すべてを閉鎖することを宣言。菅原は両国の流れに乗る形で“同盟”を呼びかけた。

 会見では、被災地住民の移住を受け入れる地方自治体があることをPRし、仙台市出身の菅原は被災地住民を代表して謝辞を述べる立場だった。

 しかし、福島県相馬市の酪農家男性が「原発さえなければ」と書き残して自殺していたという事件を切り出すと、ヒートアップ。「衆議院の選挙なんかどうでもいいから原発の是非を問う国民投票をやってほしい。そうすれば菅さんはこれまでのことは帳消しになる」と鋭く突きつけた。

 以前は「~じゃけん」という決めセリフで太陽熱に関する企業CMに出演し、近年は飛騨地方への移住や山梨県で農業を行っている“自然派”でもあるだけに、故郷・仙台の窮状に黙っていられなかった。

 さらに、この日は菅原の呼びかけで同席した福島県郡山市出身の俳優・西田敏行(63)も怒りの声を上げ、「個人的には原発はノーです。東電は防災にかなりいいかげんだった」とピシャリ。ベテラン俳優の強力タッグで原発に対する強い姿勢をあらわにしていた。

(引用終わり)


菅原は、かの郵政選挙では敢然と亀井の応援に立ったことで知られるが、その他にも、共産党シンパとして知られた高校の一年後輩の井上ひさしや朝日新聞本社で拳銃自殺した新右翼野村秋介、そして現職の防災担当大臣松本龍との交友があるという。


経歴を見ると、仙台有数の進学校仙台一高から早大第二法学部(夜間)に進み、俳優活動のためか中退している。同じ第二法学部だけを見ても一学年下にはかつて参議院の「法皇」とまで言われた青木幹雄、編入学だが同期入学に元首相海部俊樹がいた。この時期の早稲田は雄弁会の全盛期で、菅原の前後で雄弁会員として渡辺恒三、森喜朗、西岡武夫、雄弁会以外でも福田康夫、河野洋平、市川雄一(元公明党書記長)、大内啓吾(元民社党委員長)など与野党問わず政治家を輩出しているが、この人脈には菅原は関わっていない。権力志向の雄弁会とは相容れなかったのだろうが、政治に対する思いが何らかの形でくすぶっていたのかもしれない。


菅原の早く独伊に続け、という想いは分かる。ただ、今すぐ国民投票というのはどうだろうか?判断するにはあまりに情報が少なく、福島原発震災から間もない時期での投票では、結果が「原発廃止」と出ても、石原慎太郎の「馬鹿息子」のように「集団ヒステリー」と言い出す輩が出てくる。


以前にも書いたが、原発に関わるコスト、建設・維持・地元補償・燃料再処理・安全対策費など全てを計上した上で、発電方式ごとの収支を算出しなければならない。そして燃料の価格変動によって、収支がどう変化するかを国民に見せなければならない。その上で地震などの震災リスクを偏見なく見積もったらどのような結果となるか。結局は将来の核武装の可能性を残したい、という理由しか残らないのではないか。だったら一箇所だけ、しかも地下奥底に作ればいいわけで、地震のリスクが非常に高い日本の全国で原発を稼動させる理由にはならない。

よく、原発の発電コストが最も安いという表が出回っているが、本来計上すべきコストを理由を付けて計上せずに安くみせることは非常に簡単である。これは原発導入時から、しかも原発には反対ではなかった民社党系の政治家からあった指摘である。


やるなら徹底的に馬鹿息子でも分かるような客観的データを徹底的に積み上げ、投票でも完全な結果を得なければならない。原発廃止の国民投票運動自体には賛成だが、投票判断の裏付けとなるデータ公表も要求すべきである。