第20回目前記念企画 | ナメル読書

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時にナメたり、時にナメなかったりする、勝手気ままな読書感想文。

私は絶句した。いや、あるいは「ああ」とか、「うう」とか、「おおぷ」くらいはつぶやいていたかもしれない。

発見してしまったのである。

古書店だった。ごく一般的な店構えの古書店である。その軒先だった。通常の例にもれず、そこにも100円均一の、文庫本を中心とした本が並んでいた。その中に、あの本を発見してしまったのである。

当ブログ第20回を目前として、何を取り上げようかと考えていた私にとって、まさに天からの啓示に値した。デキすぎなくらいであった。あまりにデキすぎていてもしかするとヤラセかと思われるかもしれない。しかし、断じて違う。私はたまたまこの本に出会ったのである。

武者小路実篤 「空想先生」

分からない方もいるかもしれない。おそらくその方が多勢であろう。しかし、この連載を読み継いできてくれた方ならばぴんとくるにちがいない。

私は第10回記念企画として、武者小路実篤「真理先生」をとりあげた。内容をまったくしらずに、タイトルだけで本を選び、事前に予告してから読了し、感想を書くというものだった。

「真理先生」はまことに壮絶な読書体験であった。自由なのである。武者小路先生はまったく自由に、善人どもしか現れないというありえない世界で、小説を書いた。事件は起こるものの非常にささいなものばかりである。普通ならこんな何も起こりそうにない設定で話は書かない。でも、武者小路実篤は臆せず、堂々と、自由にこの小説世界を描いた。あまりに悪意のない世界を、おそらく悪意など知り尽くしているはずの人間が書いている。そのことに戦慄すら覚えた。

まさか、その姉妹篇があるとは……しかも、タイトル「空想先生」って。何人先生が出てくれば気が済むのか?

今回もまだ本書を読んではいない。空想先生が何ものであるのかは分からない。山谷五兵衛はどうやら出てくるらしいのだが、では真理先生はどこにいったのか?馬鹿一は?泰山は?白雲は?でてくるのだろうか。

謎だらけである。しかし次回、このデキすぎた偶然にしたがって感想を書いてみたいと思う。2番煎じは総じてつまらないと言われるが、はたしてどうであろうか?そしてなぜ、武者小路実篤は姉妹篇を書こうと思ったのだろうか?

ああ、謎だらけのままだ。

……と、いうわけで第20回記念企画をやります。