ゆうかの荷物は予告どおり冬服を中心に色々持ち帰ったあとがあった。
だが彼女おきにいりのフェイスタオル、歯ブラシや部屋着、下着の一部、化粧品、ゆうかが買った音楽CDなどは残されていた。
もちろん全部残さず持って帰れる量ではなかったので、残っていても不思議はなかった。
そして合鍵は・・・郵便受けや入口ドアの新聞受けなどを何度探してもなかった。
「合鍵を意図的に持って帰ったのか・・・」
部屋を出ていくゆうかが鍵をかけ終えたあと、その鍵をどうするか迷っているイメージが浮かんだ。
返してしまおうか、それともまた逢うために持ち帰るのか・・・。
彼女からの置手紙には「じゃあ・・・またね。さようなら」と書いてあった。
思い返せば1年ほど前、ゆうかとの半同棲に終止符をうったあの日、僕の家を飛び出したゆうかは同じように合鍵を持ったまま出て行った。
うちにはこのマンションを購入したときにマンションデベロッパーから渡されたスペアキーは4つあった。
1つは僕、1つは前妻が使っていたが、前妻がこの家を出て行ったときはもちろんその鍵は置いていった。
ゆうかが持っている合鍵は前妻が使っていたものだ。
ゆうかもスペアキーがうちにあといくつ残っているのか熟知していた。
なので返してもらわなくても困らないといえば困らなかったし、僕は半同棲が終わらず、またいつもどおりゆうかは はにかみながら僕の家に戻ってくると思っていた。
「・・・・」
僕は何度かゆうかの手紙を読み返した。
彼女の本心はわからないが、前に進みたいと思いつつも僕との関係をどこか断ち切れない心情を感じとった。
最後にこの部屋のドアに施錠したとき、ゆうかは思ったはずだ。
(この鍵を返してしまえば、ショウさんのもとに帰れる理由が完全になくなってしまう・・・)
合鍵を返せるタイミングでまた返せない ゆうかの女心・・・。
「ゆうか・・・まだ僕に未練が・・・? いつかまた僕らは逢えるって意味なのか・・・?」
彼女が置いていった私物をみてもまた再度僕の家に泊まった場合に使えるものが多くあった。
だが僕の家を訪れ、身の回りのものを置いたまま去っていった女性は他に何人もいた。
ゆうかも彼女らと同じように残していってもおかしくはない・・・。
複雑な気分でゆうかが使っていた部屋を少し片づけているとハルナからショートメッセージが携帯に入った。
(夜分すいません。ペンション、いかがでしたか?)
「そうだ、ハルナに返事しなきゃ・・・」
もしこの日、ゆうかとまた逢えていたら確実に違った未来があっただろう。
だがその未来の選択肢は消え去ったのだ。
それはリアルに感じていた。
そして現実味を帯びていくハルナという別なる選択肢・・・。
僕はもう一度、ハルナが送ってくれたペンションの情報を見直した。
部屋の写真だけみると完全にカップル向けた可愛らしい部屋にしか思えない内容だった。ラブホテルと言ってもいい。
ハルナがこの部屋で僕に何をされたいのか、彼女が望む展開がよく見えてくるし、自らお泊りデートを設定してくるハルナの積極性は悪い気がしなかった。
それは僕がひとえに性欲の高い女性の欲求に答えることが昔から好きだったからだ。
週末、この部屋でハルナとセックスして彼女へまたたっぷりと性的な悦びを与えているイメージが浮かんできた。
「ふーーーっ・・・」
僕は一呼吸置くと恐らく消えてしまったと思われる ゆうかという選択肢を一旦諦め、もともと選ぼうとしていたハルナとの交際を前向きに考えはじめた。
こんな心情でハルナに逢うのは少し申し訳なかったが、幸いハルナは僕とゆうかの関係は微塵も知らない。
男女の恋愛にはよくあるシチュエーションだろう。
それにハルナも僕に辿り着くこの数ヶ月、何人かの男と逢い、少し嫌なめにもあったと言っていた。
(・・・・ハルナさん、お返事遅くなりました。素敵なペンションですね。週末、たのしみです)
僕はそうハルナに返事を返すと携帯をソファーに投げるとシャワーを浴び、ベッドに入った。
枕にゆうかが使っているロクシタンの化粧水のほのかな香りとシーツにゆうかのアソコからこぼれ落ちた愛液のシミが残っていた。
その残り香を嗅いでいるうちにゆうかとの激しいセックスを思い出し、自慰をして眠りについた。
つづく