『100年のLOVE SONG』(第13話)

9.プレゼント
 園内は、そろそろ黄昏時になっていた。
 遊園地の方に行って少し遊び、気が付いた頃には、周りはすっかり暗く成っており、遊園地の周辺だけが皓皓とライトアップされていた。
 「食事に行こうよ。少し高くても良いから、いい店無いかな?」
 「そうね、肉と魚どちらが好き?」
 「どちらかと言えば、魚かな・・・」
 「それじゃ、バスク料理の店に行く?」
 「スペインは、初めてだから任せるよ」
 「バスク料理は、スペイン北部の地方料理で、魚介類中心よ」
 「それにしてみるよ」
 「じゃ、行こう」と、言って梅乃は歩き出した。
 先程のラゴ駅から人混みに揉まれながら、メトロに乗り何駅か過ぎて下りた。
 雑踏の中から駅の外に出ると、そこはネオンが輝き、色んな店で賑わう繁華街の様である。
 私と梅乃は、駅前から続く広い通りを右に曲がり歩き始めた。
 二人が並んで歩いていると、目立つようで通り過ぎる人達からの視線を感じる。取り分け梅乃に視線は集中していた。
 私は、それを敏感に感じ、梅乃の背中に手を廻して思わずエスコートしていた。
 「 この道は、セラーノ通りと言うのよ」梅乃が、ガイドをしてくれる。
 「そう。・・・」
 「この周辺は、ブランドショップが多いの・・・」
 「君に、何かプレゼントしたいけど、良いかな?」
 私は、今度何時逢えるかも分からない、梅乃に記念に成る物を送りたかったのである。
 「えっ!うれしいけど。いいの?」
 「ぜひ、受け取って欲しい。ブランドは何が好き?」
 「エルメスかディオールね」
 「僕は、何時も身に付けていて欲しいから、宝石にしたいけど良い?」
 「本当に良いの?」
 「もちろんさ」
 しばらくセラーノ通りを北に歩いてゆくと、クリスチャン・ディオールの店が右側に有った。
 整然として明るい店内に入り、品定めをして、ネックレスと指輪で迷ったが、結局、梅乃が選んだ可愛く気品のあるダイヤのネックレスにした。
 今、着ている白いドレスに着けて見てみると、清楚な梅乃の雰囲気に良く合っている。
 「良いね。・・・君に良く似合っているよ」
 「そう、・・・これにするわ。本当に有難う」梅乃は、少女のような面影を見せて言った。
 携帯PCの電子マネーは、後日決済と、その場決済が有るが、その場決済を選び、店を出て歩き出すと、いきなり梅乃が私に寄りかかり、頬にキッスをした。
 私は、不意をつかれて驚いた。
 梅乃は、私の横で少女の様に弾ける笑顔を見せている。
 「びっくりしたよ・・・」私は、人気の多い所なので周りを気にして、当たりを見回しながら言った。
 「ごめんね。・・・恥ずかしかった?・・・でも嬉しかったの」
 「・・・」私は、黙って頷いた。
 梅乃は、ある時は大人びた母性を感じさせる女性かと思えば、ある時は突然少女の一面を覗かせる女性であり、私に色々な一面を見せてくれる事が分かって来た。
 そして、そんなところが、非常に愛おしく思えて来ていた。
 夕食は、セラーノ通り近くのレストランに入り、カタルーニャ地方のアレイア産白ワイン、ヴィノ・ブ ランコで乾杯して、バスク料理を楽しんだ。
 地中海の魚介類をオリーブ油で揚げた、日本のテンプラに似た感じのフリッターは私好みで美味しく食べられた。
 その後、二人ともほろ酔い気分で、梅乃のアパートまで歩いていた。
 少し、アパートまでは距離が有る様であったが、私は梅乃と一緒に歩きたかったのである。そして、二人でいる時間が少しでも長く続く事を願っていた。

<続く>