2026/08/13(木)東京宝塚劇場にて、宙組『黒蜥蜴』新人公演が上演されました。

私は配信で視聴しました。

 

 

★宗行 正一郎(新公演出担当)

 

新人公演の演出担当は、宗行正一郎先生。

新公演出デビューおめでとうございます。

 

『黒蜥蜴』ワールドに似合う、クラシカルで渋いお名前ですね。

キラキラネームをよく見かける現代では、いっそ新しさを感じます。

 

原作は第二次世界大戦前の、イケイケで豊かな時代。

本作は戦後、急激な経済発展ににぎわう時代。

どちらにせよ、眩しく活気ある時代です。

 

そんな時代の熱気をはらんだ『黒蜥蜴』の世界を、若手だけで再構築。

基本は本公演に忠実ですが、より「時代がかった」雰囲気を感じました。

古風で大仰な面を、さらに強調したような。

それが『黒蜥蜴』の幻想的な非現実性を強めたように思います。

 

現実と幻想が交錯した世界観が、三島由紀夫を魅了した、現実と幻想が交錯した世界観。

宗行先生は『黒蜥蜴』の魔性(魅力)を見極めておられると感じました。

 

 

★鳳城のあん(106期・研7)

 本役…桜木みなと(95期・研18)

 

明智小五郎

日本を代表する名探偵

 

新人公演学年ラストの研7での主演抜擢、おめでとうございます。

様々な場で抜擢されてきた、のあん君。

新公主演が遅れたのは、致し方ない面が大きかったかと。

 

宝塚はコロナの感染予防のため、長期休演(2020/02/29~07/16)

106期はコロナの影響で、初舞台が約半年遅れました。

 

本公演の上演は復活しても、新人公演は休止状態に。

(2020年3月~2021年6月まで、新公休止)

 

また、2023年9月~2025年1月まで、宙組は新公ストップ。

この間、本来なら2作分の新公が上演された計算でした。

 

新人公演に関して最も苦労を経験したのは、宙組…中でも106期かと思います。

 

のあん君、本当におめでとうございます。

 

地に足がついてるようで、掴みどころがない「明智小五郎」

明智は探偵事務所を構え、共に捜査にあたる秘書や所員がいます。

 

…が、なぜか明智は「馴染んでない」

良い意味で「浮いてる」ような気がします。

(これは本公演を観たときから感じましたが、新公を観て改めて)

 

堺や岐阜は「部下」であって、「相棒」ではない。

明智と所員は協力して事に当たりますが、「仲間」感はうすい。

明智はいわば、孤高の存在。

 

黒蜥蜴が明智を殺そうとしたのは、明智が邪魔だった事だけが理由ではないかも。

どんな手練手管を弄しようと、明智は自分のものにならない。

そう感じたからでは…と。

 

明智は黒蜥蜴に惹かれ、二人は相思相愛でした。

ですが、明智の輪郭のあやふやさが、黒蜥蜴を不安にさせたのかな…と。

「誰のモノにもならない」感と申しましょうか。

 

鳳城くんがカーテンコールの挨拶で、

「愛する人を喪っても、それでも生き続ける勇気」

という風に、物語の後につづく明智の生き様を振れました。

 

人生には様々なことが起こる。

それでもなお、生き続ける覚悟と勇気。

 

そんな明智だから、黒蜥蜴も惹かれたんでしょうね。

己が死んでもなお、その後の日々を歩み続けるであろう明智。

その強靭さを羨み、淋しく思う。

「憎い人」という黒蜥蜴の告白は、最上級の褒め言葉であり、恨み節でしたね。

 

鳳城のあんの演技には、過剰なものがありませんでした。

むしろ、淡々と明智を演じたように見えます。

その体温の低さが、明智らしさに繋がっていました。

 

梨恋あやめの黒蜥蜴との対比、掛け合いを通して、明智がより明智らしく映りました。

本作は、鳳城のあんと梨恋あやめ、二人が組んでこその相乗効果が大きかった。

宝塚がコンビで作品のセンターに立つ意味がよくよく分かる舞台でした。

 

鳳城くん個人のことに触れますと、滑舌が良く、落ち着いた発声でした。

安定した歌唱で、安心して聴き入ることができました。

表情や動きの塩梅も良く、細かいところまで気を配ってお稽古したんだろうな、と。

 

長の期の長として、主演として、新公チームを引っ張ってきたんですね。

ご挨拶も「チームの代表」としての立ち位置。

感謝の気持ちが伝わってきました。

 

いろんな荷を背負い、新公に臨んだであろう鳳城くん。

ほんっとうに、おつかれ様でした。

 

最後になりましたが、新公初主演おめでとうございました。

舞台技術が安定し、ご挨拶も落ち着いてたためか、初主演という事実をうっかり忘れそうでした。

 

 

 

★梨恋あやめ(108期・研5)

 本役…春乃さくら(102期・研11)

 

黒蜥蜴(緑川夫人)

裕福なマダムを装う、女賊

 

すらりと長身で、大人っぽい美人・梨恋さん。

緑川夫人(黒蜥蜴)にドンピシャでした。

ドンピシャは死語ですが、敢えて使いました。

 

三島由紀夫が書いた大仰な言い回しを、敢えてそのまま使った生田先生。

その台詞回しを、本役以上にねっとり繰り出す梨恋さん。

ただでさえ癖の強い台詞を、さらに強調するという挑戦。

 

緑川あやめ夫人の台詞を聴けば聴くほど、黒蜥蜴ワールドへ深くいざなわれるようでした。

 

この挑戦は、梨恋さんだから成功したのかも。

説得力のある緑川夫人(黒蜥蜴)でしたので。

 

緑川夫人のビジュアルは、持ち前の大人っぽさに加え、たいへん艶やか。

綺麗なお姉さんから、妖艶なマダムにジャンプアップ。

春乃さんも教えてくれたでしょうが、メイク工夫しただろうな。

 

黒蜥蜴の複雑な心理にも、共感できました。

大仰な台詞を操ってなお、あふれ出る心情が自然に感じられました。

 

動きながら、感情を込めて歌うことは、発展途上かと。

東西それぞれ一回きりの公演ですし、緊張もしたかと思います。

これからですね。

 

明智(鳳城のあん)、雨宮(奈央麗斗)ら、男役との絡みもカッコ良かった。

女性側がリードしたり、翻弄したり。

それが余裕があって、自然で、カッコイイ。

 

『黒蜥蜴』新公の成功の一因は、キャスティングだと感じました。

 

梨恋あやめを黒蜥蜴に配したことは大きかったですね。

新公初ヒロイン、おめでとうございました。

そう、初ヒロインなんですよね。

ベテラン感があるのは、役が大人だからでしょうか。

 

伶美うららをふと、思い出しました。

大人っぽい美人さんで、芝居が巧くて。

歌は弱めでしたが、演技力と存在感のある娘役さんでした。

 

間違いなく、緑川夫人は春乃さん、そして梨恋さんの「代表的な役」の一つになったと思います。

 

宗行先生、鳳城くん、梨恋さん、新公チームの皆さん、スタッフの皆さん、本役の皆さん。

素晴らしい新人公演をありがとうございました。

 

 

∇ばっちりキャスト

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