2023年11月10日(金)大きな動きがありました。
自死生徒の遺族の代理人が記者会見を行いました。
その会見は日テレNEWS24で全編を放映。
さっそく、YouTubeでも配信されています。
会見は、二人の弁護士が淡々と進行。
老練そうな川人博氏と、壮年の井上耕史氏。
川人弁護士は人権問題(特に過労死)に強い方。
ご自身の中学時代の悔恨を踏まえ、5年前のインタビューでこう述懐されていました。
「人生には、想定外の困難や苦境にぶち当たることもあります」
「そうした時、自分はどう振る舞うべきなのかと自問自答を繰り返している」
過労死問題に強い弁護士として著名な方です。
単に勝訴を目指すのみならず、「組織の構造的な問題を是正する」ことを目指して来られたそうです。
約1時間12分の会見終了後も、報道陣の質問を受け付けると明言。
「弁護士会館でなら、部屋を用意できます」
「終了後、廊下でも質問を受けます」
「可能な限り、質問に答えます」
穏やかな中にも、全面対決の意思が明確に伝わりました。
約30分を状況説明、残り時間で報道陣からの質疑応答。
本件の大きな争点(死因)は主に二つ。
(これだけではないだろうけど、絞り込むと)
❶過重労働
・長時間労働(連日ほぼ午前9時前後~24時前後)
・無休状態(8月中旬~9月末まで6日あった休暇も実質労働)
・過重業務(新公担当演出補佐、新公学年の管理業務まで負荷)
❷パワーハラスメント
・ヘアアイロン問題(傷害事件)
・週刊誌報道(による周囲からの圧)
・上級生の暴言
・劇団の無理解・隠蔽(聞く耳持たず、事実無根と発表)
今回、彼女が亡くなりました。
過去と現在、彼女以外にも心身を深く傷つけられた人は多い。
もしかしたら、全てのタカラジェンヌは犠牲者かもしれません。
(加害者になった人ですら、被害者の経験があるのでは)
弁護人の質疑応答で、私が注視した一つは「証拠」について。
弁護人は「過労やパワハラは事実」と明言。
その主な証左として、本人や遺族の証言、LINEやり取りを上げました。
宝塚歌劇団には電子データで出退記録を確認できない為、苦労された模様。
ただ、コロナが2類の頃は、劇団出入口に設置された自動体温計測機器。
これは証拠として有用だそう。
女性記者から「第三者がハラスメントの現場を目撃したのか」と質問。
これに対して、肯定(ただし、ソースは明かさぬ姿勢で)しつつ、すかさず「遺族や本人の言葉から、事実と判断した」と。
「私は遺族の代理人です」と言い切った事に、ハッとしました。
第三者の目撃証言があろうがなかろうが、遺族からすれば「本人が事実だと言った」ことが、事実の証左。
実際に関係者(新公演出担当者など)とのLINEやり取り等が、物証として明言されました。
ハラスメントはそもそも、証拠がないケースが圧倒的に多い。
本人の証言以外で、物証や目撃者を探す事は困難を極めます。
それでも、厳しい戦いに挑むと決めたご遺族。
依頼人の言葉を伝えることが、代理人の仕事。
依頼人の言葉を信じること。
その言葉に信憑性を持たせ、判定人の信用を得ること。
それが、弁護人の仕事なんだな…と。
なお、判定人は主に裁判官を指します。
同時に、社会全般も含まれます。
広く世間の共感を得ること。
これもまた、弁護人の業務だと改めて実感しました。
同時に、裁判は基本的に証拠を重視します。
身内の証言は、証拠能力として弱いのは確か。
記者が「第三者の目撃」の有無を尋ねたことは、報道する側として当然の責任です。
弁護人も、記者側も、それぞれがしっかりと己の仕事をしていました。
自死生徒の遺族は、具体的には「ご両親と妹さん」との事。
雪組に所属する双子の妹さんは、11/24(金)初日予定の大劇場公演 休演を発表。
東京公演も含め、全公演期間を休演。
遺族として、全面的に劇団と対決する覚悟でしょう。
妹さんが(希望されるならば)宝塚の舞台に復帰できますように。
退団せざるを得ない針の筵になりませんように。
宝塚歌劇団に、本格的な構造改革を望みます。
川人弁護士は「劇団は、阪急電鉄の一事業部。阪急にも責任を自覚してほしい」とも発言(意訳)
(研6以上の)タカラジェンヌは正社員ではなく、請負契約です。
そうであっても本件の場合、安全配慮義務違反は確実だと思われます。
木場健之理事長はもちろん、角和夫CEOには一肌も二肌も脱いで頂きたく。
司法判断がどう出たとしても、誠実であってほしい。
そう願ってやみません。
遺族が大々的な会見を行った動機は、劇団への不信感が大きいかと。
初動段階(年初のヘアアイロン報道)から、生徒一人一人への誠意ある対応があれば…と悔やまれてなりません。
生徒さんの死後も、後手後手に回っている感は否めなかったものの、ここまで拗らせたのか…と。
この展開は、劇団とご遺族のやり取りの結果が反映したものと思います。
私もたまたま昨夜から今朝にかけ、身内に心配事が起こりまして。
深夜、待機中に会見を視聴しました。
ご遺族の方々には及ぶべくもありませんが、他人事とは思えず。
お辛いお気持ち、推察いたします。
◆ご遺族のコメント全文(転載)
娘の笑顔が大好きでした。
その笑顔に私たちは癒やされ、励まされ、幸せをもらってきました。
けれど、その笑顔は日に日に無くなっていき、あの日、変わり果てた姿となり二度と見ることができなくなってしまいました。
くりくり動く大きな瞳も、柔らかい頬も、いとおしい声も、何もかも私たちから奪われてしまいました。
「どんなつらいことがあっても舞台に立っている時は忘れられる」と娘は言っていました。
けれど、それを上回るつらさは、忘れられる量をはるかに超えていました。
宝塚歌劇団に入ったこと、何より、宙組に配属されたことがこの結果を招いたのです。
本当なら、今年の夏に退団する予定でしたが、突然の同期2人の退団の意向を知り、新人公演の長としての責任感から、来春に延期せざるを得なくなりました。
それは、娘自身のためではなく、自分が辞めたら1人になってしまう同期のため、そして下級生のためでした。
あの時「自分のことだけを考えなさい」と強く言って辞めさせるべきでした。
なぜそう言ってやらなかったのか、どれだけ後悔してもしきれません。
大劇場公演のお稽古が始まった8月半ば以降、娘の笑顔は日ごとに減ってつらく苦しそうな表情に変わっていきました。
それは、新人公演の責任者として押し付けられた膨大な仕事量により睡眠時間も取れず、その上、日に日に指導などという言葉は当てはまらない、強烈なパワハラを上級生から受けていたからです。
その時の娘の疲れ果てた姿が脳裏から離れません。
そばにいたのにもかかわらず、切羽詰まっていた娘を救えなかったというやりきれない思いに苛(さいな)まれ続けています。
劇団は、娘が何度も何度も真実を訴え、助けを求めたにもかかわらず、それを無視し捏造(ねつぞう)隠蔽(いんぺい)を繰り返しました。
心身共に疲れ果てた様子の娘に何度も「そんな所へ行かなくていい、もう辞めたらいい」と止めましたが、娘は「そんなことをしたら上級生に何を言われるか、何をされるか分からない、そんなことをしたらもう怖くて劇団には一生行けない」と涙を流しながら必死に訴えてきました。
25歳の若さで、生きる道を閉ざされ、奪われてしまった娘の苦しみ、そして、あの日どんな思いで劇団を後にしたのかと考えると、胸が張り裂けそうです。
私たちは、声を上げることもできず、ひたすら耐え、堪え、頑張り続けてきた娘に代わって、常軌を逸した長時間労働により、娘を極度の過労状態に置きながら、これを見て見ぬふりをしてきた劇団が、その責任を認め謝罪すること、そして指導などという言葉では言い逃れできないパワハラを行った上級生が、その責任を認め謝罪することを求めます。
▽ 痛ましい…
日テレNEWS24 速報(映像)
★川人博弁護士(1949年10月7日生/74歳)
※インタビュー当時は69歳