2023年5月4日(木)宝塚バウホールにて花組『舞姫』を観劇した感想つづき。
原作:森鷗外
脚色・演出:植田景子
主演:聖乃あすか(100期・研10)
ヒロイン:美羽愛(104期・研6)
キャスト別感想の続きです。
ネタバレ有なので、まだ知りたくない方はご注意下さい。
帆純まひろ(99期・研11)
相沢謙吉
次期総理候補・天方伯爵(一樹千尋)の秘書
太田豊太郎(聖乃あすか)の親友で、何くれとなく力を尽くす
罷免された豊太郎(聖乃)に仕事(新聞記事の翻訳)を世話したり。
豊太郎(聖乃)の帰国と身分回復の道筋をつけたり。
しんどい仕事(エリスに状況を告げ、手切れ金を渡す)まで…。
一度はエリートの道を閉ざされた豊太郎を助け、再起を手助け。
憎まれ役まで引き受けて。
ほとんど保護者。
さすが分担さん…!※
※99期と100期は音楽学校の本科・予科。
帆純さんは聖乃さんのお掃除指導者(分担)でした。
数年前から、分担制度はなくなったようですが。
分担制度には一長一短があり、短所を重く見ての判断。
とはいえ、萌えや物語を生み出す側面もあった分担制度。
例えば…
諏訪さき(99期)
極美慎(100期)
縣千(101期)
彩海せら(102期)
タイプの違う綺羅の連なり。
これが代々の分担さんとは…。
…目が眩むわ!
せのほの(帆純&聖乃)も綺羅の分担さん。
しかも、同組配属。
そして、別箱ワンツー。
しかも、帆純さんに学ラン、聖乃さんに軍服を着せる演目。
なにそれ、目の保養にも程があるぜ。
ありがとう、運命の女神さま…!
…というわけで。
相沢×豊太郎は、豊太郎×エリスに負けない萌えがあった。
(どんな勝負なの、それ?)
…話を『舞姫』感想に戻しますね。
(せのほの萌え脱線)
帆純さんが演じる相沢謙吉は、見るからに誠実。
裏表なく、陰ひなたなく、友の力になります。
豊太郎のことを、我が事として考え、行動します。
…ただ、どんなに親身でも第三者視点。
他者からみれば、愚かだったり、損でしかない道を選ぶ事もある。
デジタルなら、完全なバグ。
損得なら、まちがいなく損だろ的な。
でも、得を選んだら後悔がないかと言えば、そんな事はない。
「損だと予想できても、選ばずにいられなかった」
それでやはり損したら、それはそれで悔いる事もある。
でも、「己が選んだ」という一点で、気持ちに納まりをつけられたりする。
相沢は人間の機微について無知なのか?
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
敢えて、そこに蓋をしているのかもしれません。
それは彼がパワーエリートとして育成されたからかも。
上に立つ者の裁下は、及ぼす影響が大きい。
その為に、敢えて感情や細やかな機微を排除せざるを得ない。
情に流されず、決断する。
豊太郎もまた、相沢と同じ人種。
最終的に回帰していきます。
現在、私達は民主的な教育を受け、大多数が人道的な価値観をもっています。
その視点で読むと(観ると)『舞姫』は酷い話です。
ただ、当時の社会情勢を考えると、視える風景が一変。
当時、西洋列強は日本にとって大いなる脅威でした。
いろんな土地に進出し、現地人を子分(植民地化)にするジャイアン。
ひ弱なのび太(日本)は、出木杉くん(負けない日本)を目指していた…。
相沢謙吉は、出木杉くんにより近づいていた。
太田豊太郎は、己がまだまだのび太だと自覚。
自覚しつつも、決断できず、うじうじ。
(そして、原作では出木杉くんを逆恨み)
…という解釈もあるかな、と。
帆純まひろは、相沢謙吉の愛情深い人間性を押し出していました。
裏表なく、まっすぐで純粋な気質を感じます。
友の窮状を我が事として憂える。
さらに具体的に手を差し伸べる。
本当にいいひと。
ホンマ、出木杉くん。
そんな、絵に描いたようないい奴だから。
理想的なパワーエリートとして順調に育成された親友が眩しかったのかもしれません。
いい人だからこそ、モヤモヤする。
原作の太田豊太郎の心理、なんとなくわかる気がします。
帆純まひろは、ある意味「出来過ぎた良い人」を、とことん体現。
それは、帆純さん自身がとっても良い人だからなんだろうな。
…という気がします。
なんとなく。
∇キャスト別感想つづきます