原田諒のハラスメント問題が明らかになる以前のことですが。
日本経済新聞社と日経BPは、2022年12月5~10日、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みを共有・議論するイベント「日経SDGsフェス日本橋 2022 WINTER」を開催。
元・月組トップスター美園さくらがパネリストとして、ディスカッションに参加。
才女で知られるさくらちゃん。
宝塚音楽学校入学前は、数学検定で優秀な成績をおさめたとか。
在団中も通信教育を受ける勉強家。
トップ就任後はさすがに中断したそうですが。
退団後はメンタルヘルスに関心を持ち、慶應義塾大学の大学院にて就学中。
同時に、様々な社会活動にも参加し、インタビュー等にも応じています。
インプットしつつ、アウトプットし続けています。
リスキリング(学び直し)をスタートした頃、美園さんはこんな事を語っていました。
「大学院では『仮想空間を使った演技指導』の研究に取り組んでいます」
「演出家は必ずしも言葉で伝えるプロではないですから、緊張感のある稽古場で、時に演出家の言葉が刃となって役者を傷つけてしまう可能性もあります」
美園さんは特定の個人名・作品名を上げていません。
単独の作品や演出家を指していたとは限りません。
宝塚に限らず、演劇界の全般的な傾向を指しての発言との可能性も大きい。
さくらちゃんはメタ認知ができる人だと思われるので。
ただ、ワタシ個人の記憶として。
歌劇(2021年8月号)の「贈る言葉」と『ピガール狂騒曲』がふと浮かびました。
「初めて美園と稽古して感じたことは、セリフにも芝居にも癖があるし、とにかく頑固、頑固、頑固」
原田諒から美園さくらへ「贈る言葉」です。
『ピガール狂騒曲』のヒロインは才能溢れ、自立を目指す女性・コレット。
美園さくら本人のイメージともハマる役でしたが、原田諒視点では「なかなか役の軸を掴めない美園に苛立った」そうな。
意外だったので、印象に残っています。
『ピガール狂騒曲』は2020年 第75回文化庁芸術賞の演劇部門優秀賞・新人賞(脚本・演出の成果に対して)を受賞。
同作で、2021年 第28回読売演劇大賞 優秀演出家賞も受賞。
歌劇を読んだ時点では「それだけ力を入れてたって事かな…」と思いつつ、「それにしても、退団に向けてこれ?」と複雑な印象をもったものです。
原田と並び、『I AM FROM AUSTRIA』の演出家・齋藤吉正も、美園へ向けて言葉を贈っています。
「君は稀に見る『馬鹿者』でした」
「馬鹿が付くほどの正直者」
「馬鹿が付くほどのお人好し」
「そして、馬鹿が付くほどの努力家」
一瞬、えっ?!…と思わせておいてのオチ。
泣かせてくれます、齋藤先生。
「けっこう演出家泣かせの女優さんでした」とも書いておられましたが、さくらちゃんの長短を認めた上での言葉。
文章の流れから、エールと取れるニュアンスでした。
美園さくらは退団後、己の経験を生かすためにも、新たな学びと研究を続けています。
宝塚歌劇団に限らず、多くの場や組織でハラスメントは蔓延していると思います。
つらい経験を抱えながら生きてきた人の方が、圧倒的に多いはず。
傷や痛みを「今後に生かすため」学びを通して深め、「スキル」へと変換していく美園さくら。
もし彼女のワークショップや講演会があれば参加してみたい。
美園さくらの魂の言葉にふれてみたい。
原田諒は今回の件で「社会的抹殺」に近い扱いを受けるでしょう。
少なくとも、演出家生命は断たれたに近いかと。
もし宝塚歌劇団に所属していなければ。
もし数々の華やかな受賞歴がなければ。
ほとぼりが冷めれば、ふたたび演出家として活動できたかもしれません。
奇しくも、彼の豊かな才能と華やかな経歴により、キャリアの断絶を余儀なくされました。
演出家・原田諒は再起不能に近いと思われます。
ですが、人間・原田諒は生きています。
まだ41歳と若く、おそらく持病もなく。
選ばなければ、仕事も見つかるはず。
時間はかかると思いますが、今回の件が彼の中で変質し、何らかの糧になっていきますように。
まだ命はあるのですから。
ハラスメント被害者への謝罪はぜひしてほしいところ。
ただ、人によっては「思い出したくない」「顔も見たくない」と思っているかもしれず。
一人一人、デリケートな個別対応が望まれるかと。
そこまで出来ないだろうな、原田諒には。
阪急が間に入り、聴き取り調査をしていくしかないでしょう。
阪急さん、頼んまっせ。
∇それでも生きて行く