2021年9月4日(土)は歯科の定期メンテナンス後、宝塚へ。
8/31(火)雪組『CITY HUNTER』新人公演
9/02(木)花組『銀ちゃんの恋』
9/04(土)雪組『CITY HUNTER』本公演
一週間のうち3日も宝塚観劇できるとは、なんという幸せ者でしょう。
あまり調子に乗って、浮かれてはいかんのですが。
職域接種2回目完了から1ヶ月以上経過してるので、抗体も出来上がってるはず。
とはいえ今後も、感染予防を心掛けてまいります。
…で、お恥ずかしいことに。
どの感想も途中で途切れてます、とほほ。
書きたい事は山ほどあれど、追いつかない状態。
それはそれで幸せだ…!
…という訳で、まずはこちらから。
花組『銀ちゃんの恋』の感想です。
ネタバレを含みますので、まだ知りたくない人は読まないでね…。
★水美舞斗(95期・研13)
映画スター☆倉丘銀四郎役。
妊娠した恋人・小夏を舎弟のヤスに押しつける。
とんでもねぇ自己チュー野郎で、とんでもねぇ私服センス。
それでも、なんだか憎めないキャラクター。
…なんて、どうやって創るん?
マイティ、むしろ対照的なキャラじゃね?
ヤスの方が無理なくハマるよね?
…と思ってたんです、正直。
ところが、なんともチャーミングな銀ちゃんがそこに。
たまに驚くほど高くまっすぐ足を上げる等、マイティ独自の味も。
ワガママ言う姿も、泣き言もらす姿も、愛しい。
厚かましくて、図々しいのに、傷つきやすくて繊細。
愛すべき悪童ですな。
哀愁と色香を漂わせるのは反則。
コマッタちゃんのくせにぃ~。
新撰組や博徒モノの映画撮影との設定での殺陣。
これが何とも鮮やか。
身体能力の高さを生かしてました。
身体能力といえば、銀ちゃんが慣れぬスポーツに手を出す場面があります。
若い恋人・朋子に合わせて始めたインライン・スケート。
恐る恐る手を引いてもらって滑るマイティ。
「顔で滑るんだよ!」と言い放つ銀ちゃん。
大きな拍手が沸きました。
へっぴり腰にするの、苦労したろうなぁ。
すいすい滑れそうだものね、マイティ。
★星空美咲(105期・研3)
一世を風靡した美人女優・水原小夏役。
いまや人気は凋落。
銀四郎の子を身籠るも、捨てられる。
スキャンダル回避のため、己を捨てた銀四郎を憎み切れない。
憎むどころか、新しい彼女と銀四郎の仲をとりなす情の深い女性。
小夏は、同性から見ていると「都合のいい女」扱いされています。
正直、『蒲田行進曲』は苦手でして。
意味不明だなぁ…と思ってきました。
今も『蒲田行進曲』は苦手です。
でも、花組の『銀ちゃんの恋』は好きになりました。
肝は小夏。
小夏に共感できるかどうか。
本作の鍵を握る存在だと思います。
特に女性は、小夏の気持ちに「なんかわかる…」と感じられないと、置いてきぼりになりそう。
…という訳で、小夏を演じた星空美咲。
星空美咲はまず、すらりとした佇まいに「美人女優」という説得力がありました。
小夏は最初、身勝手な銀四郎に振り回され、ほぼ言いなり。
これは想像ですが、おそらく小夏は銀四郎が初めての彼氏なのでしょう。
あるいは、似たような身勝手な男とばかり付き合ってきたのかもしれませんね。
どこか「男はこんなもん」と、諦めという名の包容力を感じます。
銀四郎に頼まれれば、新しい恋人(朋子)に『銀ちゃんのトリセツ(取扱説明書)』を伝授したり。
お人好し…と言えなくもないけれど、うーん?
おそらく一種のパブロフの犬なんじゃないかな。
「銀四郎のワガママには応えてやらねば」という条件反射。
ヤスや、ヤスの身内(特に母)とふれる内に、この条件反射が薄れていきます。
古風な言い方をすれば「傷物」の己。
(この表現、現代では使わない方が良いと思いつつ…)
そんな己を大切に扱ってくれる人との出会い。
傷ついた小夏を、その傷ごと受け容れてくれる人との交流。
そのふれあいが、小夏を癒していきます。
小夏が妊娠しているのは息子の子ではない…と直観するヤスの母親。
「あの子が男として魅力がない事は私にもわかる」
「それでも、自分のお腹を痛めて生んだ息子」
「どうかあの子のそばにいてほしい」
しまいには、小夏に頭を下げて頼むヤス母。
小夏ならずとも、思い出すだけで胸が苦しいですよ…。
銀四郎に都合よく利用されているのに、誠実で優しいヤス。
そんなヤスを育てた愛情深いヤス母。
「裏切れない」と思う小夏の切実な気持ち。
これはもう、人間として裏切れない。
たとえ銀四郎への恋情が残っていても。
小夏にとって、ヤスは大切な人になっていたのだなあ…。
小夏は「女は傍にいてくれる人がいい。銀ちゃんは傍にいてくれない」と言う場面がありますが、これは距離的な意味だけじゃないと思う。
気持ちの距離や温度じゃないかな。
むしろ、こちらの方が大きいと思う。
気が向いた時だけ可愛がる、愛玩犬のような愛し方。
そうじゃなくて、毎日の生活を共に積み重ねていく。
家族になりたいのだ、と。
ただ好きで一緒に暮らしていた頃の小夏から、脱皮しましたね。
人は大切に扱われると、自尊心が回復し、適切な判断力が備わるのでしょうね。
そして、銀四郎を憎まず恨まず、はっきり拒絶できたのは、ヤスに愛され守られている安心感ゆえかなと。
小夏の心情変化が自然に沁み込んできて、気がつけば共感できていました。
まだ研3で実年齢も若い星空さん。
しかしながら、音楽学校時代の文化祭から、表現力の片鱗は見てとれていました。
今年初頭、聖乃あすか初主演バウ公演『Prince of Roses』でヒロインを演じた際も、可憐で凛としたヒロインを演じた星空さん。
バウ公演当時に比べ、さらに大幅な成長を遂げています。
まず、発声。
落ち着いた柔らかい声で、滑舌も良く、耳に優しい。
小夏は大人の女性。
年齢相応の声のトーンを出しています。
歌唱は安定し、歌にのせた感情表現も豊か。
上手いだけでなく、小夏の気持ちを運んでくれる歌声です。
ダンスシーンもありますが、バレエを習っていなかった事が嘘みたいな優雅さ。
受験準備からバレエを始めた人は他にもいますが、星空さんは驚きのクオリティ。
努力家で、研究熱心なのだろうと思います。
主演やヒロインを務める上で、最も重要な要素は『華』でしょう。
本公演では、ショー『Cool Beast』で通し役がついたものの、芝居では役名や台詞なし。
ですが、ロケットでも群衆芝居でも、出てきたら判ります。
これは初舞台のときから。
発光してるから、美咲ちゃん。
『アウグストゥス』の群衆芝居でも、美咲ちゃんはごく控えめでした。
周囲の人に腕が当たらぬよう、気を付けていたんでしょうね。
表情は細かく作り込んでいました。
メインキャストが登場したり、話の流れが変わるたび、表情が変化してましたね。
動きは控えめですし、大袈裟な芝居は一切していません。
でも、感情の動きが伝わってきました。
お化粧も大人っぽく、すっきりした感じにまとめてましたね。
以上、『アウグストゥス』のお話でした。
(話が逸れて、ごめんなさい)
『銀恋』公演の最下級生なので、ヒロインとしての稽古以外にも、様々な雑務があるはず。
宝塚は上下関係が厳しいので、特別扱いはないのでは?
そうだとしたら、どれほどハードな毎日を送ってきた事か…と思います。
ヒロインは下級生であるケースは少なくないけれど、さすがに2作続けて「ヒロインで最下級生」という事例はめったにないでしょうから。
すばらしい舞台を魅せてくれる星空さん、大切に育ててほしい逸材です。
★飛龍つかさ(98期・研10)
大部屋俳優・平岡安次(ヤス)
銀ちゃんを尊敬し、小夏に憧れている。
私の場合、『蒲田行進曲』の主要登場人物で唯一共感できたのがヤスです。
「大言壮語を吐くけど、結構小心者」の銀ちゃんを敬愛するヤス。
どれほど都合よく、粗末に扱われようが、忠犬であり続けるヤス。
ヤスは一種の催眠状態に陥っているとも思います。
自分にないモノを持っている(ように見える)銀四郎を見上げる気持ち。
わかる、わかる、わかる…。
客観的に見れば、銀四郎よりヤスの方が実のある人間だと思います。
ヤスの魅力がわかるのは、痛みや傷を負った人間でしょう。
小夏のような。
人間って大きな声の人間に騙されやすいんです。
誰しも迷いがあるから、誰かに言い切ってほしいんです。
でも、大きな声で言い切る人間は、何も考えてないから断言できるのかもしれない。
実際、そういう事は多いように感じます。
ヤスは銀ちゃんの堂々とした様子に心を掴まれています。
スーパーマンのような存在が現れて、一刀両断すべて解決!みたいな。
この人についていけば間違いない!…と信じたい気持ち。
一種の依存ですね。
誰かに、何かにすがりたい。
「これさえあれば大丈夫」と安心したい。
そういう気持ちを抱く心理はとてもわかるし、それは責められません。
私自身、そういう気持ちを抱いてきました。
残念ながら、すがれる相手がいないので、自分で考えて決めていかねばなりませんが。
自分で決断すれば、誰のせいにもできません。
失敗も後悔も、己で引き受けねばなりません。
ヤスは最初、銀四郎に押し付けられる形で小夏と暮らし始めました。
小夏は銀四郎からの大切な預かりものでした。
それが、小夏はヤスの良さ・魅力をキャッチしてくれました。
小夏が心を開き、身を寄せてきたこと。
ヤスからすれば、それは信じ難いことだったでしょう。
銀四郎から再び言い寄られても、小夏はヤスを選びます。
銀四郎のことは好きだが、ヤッさんを愛し始めている。
ヤスや、ヤスの母を裏切れない…と。
小夏の慟哭は、未練や迷いの末、やはりヤスが大切だと見極めた回答です。
でも、ヤスはその気持ちを聴いても、信じきれなかったのでしょう。
それは「自分は小夏に愛される価値がない」と、己を過小評価しているから。
卑下しているから。
自尊心が低い人は、己のみならず、己を愛してくれる人まで淋しくさせます。
相手の愛や気持ちを信じられないのですから。
気持ちを信じてもらえないって淋しいよね。
ヤスを見ていて苦しくなるのは、そこに自分を投影するからだと思います。
私も自尊心も、自己肯定感も低くて。
自覚はあるので、今はそれで良しとしておきます。
ヤスは単なる良い人ではありません。
それこそ、わかりづらい「こじらせ青年」の一典型だと思います。
「こじらせ男子」といえば、ワガママで自己チューだったり、社会性がない印象があると思いますが、現実にはヤスのような「こじらせ」も多いんじゃないかな。
飛龍つかさが演じたヤスは、生きづらさに苦しむ繊細な青年を体現していました。
つくづく、『銀ちゃんの恋』の主要キャストを魅力的に演じるのは、至難の業だと思います。
水美舞斗
星空美咲
飛龍つかさ
三名とも、どうしようもない人間の哀しさ、寂しさ、愛おしさを滲ませていました。
深みのある演技は、その人間になり切っているように見えました。
∇銀ちゃんの恋メインキャストすごいぜ