6月に入り、月組『桜嵐記/Dream Chaser』もますます磨き込まれています。
芝居とショー、それぞれ満足度が高く、バランスが良い。
最後の最後に、こんな作品を上演されたら、色んな意味で惜しまれてならないでしょう。
すごく良い作品、生徒さんの魅力を最大限に惹きだす作品が退団作になること貴重です。
それゆえに、卒業を惜しむ気持ちも強まって、それはそれで切ないかもしれませんね。
『月雲の皇子』も珠城さんが超絶ステキでしたが、その再来とも言うべきレベルの作品と役ですものね、『桜嵐記』は。
珠城りょうの『心の相手役』が鳳月杏(と輝月ゆうま)だとしたら、『魂の相手役』は上田久美子先生かもしれませんね。
上田久美子先生と組みたがるジェンヌさん、めっちゃ多そうですが。
さて、キャスト別感想、続けて行きたいと思います。
★海乃美月(97期・研11)
楠木正時(鳳月杏)の嫁・百合役。
夫に惚れぬいている百合。
実家の父が北朝に寝返り、正時から離縁され、自死。
鳳月正時が百合を離縁したのは、愛情ゆえでしょう。
100%敗北確実な己より、北朝方となった実家の方が安全との判断。
台詞や態度には出てきませんが、その深い愛情が伝わってきます。
上田久美子先生の脚本力と、鳳月杏と海乃美月の芝居力。
海ちゃんはまた、自己犠牲を貫く役がハマるんですな。
『鳳凰伝』のタマラは、とりわけ胸打たれた事を思い出しました。
本作で、月城かなととの絡みが無かった事も上田先生の好判断。
次作からがっつり組む相手の上、すでに何作もがっつり組んでいますから。
★白雪さち花(91期・研17)
公家の女・仲子役、公達・四条隆資役。
仲子は、北朝の武将・高師直(紫門ゆりや)に侍っています。
師直から「公家の女とは思えぬ」と評されるほど、目端の利く女性。
さち花さんは人物の個性をふくらませ、強調させるのが得意。
仲子はそんなに大きな脇役でもないのに、印象に残ります。
声質にも特徴があり、一言発するだけでさち花さんと判ります。
芝居の月組を支える名バイプレイヤーのお一人です。
★千海華蘭(92期・研16)
弁内侍(美園さくら)の従者・ジンベエ役。
少額の銭で雇われた輿持ちの一人。
楠木正行(珠城りょう)の人柄に惚れ込み、仕官を申し出る。
華蘭ちゃんの芸達者ぶりには毎回脱帽します。
役の人間味を、これでもか!というほど絞り出し、旨味を濃縮する千海さん。
ピガール狂騒曲のロートレックしかり。
桜嵐記のジンベエしかり。
台本に書かれた台詞から、体温と血肉を得た人物を創り上げる千海さん。
ロートレックも、ジンベエも、実在していたら(ロートレックは実在の人物ではありますが)友達になりたい。
千海さんのお人柄と重なり合い、さらに重厚な味わいを醸し出しているのでしょう。
華蘭ちゃんは男役としては小柄ですが、踊ればシャキシャキだし、演じればええ男やし、魅力的な男役さんだとしみじみ思います。
ショー『Dream chaser』で、珠城さんと別れを惜しむ7名の男役の中に華蘭ちゃんが入っていて、嬉しかった…!
珠城りょうを支え、月組を支えてきた華蘭ちゃん。
月城さんの事もよろしくお願いします。
(…って、私の立ち位置どこやねん?)
▽今日は新公復活の日