★上田久美子
芝居『桜嵐記』の作者・演出家。
観客からも、タカラジェンヌからも、引っ張りだこの人気演出家。
いまや、宝塚歌劇団の脚本・演出家のTOP of TOPといえる存在かと。
雪組トップコンビ退団作品『fff』に続き、月組トップコンビ退団作を手掛ける超多忙ぶり。
どちらの作品にも通底しているのは、「社会風刺」と「心の変遷」かと。
様々なキャストを通じ、それぞれの立場から疑問を提示し、アプローチを仕掛けています。
たとえ恋愛物が主軸でも、その背景に横たわる社会や、その問題点を糾弾する姿勢は健在。
たしかに個人の力は非力です。
それでも、社会を構成する一人一人の在り方が、心の持ち方が重要なのも事実。
エンターティンメントを通して、社会へ向ける意識、ひいては己の生き方を見つめ直すキッカケをくれる作家です。
「宝塚作品を観てタカラジェンヌを目指した」話はよく聞きますが、これからは宝塚を観て、より幅広い職業を目指したり、育児に対する意識を変えたり、仕事の進め方を見直したり…という人も増えてくるかもしれませんね。
上田久美子の作品は、娯楽の皮を被った講義だから。
…という見方もできるかと。
哲学的な作風も特長の一つで、そこに良い意味での青さを感じます。
変に落ち着かず、ずっと青い気炎を吐き続けてほしい作家さんです。
宝塚の枠を取り払った実験的な作品に取り組む気概も旺盛な上田先生。
(例:月組2018年ショー『BADDY』、宙組2020年『FLYING SAPA』)
同時に、古き佳き先達の作品を掘り起こし、再演する取組も。
(例:菊田一夫『霧深きエルベのほとり』2019年星組にて再演)
温故知新と反骨精神を併せ持つ、アヴァンギャルドな上田くーみん先生です。
(くーみん先生とお呼びしても良いのだろうか…?ドキドキ)
『fff』、『桜嵐記』とも、一人でも多くの組子へ役を付ける配慮をされている上田先生。
香盤を見て、役名がつき、一言でも台詞があれば、どれほど励みになるでしょう。
組子への愛が深い久美子。
(すみません、親父ギャグかよ)
シリアスな話の中にも、お笑い要素を投入する上田先生。
物語に緩急をつけて下さる、観る者への思いやり。
骨太な物語を描きながら、繊細な配慮がここかしこに見受けられました。
★中村暁
ショー『Dream Chaser』
中村暁先生のショー作品といえば、宙組2017年『VIVA!FESTA!』が浮かびます。
ソーラン節がね…「ソーラン、そーら組♪」がね…!
シトラスの風と同じく、宙組生が一丸となれる楽曲ですね。
月組では2014年の『CRYSTAL TAKARAZUKA -イメージの結晶-』を担当。
7年ぶりの登板です。
『Dream Chaser』は基本の流れを押さえた、王道の宝塚ショーでした。
もともと珠城さんは大階段の黒燕尾でも、ご自分だけビジュー付けたりは、殆どされない方でした。
今回も衣装は全員同じ黒燕尾。
トップコンビ退団色をあまり押し出さず、レギュラーなショーだな…二番手や次期トップコンビへの引継要素もないな…と思わせておいて、最後の最後にこう来たか…!と。
引継場面としては、私が知る限り、最も好きかもしれない。
もちろん全員という訳にはいかないけれど、二番手のみならず、ご縁の深い方々と可能な限りのお別れを。
るうさん(光月るう)とのやり取り、新しい。
…てか、普段の関係性が出てて、微笑ましい。
(珠城さんの額の汗を拭いてあげてたの)
(奥さんか、お母さんみたい)
(家族ですな)
珠城りょう強火担のあの人もいます。
いやもう、これは本当に嬉しかった。
普通なら、出来ないよ。
二番手でも、三番手でもなく。
そもそも、番手はついてないのだから。
でも、ファン代表だし、本当に昔から…音楽学校から本科予科の関係ですものね。
本当に憎い。
心憎いわ。
思い出しても、ウルウルきます。
ありがとうございます、中村先生…!!
エトワールの人選も、「最後に花を持たせた」のかな…と。
なんとなくですが、あまりサヨナラを押し出したくない、と珠城さんが希望したような気がするんですね、本当になんとなくですが。
珠城さんの性分として、そうではないかな、と。
さよなら色は淡いのに、押さえるべきところは押さえる。
中村暁先生の愛を感じました。
∇初日感想まだ続きます