2020年11月8日(日)宙組『アナスタシア』を観劇しました。
 
感想を一言にまとめると「面白かった」です。
 
シンプルに見応え・聴き応えがありました。
 
暗く重い背景を持ちながら、おとぎ話のような物語。
 
シンデレラストーリーの基本は、不幸のどん底からの大逆転。
『アナスタシア』は、まさしくシンデレラ・ストーリーでした。
 
それでは、印象に残った事をパピパピ書いていきます。
ネタバレを含みますので、まだ知りたくない場合はご注意下さいね。
 
 
★潤色・演出 稲葉太地
 
稲葉先生は2017年、ブロードウェイで『アナスタシア』を観劇されたそうです。
 
真風涼帆トップ・プレお披露目『WEST SIDE STORY』の打合せのため、N.Y.を訪れたその日に。
3日間という強行スケジュールで、よくぞ…。
 
ショー作家のイメージが強い稲葉太地先生が潤色・演出を担当。
稲葉先生は才能溢れるエンターティンメント作家。
 
あくまでも「観客サイド」の姿勢を崩さず、その時、その時の作品のテーマに沿った彩色をする演出家であり、構成作家だと思います。
 
宝塚の演出家は、脚本家や構成作家を兼ねていますから。
稲葉先生は優れた構成作家です。
『宝塚幻想曲(2014花組)』や、『Delight Holiday』は、その才能が遺憾なく発揮されていました。
 
海外ミュージカルを宝塚風にアレンジする過程にも、ばっちり生かされていました。
 
気になるのは、マリア皇太后(寿つかさ)がアナスタシアだと確信するに至るやりとり。
海外作品にありがちな、力技で捻じ込むように感じられました。
あそこはもう少し、日本人の感覚に寄せて頂けると嬉しいです。
 
海外ミュージカルの潤色といえば、小池修一郎先生の得意分野。
『アナスタシア』を拝見する限りではありますが、頼もしい後継者の誕生を感じました。
 
 
★真風涼帆 92期・研15
 
主人公・ディミトリ役。
幼くして孤児となり、たくましく生き抜いてきた詐欺師の青年。
アーニャ(星風まどか)を皇女アナスタシアに仕立て上げ、報奨金をせしめようと目論む。
 
前作『FLYING SAPA』で、アンニュイで屈折した青年を演じた真風さん。
大人の男の色香がダダ洩れでしたね。
 
本作は詐欺師といいながら、爽やかな好青年の風が吹き抜けるディミトリ。
若々しさ、爽やかさが、今までになく増したような。
 
本人比ではありますが、滑舌や発声がクリアになったような。
声質は今も籠もりがちですが、聴こえやすい発声でした。
そのためか、歌唱も本人比アップ。
 
トップスターとして脂がのってきた円熟期にさしかかった真風さんですが、瑞々しい魅力を発揮していました。
 
「本作がトップお披露目」と言われたら納得しかねない新鮮さでしたよ。
お披露目の頃より安定感が増し、危なげがないけど。
 
第一、トップお披露目作『天は赤い河のほとり』を観たんですけどね。
あれは…観ていて、心の中で「ひゃあぁぁぁぁ~~~(大照)」でしたね。
 
本作フィナーレで、宙娘をはべらかす姿は、登場した瞬間、心の中で
「ひぃぃぃぃぃぃ~~~(激照)」
 
やっぱり大人の男でした、真風っち。
ディミトリさんから吹いてくる新緑の風に目を眩まされていました。
 
 
★星風まどか 100期・研7
 
ヒロイン・アーニャ(アナスタシア)
記憶喪失だが、「パリを目指せ」という内なる声に従い、広大な大陸を歩いて移動。
出国許可証を求めてディミトリを訪ね、彼の策略に加担する事になる。
 
月組『I AM FROM AUSTRIA』が美園さくらありきだと感じたように、
宙組『アナスタシア』は星風まどかありきだと感じさせる舞台姿でした。
 
舞台技術は、歌唱・芝居・ダンスと全方位高値安定。
貴重な娘役です。
 
革命後の混乱が続き、物資不足の中、独力で生き抜いてきたアーニャ。
掃除婦や皿洗いなど、その時々に就けた仕事で地道に稼ぎながら、旅費を工面しています。
 
精神力に加え、腕っぷしも強い。
護身のため、身につけたとの事。
可憐でいたいけな見た目から、想像もつかない「自立した強い女性」です。
 
安定した演技力と歌唱力に加え、真風涼帆とのデュエット相性が高まったような。
 
まどかちゃんはトップ娘役に就任以来、
「真風さんに合わせよう」
「真風さんを立てよう」
と努めてきたことでしょう。
 
それは、娘役として美しい姿勢だと思います。
 
ただ、あまりにも真摯に取り組むあまり、ややもすれば己の個性や能力を抑えているように、私の耳目には映っていました。
 
それが本作では、真風涼帆と対等に向かい合い、溜め込んできた力を放出しているように見えました。
 
上田久美子作・演出の『FLYING SAPA』でも、記憶喪失の娘を演じた星風まどか。
 
『総統01』として ポルンカ(水星)を統べる権力者の娘であり、後継者という役どころ。
 
SAPAでは、己を追い込む役と呼応するかのようにストイックに役と向き合っていたように見えました。
 
SAPAのミレナと、アナスタシアのアーニャ。
それぞれ、「幼い頃の記憶を喪失」、「統治者の娘」など、奇しくもリンクしています。
 
それでいて、観ていて受ける印象は、それぞれで異なります。
要素は類似していても、全くの別人格として成立させています。
 
アーニャは頼る者もいない天涯孤独の身で、記憶も失い、日々の生活に四苦八苦している身ながら、誰に対しても怯まず、堂々と渡り合います。
 
この肝の据わり方、自尊心、風格は、皇女として培われたもの。
 
そう思わせる説得力がありました。
 
 
▽まだまだ語り足りぬ…!

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