2019年10月22日(火)宝塚大劇場にて、月組『I AM FROM AUSTRIA』新人公演が上演されました。

『IAFA』は日本初演の海外ミュージカルで、難曲揃い。
エリザベート、ファントム並みに出演者の歌唱力が試される作品です。

新人公演は初主演の二人(英かおと、白河りり)
予想をはるかに上回る、高い歌唱力で舞台をリードしました。
芝居も上手いけれど、コンサートを開いてほしいレベルでした。

とりわけ白河りりのヒロイン抜擢は驚いた方も多いでしょう。
彼女を研1から注目していた私でさえ驚きましたから。
ノーマークの人は多かったはず。

白河りりは本公演でも外箱でも、ほとんど台詞がありませんでした。
中卒一発合格組なので、研1の時は新人公演不参加。
…こう考えると、注目される機会はあまりなさそうですね。

ただ、視点を変えれば、りりちゃんを認識する機会はちょこちょこありました。
阪急交通社の抽選のお手伝いや、中山寺の節分会で見る機会はありました。
Wトリオ登板率も高く、昨年のタカスペはコーラスとして参加。

正統派ヒロインとしての佇まいは、麻乃佳世・花總まりの後継者。
可憐で清楚、さらに大人の女性としても通用する事を証明しました。

しかも、歌える。
歌えるどころじゃないですね。
透明感あふれる美しい声は、技術レベルに関係なく耳に心地よい。
技巧というより…なんと申しますか、自由自在。
どこへでも飛んでいけそうな、天使の歌声でした。

白河りりは次代の宝塚を担う歌姫。
すごい宝物を発掘しましたね、月組さん。

英かおとは取材に対して、珠城りょうから、こんな言葉をもらったそうです。

珠城「上手く見せようと思わないこと。完璧にできなくて当然。(観客は)英の本気が観たいんだから」

この言葉は、霧矢大夢さんから当時研2だった珠城さん自身が掛けられた言葉だそうです。

…という事は『ラストプレイ』新人公演で、当時2番手の霧矢さんのお役に抜擢された時ですね?(主演:瀬奈じゅん/新公主演:明日海りお)

雪担のMちゃん、教えてくれてありがとうございます。
ええ言葉や…。

…って、わたしの前置き、長すぎますね(^◇^;)。
すみません、ほんまに。
研1から(心の中で)応援してた子が予期せぬ逸材だったと知り、驚きを通り越して脳内お祭りマンボです。

(私にとって、お祭りマンボはジュニア時代の KinKi Kids の持ち歌)
(…ですが、元々は昭和の歌姫・美空ひばり様のお歌ですね)
(歌姫つながり…!)

小さい、小さいと思っていた生徒さんの成長を見守ること。
これもまた宝塚の味わい方であり、魅力なんですよね。
今更ですが、あらためて実感しましたよ。


★礼華はる(101期・研5)

リチャード・ラッティンガー
本役:月城かなと(95期・研11)

ぱる君を見ての第一印象は「イケメンモデル」
背が高く(178cm)、シュッとしていて、端正な顔立ち。
ちょっと待って、どこに隠れてた?(別に隠れてない)
ビジュアルは、メンズモデル(しかも、顔に栄養行き渡ってる系)

役作りも、本役(月城)さんに寄せまくってました。
イケメンがイケメンに似せる構図。
想像するだに、良き眺め…!
月城リチャードにも言えますが、マネージャーより俳優になれば良いのに…という思いがかすめます。
それじゃ物語として成立しないけれど。
二番手が演じる悪役は美味しい役どころ。
東京では、ねちっこさ、腹黒さを更に追究してみてほしいなぁ。
肚黒い美形って、たまりませんね。

歌は決して下手ではないけれど、周りのメインキャスト陣の歌唱レベルが高いので、相対的に「お歌がんばれ」と思った人はいたことでしょう。
私がそうでした、ごめんね。
周りが上手い分、一緒にお稽古する内につられて歌唱レベルが上がっていくかもしれませんね。


★大楠てら(102期・研4)

ヴォルフガング・エードラー(ジョージの父)
本役:鳳月 杏(92期・研14)

てら君はなんと身長180cm。
パリコレモデルとして通用しそう。
ぱる君といい、いつのまに宙組化したんだ、月組よ?

口髭をつけてスーツをかっちり着込んだ、ロマンスグレー。
もの柔らかでソフトな風情を漂わせた紳士。
大柄でも、圧迫感がありません。
ちょっと優柔不断だけれど、妻を愛し、息子を可愛がる優しい父親。
その人柄まで、ふんわり伝わってきました。

幕が開いた直後、エルフィー(風間柚乃)がヴォルフガング(大楠)の台詞を飛ばして話し始め、台詞が重なりかけました。

その時、とっさに口を閉ざしたてら君。
そのまま喋り続けた風間くん、台詞の合間に「ごめんなさいね」とエルフィーのキャラのまま謝罪。

とっさに黙ったてら君も、物語の流れを止めずに謝罪した風間くんも、それぞれ好判断。

立て板に水のように喋り続けるエルフィーが黙っちゃうなんて、不自然ですものね。

対して、ヴォルフガングは相手に合わせ、譲るタイプ。
それぞれのキャラクターを生かした、とっさのフォローでした。

アクシデントにどう対処するかも、生の舞台の魅力ですね。
風間柚乃の舞台度胸はつねづね感じていたし、さすがだなと。
大楠てら君も役の「人物像」に合わせた、最善の対応だったと思います。

歌は充分な声量があり、声が綺麗に伸びていました。
ヴォルフガングのソロは、途中で男声としてはとんでもなく高い音を出す箇所があります。
そこも本役さん同様、上手に裏声を用いて対応。

今回は優しいパパさんの役でしたが、もっと押し出しの強い役を演じたら、どうなるんだろう?
上背もあるから、すんごい迫力かも。
今後が楽しみな下級生さんです。


★蘭世恵翔(102期・研4)

ロミー・エードラー(ジョージの母、ホテル経営者)
本役:海乃美月(97期・研9)

娘役転向後、初めての新人公演。
まずは転向成功おめでとうございます。
美人の女性社長であり、母親。
可愛い系のお顔立ちですが、知的でシャープな雰囲気を醸し出していました。

歌は得意ですよね。
エリザベート(2018年)では、本公演で少年ルドルフ、新人公演でマダム・ヴォルフを好演。
どちらも歌う場面があり、歌いこなしていました。

『IAFA』でもロミーがメインの楽曲があり、大勢に囲まれて歌って踊って。
元男役の迫力も感じられました。

しっかりした声で滑舌も良く、台詞も聴き取りやすかったです。
演技も、本役さんに寄せていましたね。
海ちゃんのロミーに勝るとも劣らない女丈夫っぷりを見せてくれました。


★風間柚乃(100期・研6)  

エルフィー・シュラット(コンシェルジュ)
本役:光月るう(88期・研18)

幕が開いて、すぐ登場するエルフィー風間。
オカマ感ゼロ、おばちゃん感MAX。
さすが研16…!(まだ研6です)

今に始まった事じゃないけど、ベテラン感がすごい。
美人なのに美人な感じがしないのも、ある意味すごい。  
(磯野貴理子や島崎和歌子の路線?)

主役二人が正統派ラブロマンスを突き進んでいる分、遊びやお笑いパートは風間くんがリードしていました。

フェリックス(彩音星凪)にワルツのお稽古をつけている姿を見て、
「フェリックス(本役:風間)が、フェリックス(彩音)と踊ってる…」
とシュールな面白さにゾクゾクした人は、私だけではない筈。

ジョージ(英かおと)とエマ(白河りり)がホテルを抜け出し、炊き出しに向かう場面では、ウィーンの男としてアルバイト。
薄暗い中でも、風間くんだ?…と、なんとなく分かりました。
存在感がありますね。

風間くんは今現在、トップスター候補路線をひた走っていますが、仮に娘役でも、別格路線でも、どんな道筋であろうと「存在感のある演者」になっていた事でしょう。

トップになろうが、なるまいが。
親族に有名人がいても、いなくても。
風間柚乃は独自の輝きを放つ、まぶしい星に成長したな…と感じました。
いえ、月組ですけどね?


▽月組新公、見応えありまくり!(感想は続きます)
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