星組全国ツアー公演『アルジェの男』…琴ちゃんの挨拶やアドリブにツボったあまり、そちらのご紹介を優先しておりました。

ようやくキャスト別の感想ですが、これまたズルズル続いております。
では、続きです。


★万里柚美(70期・研36)

パリ社交界の華 マリア・シャルドンヌ役。
彼女のサロンは政財界のお歴々が集まる為、強い影響力を有する。
姪のアナ・ベル(盲目で、両親もいない…?)を不憫に思っている。
アナ・ベルの慕情を察し、ジュリアンと結びつけようとする。

万里組長は「生徒、ジェンヌ」というより、「女優」という印象を受けます。
シャルドンヌは、ポンパドゥール夫人の再来のようなイメージでしょうか。
社交界を通して、国家の要職に就く男たちを陰で牛耳る的な。
それも、柔らかでかぐわしい上品な色香でもって。

でも、男性にすがったり、おもねる雰囲気は一切ないんですよね。
彼女に惹かれた男たちが喜んでかしずく、まさに社交界の女王。

毅然として貫禄すら漂わせていますが、姪の事となると心配性に。
期せずして、ジュリアンの計略(出世計画)に加担する事になってしまうという…。

己の事なら、冷静に対処できるのに、姪の事となると目が曇る。
そんな母性溢れる側面が、シャルドンヌの魅力でもあります。

それは演技なんですが、組子の母か長姉のような万里組長ご自身が、見え隠れしているのかもしれませんね。

余談になりますが、組長が 70期生と知り、驚きました。
何度も計算間違いしてないか、確認しましたよ。
ジェンヌさんに対して今更ですが、万里さん、若々しいですね。


★礼  真琴(95期・研11)

ジュリアン・クレールは、フランスの植民地アルジェリアで生まれ育った孤児。

不良仲間のジャック(愛月ひかる)にそそのかされ、ボランジュ提督の財布をする賭けに出るも失敗。
なぜか提督に見込まれ、提督の元で働く事に。
まもなく、提督と共にパリへ。

5年の時を経て、チンピラから紳士へ変身した(ように見える)ジュリアン。
提督の秘書官として勤務し、社交界にも進出。
社会的成功をめざし、平然と女性を踏み台にする冷酷な一面を見せます。

やがて、サビーヌ(音波みのり)と再会し、愛を知ることになりますが…。

若き野心家ジュリアンを、琴ちゃんが熱く演じています。

「男役としては小柄」と評される礼真琴ですが、舞台に登場した印象は『大きい』

例えば、ジャック(愛月ひかる)と並ぶとたしかに身長差は見て取れます。

…が、存在感は誰にも負けていません。

礼真琴は真ん中に立つ人だ、と思いました。

なんと言っても、声が良いですね。
あんなに艶がある低音ボイスは、劇団内でも稀有でしょう。

柚希礼音、明日海りお、望海風斗。

男役として圧倒的な人気を誇る彼らの共通点は『低音イケメンボイス』

琴ちゃんも、 彼らに負けず劣らずの声の持ち主。

歌でも、お芝居でも、声は重要です。ほんまに。

社会の底辺で生まれ、愛を知らずに育ったジュリアン。

のし上がってやる!
見返してやる!

…という気持ちが強く、目的の為なら手段を選びません。

パリに渡って五年経ち、すっかり紳士になったと思いきや。

提督の娘・エリザベート(桜庭舞)への振る舞いは、ところどころ粗野。

ダンスに誘う時など、おしゃべりに夢中なエリザベートの腕をグイ、と掴んだり。

しかも、目が醒め切ってるんです。

そのくせ、「愛してる」とか平然と言えちゃう。
そこに、ひとかけらの愛もありはしない。

琴ちゃんは娘役も多々演じて来られ、それぞれ魅力的でしたが、ここ最近は骨太な男役になられましたね。
 
こどもの日のご挨拶で「小さい頃、なりたかったのはセーラーマーズ」と仰ったと知り、衝撃を受けました。

えっ?!
セーラーマーズって美少女戦士なんだけど?!

……あ、そうか。
琴ちゃん、女の子だった…(確認)

…という感じで。
でも、思い出すたび衝撃を受け直してます。

これはもちろん褒め言葉です。
ナチュラルに男子化してるという琴で。(←これ、掛け漢字?)

野心家でありながら、純真さを秘め。
冷酷なくせに、深い情愛を湛えている。

相反するものを備えた青年を、矛盾なく、繊細に演じ切っていました。

ジュリアンは統合された人格だと、無理なく伝わってきました。

人間は多面体なんだな…と改めて感じましたよ。


礼真琴主演のショー『エストレージャス〜星たち〜』は、何度でも観たい。

本公演から、内容がさらに凝縮されたような気がしたのは、気のせい?

基本的に、本公演で礼真琴が担当していたポジションは、おおむね礼本人が担当。

七海ひろきメインの場は曲目を変え、愛月ひかるがメインに。

幻想的な星サギの場も、紅ゆずると綺咲愛里の役を、愛月ひかると小桜ほのかで。

星サギでも、礼真琴は己が演じていた役(白い鳥)を踏襲。

愛月ひかるは場ごとに、夢妃杏瑠、小桜ほのか、桜庭舞らと組み、場を華やかに盛り上げてくれました。

礼真琴は、オープニングは夢妃杏瑠かな?(間違ってたら、ごめんなさい)と紅愛里と同じくシンクロ振付。

男役と娘役が前後に離れ、静かに動き出す様子が綺麗にシンクロ。
あの場面、好きです。

最後のデュエットダンスは、礼真琴と音波みのり。
幻想的で美しいダンスでした。

娘役とのカップル色の強い絡みは、愛ちゃんにお任せしていた印象。

琴ちゃんは基本的に、独身色が濃厚でした。

韓流アイドルみたいな場や黒燕尾など、いわゆる男役群舞を牽引したり。

あるいは、リベルタンゴなど、ソロで踊ったり。

もうすぐ娶る嫁のため、他の娘役さんとの絡みを極力抑えていたのかしら?

…なんて、うがち過ぎでしょうか?

客席降りも、琴ちゃんは少なめ。
客席から登場する事や、前の方に少しだけ降りる事もありましたが、基本はステージに残っていました。

客席降りでステージが空っぽになると、2階席・3階席は置いてけぼり感が強いので、ありがたい配慮。

琴ちゃんはステージでブンブン腕を振り回し、盛り上げてくれました。

客席では、愛ちゃんはじめ、星組生たちが通路でアピール。

特に愛ちゃんは一番うしろまで駆け上がり、端の方へも行ける限り行ってました。

ステージに琴ちゃんがいてくれる事も、愛ちゃんが後ろや端をフォローしてくれる事も、観客には嬉しいよね。


礼真琴の歌とダンスは凄かった。
何がすごいって、最初から最後まで、フルスロットル。

最初から最後まで、フルスピードで突っ走ってました。 

キレキレを通り越して、最高時速で駆け抜ける感じ。

どんなにハードに踊っても、息切れなし。
汗はかいてたけど、歌声はブレない。

CD流してる、と言われたら信じましたよ、きっと。
それほど高い、歌の完成度。

いやもう、どんだけ鍛えてるんですか?
リアル男子でも、ここまで出来んじゃろ?

礼真琴・人体の謎に迫る…。

その懸命さだけでも充分に胸が熱くなるのに、完成度も高くて、琴ちゃんの意気込みに圧倒されました。

そんな礼真琴に引っ張られて、カンパニー全員、もんのすごく熱かった。

黒燕尾『情熱大陸』はビシッと全員が綺麗に揃っていました。

3階席から見下ろしてたから、フォーメーションがよく見えましてね。
お手本のように綺麗な揃いっぷりでした。

皆さん、どれほどお稽古を積んだのでしょうか…(ホロリ)


礼真琴の弱点を、敢えて上げるなら……低音ボイスかな。

琴ちゃんがあまりにも低いイケメンボイスなので、他の男役さんが総じて高い声に感じられるんですよ。

でもね、それは仕方ない事です。
人間の感覚器は、どうしても「比較」してしまうから。

それくらい、礼真琴の喉は飛び抜けて深みのある低音が出せる、ということで。

そのまま、男前ボイスを響かせまくって下さい。

男役さん達に、発声の仕方を伝授して差し上げては?

低音の発声は、声帯に負担をかけます。
コツがあれば、教えてほしい組子は多いはず。

琴ちゃんと同じ声でなくとも、それぞれが、より味わい深い男役声を出せるようになれば、星組のレベルは更に高まることでしょう。

礼真琴が率いる『アルジェの男/エストレージャス~星たち~』はまた観たくなる舞台でした。

ありがとう、まこっちゃん。
ごっそうさんでした!

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