花組『CASANOVA』の感想です。

変則的ですが、まずは鳳月杏(92期・研13)
長身の男役さんですが、今回は女役。

異端審問官・コンデュルメル(柚香光)の妻をクールに熱く演じています。

演出家・生田大和先生が「『黒蜥蜴』の緑川夫人はみたいに」と演技指導をされたそうです。

江戸川乱歩の探偵・明智小五郎に敵対しつつ惹かれあう「黒蜥蜴」こと緑川夫人。
たしかにイメージありますね。

若かりし頃の美輪明宏が、映画『黒蜥蜴』に緑川夫人役で出演。
昭和の文豪・三島由紀夫が、緑川夫人に剥製にされた男の役で特別出演していました。

舞台『黒蜥蜴』もコンスタントに上演されてましたね、美輪さん。
観劇した事がありますが、耽美で豪奢な世界を創り上げておられました。

でも、ちなつさんも負けていません。
妖艶なオーラを発し、独特の存在感を醸し出していました。

コンデュルメル夫人は、ある意味で異端というか、異質な光を放っています。 

他の人物とは、異次元に生きているような雰囲気を漂わせていますね。

他の登場人物が太陽の下にいるなら、コンデュルメル夫人は闇夜で生きているような。

照明のチカラなどもあるのでしょうが、やはり鳳月杏の紡ぎだす空気ゆえでしょう。

侍女というか従者?が、黒猫ちゃん達ってところも良いですね。
魔女に黒猫はつきもの。

『魔女の宅急便』の魔女見習い・キキも、黒猫ジジを相棒にしていましたね。

また、猫は女性性の隠喩に使われがち。

黒魔術を操り、黒猫を従えるロザリア・コンデュルメル夫人。
いかにも象徴的です。

異彩を放つ魔女…といっても、薬品の調合を行うなど、どちらかといえば錬金術師寄りなんでしょうね。

下手すると漫画的になりそうな、色物キャラクターめいた設定のロザリアさん。

登場時から一貫して、夫と通い合わない心を嘆く妻という一面を備えています。

黒魔術に傾倒したのも、満たされぬ心ゆえでしょう。

ちなつさんの妖しい美しさ、迫力。

それとは裏腹な、乙女のような可憐さ、切なさ。

気持ちが昂り、涙に震えながらの歌唱……素晴らしかったです。

歌として聴き応えがあり、深く胸を打つ芝居でもあり…。

良い意味で、異質の存在感を放っていました。

ビジュアルも際立っていますね。

衣装も他の女性陣と異なり、タイトなシルエット。
脚がチラリと見え隠れし、背中と二の腕が大胆に露出。
実に美しく、悩ましい。

表情や持ち味も、基本はクールで妖艶なのですが、パリエーションが広い。

可愛らしさもあり、大人っぽさもあり、甘さもあり、強さもあり、弱さもあり。

話し方も、歌い方も、表情も、多様な要素を含んでいます。

そして、歌唱力。
しっとり艶やかな声で、アルトから裏声を駆使したソプラノまで自由自在。

すべてに於いて、表現力が卓抜。
逸材すぎて泣けます…。

せめて明日海さんを見送ってから、月へ帰ってほしかった…。

プロローグとフィナーレの男役群舞には、男役として参加しています。

フィナーレはともかく、プロローグは見落としている方もいらっしゃるかもしれませんね。

明日海カサノヴァが登場するシーンでもありますので、そちらに注意が集中しがちかも。(それは私ですね)

茶色いジャケットを着て、最初はセンター、次いで上手に移動し、センターと上手を行き来したと思いきや、下手へ移動…といった具合。

フィナーレと併せ、ダンスシーンでは男に戻ってます。

そして双方とも、柚香光も同じ場に登場します。

己の嫁の性転換を、どんな気持ちで見てるのかなぁ、れいちゃん。


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