花組『金色の砂漠』初日感想・具体的な設定やストーリーについて。

 

ここからはバリバリ、ネタバレします。

知りたくない人はご注意下さい。 

 

まず、開演前に緞帳に砂漠を歩くラクダの群が、オレンジのシルエットで映し出されます。 

この演出がすでに、休憩時間から次の作品世界への期待を盛り上げます。

 

オープニングは、砂漠の民たちがわらわらと登場します。

まるで砂が風に流れるような。

行き倒れの死体を運んだり、砂漠という環境の厳しさを見せつけます。

 

続いて、舞台は王宮へ。

国王主催の宴席で、白と金色の衣装をまとい、朗々と美声を響かせるギィ(明日海りお)

ガリアの王子(柚香光)が歌声を褒めても、ギィは黙ったまま。

 

ガリアは、ざっくり言えば、今のフランスを指すかと思います。

つまり柚香さんは、ヨーロッパの人。

 

第一王女タルハーミネ(花乃まりあ)の求婚者である柚香王子。

砂漠の王宮のしきたりに驚きまくり。

 

彼は湧き出る疑問を、タルハーミネにぶつけます。

 

「褒めてんのに、なんで黙ったままなん?」

→ 奴隷は、公の場で口を利いてはなりません。

 

「えっ?! めっちゃ綺麗な服きてるやん?!」

→ 賓客をもてなす時、得意分野を披露させる事があるから。

 

「ええっ?! 奴隷の背中を踏み段代わりに?!」

→ それが何か?

 

「ちょ!  男の奴隷が、王女様と同じ部屋で寝むん??」 

→ そうですよ?

 

「変やろ、それ」

→ いいえ、当たり前の事です。

 

「なんで、異性の奴隷が四六時中一緒に?」

→ それが、昔からのしきたりですから。

 

……と、こんな感じです。

彼が持つ疑問は、私達の常識に連なる「価値観」とほぼ同じ。

柚香王子は、我々の代弁者として、いろいろ尋いてくれます。

王子は関西弁じゃないけどね。

 

文明国・先進国から来た柚香王子を通し、独自の奴隷制度や王族の価値観について説明を受ける訳です、我々は。

 

限られた時間の中で、冒頭で鮮やかにルール説明をしてのけ、砂漠の王国のルールを、驚きと共に理解させていく手腕。

お見事です、上田久美子先生。

 

私はワクワクしながら、本作を拝見しました。

独特の約束事は、いかにも奴隷制度でなら、ありえそうです。

 

古代日本、江戸時代、そして紀元前のアラビア…。

上田久美子ワールド、また新境地を切り拓きました。

 

ギィも、タルハーミネも、熱く激しく誇り高い人物。

人物造形もおもしろいな、魅力的だな、と感じました。

 

二人とも自尊感情が高く、決して「私なんて…」と卑屈にならない。

とりわけギィは、身分は低いが誇り高い。

王女より、己は優れていると思っている。

 

さればこそ、愚かで無邪気で傲慢な王女を守ろうとする。

「己がいなければ、こいつ、生きてけないだろうな」

そんな風に思っているのかもしれませんね。

 

そして面白いのが、このギィという人物は明日海りおの当て書きだということ。

 

上田久美子先生は、明日海りおの本質をどう見定めているのか。 

 

「ギィのような人間」

「ギィのような人物を演じる事で、魅力が引き出される役者」

 

どちらにせよ、熱く激しく、誇り高い孤高の人(を演じるのが似合う)という事でしょうか。 

 

この作品は、二幕物だったら、さらに面白くなったのではないかと思います。

 

設定も、構成も、人物造形も、意欲的だし、面白いと思うんです。

なのに、消化不良なのは、収束の仕方にあるように思います。

 

ラスト、物語を回収するにあたり……お時間が足りなかった…?

 

上田久美子先生の作品には珍しく、甘めなラスト。

少女マンガみたいな終焉。

 

それが悪いのではありません。

ただ、上田先生が創られた世界の中では、異質な収束に思えました。

 

もし充分な時間があれば、異なる景色を見せて下さったのではないか?

そのような気がしてなりません。

 

それでは、次こそ初日感想・キャスト編です。

 

 

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